专利摘要:
本発明は、対象における血液脳関門透過性を増加させる方法に関する。この方法は、増加した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階、および、選択された対象を治療に供する段階を含む。この治療は、前記対象における血液脳関門透過性を増加させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる。対象において血液脳関門透過性を減少させる方法、中枢神経系の障害または状態について対象を治療する方法、および、血液脳関門透過性を増加させるのに効果的な化合物を選別する方法、ならびに、薬剤も開示する。
公开号:JP2011513493A
申请号:JP2010550817
申请日:2009-03-10
公开日:2011-04-28
发明作者:マーガレット;エス. ビノー
申请人:コーネル ユニバーシティー;
IPC主号:A61K45-00
专利说明:

[0001] 本願は、2008年3月10日に出願された米国仮特許出願第61/035,250号、および2008年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/037,145号の恩典を主張するものであり、これら米国仮特許出願の内容全体を参照によって本願明細書に組み込む。]
[0002] 本発明は、血液脳関門透過性の調節に関する。]
背景技術

[0003] 中枢神経系(「CNS」)に入り込む血液に対する関門は、本明細書において血液脳関門(「BBB」)と集合的に呼ばれる。BBBは、脳内の400マイルの毛細血管および血管を覆う、内皮細胞の極めて緊密な層である(ランソホフ(Ransohoff)ら著、「中枢神経系への白血球移動のための3つまたはそれ以上の経路(Three or More Routes for Leukocyte Migration Into the Central Nervous System)」、ネイチャー・レビューズ・イミュノロジー(Nature Rev. Immun.)、3:569〜581、2003年(非特許文献1))。BBB細胞間のほぼ不透過性の接合部は、約20種類の異なるタンパク質が互いにかみ合うことによって形成される。分子は、膜に埋め込まれたタンパク質輸送体を介して、あるいは、BBB細胞の蝋質外膜を直接すり抜けることによってBBB細胞に入り込まなければならない。外来化合物は、いったん内側に入り込むと、外来物質を排除するよう予備刺激された様々な混然としたタンパク質ポンプおよび高濃度の代謝酵素を避けなければならない。これらの障害物を避けたら、外来分子はその後、BBB細胞の内膜を通過して最終的に脳へ達しなければならない。これらの精巧な防御により、BBBは潜在的な損傷から脳を隔離することができるが、BBBはまた、脳内の疾患部位への神経薬の送達も妨害する。学術研究機関ならびにバイオテクノロジーおよび医薬品産業の研究者は、BBBを迂回すること、または、BBBに潜在的な薬物を脳へ入れさせることを学んでいる。彼らは、BBBを通って受動的に拡散するか、または栄養輸送体に乗って移動して脳の内側に達することができる小薬物を設計している。他の者は、脳が無意識に飲み込むことになるように設計された潜在的な治療用物質を付着させている。]
[0004] 脳細胞に血液を供給する毛細血管は、血液脳関門を構成する(ゴールドシュタイン(Goldstein)ら著、「血液脳関門(The Blood-Brain Barrier)」、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)、255:74〜83、1986年(非特許文献2);パードリッジ(Pardridge)著、「血液脳関門を通る受動体介在性ペプチド輸送(Receptor-Mediated Peptide Transport Through the Blood-Brain Barrier)」、エンドクリン・レビューズ(Endocrin. Rev.)、7:314〜330、1986年(非特許文献3))。脳毛細血管を形成する内皮細胞は、身体の他の組織内に見出される細胞と異なる。脳毛細血管の内皮細胞は、血液から脳およびCNSの他部分への分子の受動拡散に対抗する連続壁を形成する密着した細胞間接合部により共に結合される。これらの細胞はまた、他の組織において毛細血管壁を横切る多少の無差別輸送を可能にする飲作用胞をほとんど有しない、という点で異なる。また、無制限通過を可能にし得る細胞間を延びる連続間隙またはチャネルを欠いている。]
[0005] 血液脳関門は、脳環境が絶えず制御されることを確実にするように機能する。ホルモン、アミノ酸、およびイオンなどの、血液中の様々な物質のレベルは、食事および運動などの活動によってもたらされ得る頻繁な小変動を起こす(ゴールドシュタインら著、「血液脳関門」、サイエンティフィック・アメリカン、255:74〜83、1986年;パードリッジ著、「血液脳関門を通る受動体介在性ペプチド輸送」、エンドクリン・レビューズ、7:314〜330、1986年(非特許文献4))。脳が、血液脳関門によって血清成分中のこれらの変化から保護されなければ、その結果は、無制御な神経活動となり得る。]
[0006] 脳は、血流から完全に隔離されるわけではない。もしそうなら、脳は、栄養素の欠乏に起因して、および、身体の残りの部分と化学物質を交換する必要があることから、適切に機能することができないであろう。毛細血管の内皮細胞内部の特異的輸送システムの存在が、脳が正常な成長および機能に必要な全ての化合物を制御された方法で受け取ることを確実にする。多くの場合、これらの輸送システムは、特定の分子と選択的に結合し関門膜を横切ってこの分子を輸送する、膜結合タンパク質からなる。これらの輸送体タンパク質は、溶質担体輸送体(solute carrier transporters)として知られている。]
[0007] BBBは、CNS疾患において潜在的毒性化合物への曝露からCNSを保護することによって通常の条件下で保護機能を果たすと考えられているが、BBBは、治療化合物がCNS内に入り込むことを妨げることによって治療努力を妨害することもある。例えば、多くの細菌感染症および真菌感染症は、感染症部位がCNSの外側にある場合は容易に治療することができるが、CNS内のそのような感染症はしばしば、非常に危険で、薬物の有効量を感染症部位に送達することができないことに起因して治療するのが非常に困難である。同様に、BBBの作用が、CNSの外側に位置するガンの治療よりも、脳ガンの治療をより困難にしている。CNSの外側に非常に大量の薬物を投与することによってCNS内に有効量の薬物を送達することが可能であっても、(血液中などの)CNSの外側の薬物レベルはその後、腎臓、肝臓、および他の生命維持に必要な器官に有害な毒性レベルに達するほど高くなることがしばしばある。したがって当技術分野において、化合物のCNS内への送達を改善するための方法の必要性が存在する。]
[0008] 加えて、浮腫、脳外傷、脳卒中、および多発性硬化症を有している患者は、主要な損傷部位の近傍におけるBBBの破損を示す。破損レベルは、これらの疾患の臨床転帰に深刻な影響を及ぼしうる。例えば、多発性硬化症(「MS」)を有している患者におけるBBB破損度は、疾患の重症度に相関する。人がMS「攻撃」を受けている場合、血液脳関門は、脳または脊髄の一部分において破損していて、それによりTリンパ球と呼ばれる白血球細胞が血液脳関門を越え、かつミエリンを破壊しうることが、磁気共鳴映像法(「MRI」)を使用して示された。]
[0009] この関門の重要性にも関わらず、BBBの完全性および/または透過性を制御する分子機構についてほとんど知られていない。ゆえに、そのような研究を促進する、特に診断的および/または治療的応用のための、組成物および方法に対する重要な必要性が依然として存在する。]
[0010] 本発明は、当技術分野におけるこれらおよび他の欠陥を克服することを対象にしている。]
先行技術

[0011] ランソホフ(Ransohoff)ら著、「中枢神経系への白血球移動のための3つまたはそれ以上の経路(Three or More Routes for Leukocyte Migration Into the Central Nervous System)」、ネイチャー・レビューズ・イミュノロジー(Nature Rev. Immun.)、3:569〜581、2003年
ゴールドシュタイン(Goldstein)ら著、「血液脳関門(The Blood-Brain Barrier)」、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)、255:74〜83、1986年
パードリッジ(Pardridge)著、「血液脳関門を通る受動体介在性ペプチド輸送(Receptor-Mediated Peptide Transport Through the Blood-Brain Barrier)」、エンドクリン・レビューズ(Endocrin. Rev.)、7:314〜330、1986年
ゴールドシュタインら著、「血液脳関門」、サイエンティフィック・アメリカン、255:74〜83、1986年;パードリッジ著、「血液脳関門を通る受動体介在性ペプチド輸送」、エンドクリン・レビューズ、7:314〜330、1986年]
[0012] 本発明は、対象における血液脳関門透過性を増加させる方法に関する。この方法は、増加した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階、および、選択された対象を処置に供する段階を含む。この処置は、対象における血液脳関門透過性を増加させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる。]
[0013] 本発明はまた、対象における血液脳関門透過性を減少させる方法に関する。この方法は、減少した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階、および、選択された対象を処置に供する段階を含む。この処置は、対象における血液脳関門透過性を減少させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を減少させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を減少させる。]
[0014] 本発明はまた、中枢神経系の障害または状態について対象を処置する方法に関する。この方法は、中枢神経系の障害または状態を有している対象を選択する段階、および、中枢神経系の障害または状態を治療するのに有効な治療用物質を提供する段階を含む。アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる、血液脳関門透過剤が、提供される。治療用物質および血液脳関門透過剤は、治療用物質が血液脳関門を通過して障害または状態を治療するのに有効な条件下で、選択された対象に投与される。]
[0015] 本発明はまた、血液脳関門透過性を増加させるのに効果的な化合物を選別する方法に関する。この方法は、未改変の動物と比較して、低下したCD73発現レベル、低下したアデノシン発現レベル、および/または、調節されたアデノシン受容体活性を有する改変された動物を提供する段階を含む。また、1つもしくは複数の候補化合物が提供され、その1つもしくは複数の候補化合物は、該改変された動物に投与される。その後、その1つもしくは複数の候補化合物がアデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるかどうかが、評価される。該改変された動物において、アデノシンレベルまたは生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるこれら候補化合物はその後、血液脳関門透過性を増加させるのに潜在的に効果的であるとみなされる。]
[0016] 本発明はまた、薬剤に関する。この薬剤は、中枢神経系の障害または状態を治療するのに有効な治療用物質、および血液脳関門透過剤を有する。この血液脳関門透過剤は、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる。]
[0017] 本発明の方法および薬剤は、血液脳関門に影響を与える障害を有している対象に対する改善された治療を提供する。加えて、本発明は、そのような患者の治療的処置を高めるために血液脳関門を制御する改善された方法を提供する。]
図面の簡単な説明

[0018] cd73−/−マウスが実験的自己免疫性脳脊髄炎(「EAE」)に耐性を示すことを証明するグラフである。EAEを誘導し、疾患活動性を毎日監視し、平均EAE評点を、cd73−/−マウス(白抜き菱形、n=11)、および野生型マウス(cd73+/+)(塗り潰された正方形、n=13)について計算した。示された結果は、11回の別個の実験を代表している。
図2A〜図2Dは、cd73−/−T細胞が、cd73+/+tcrα−/−マウスに移植されると、IL−1βおよびIL−17の値の上昇を生じ、EAE感受性に影響を与えることを示している。図2Aは、未処置およびEAE誘導後13日目の、cd73−/−マウスおよび野生型マウスからの脾細胞において測定されたCD4およびFoxP3の発現を示している。図2Bは、未処置およびMOG免疫化後13日目の野生型マウスからの脾細胞であって、CD4およびCD73の細胞表面発現についてフローサイトメトリーにより分析された、脾細胞を示している。図2Cは、免疫された野生型マウスまたはcd73−/−マウスからの分別された細胞であって、1×104の照射された脾細胞および0μMまたは10μMのMOGペプチドで培養された、分別された細胞を示している。18時間の時点で上澄み液を取り、サイトカインBio−plexアッセイを行った。結果は、0μMおよび10μMのMOGペプチド群間のサイトカインレベルの倍率変化(fold change)を表している。サンプルは、4匹のマウスから蓄え、3つの同様の実験から1つを代表する。図2Dは、T細胞欠損cd73+/+tcrα−/−マウス内に養子移入された、MOG免疫化cd73−/−マウス(白抜き菱形、n=5)、または、野生型マウス(塗り潰された正方形、n=5)からの脾臓およびリンパ節のCD4+T細胞を示している。EAEを誘導し、疾患進行を毎日監視した。結果は2つの別個の実験を代表している。
図3A〜図3Lは、EAE誘導の後にCNSリンパ球浸潤をほとんど、または全く示さないcd73−/−マウスを示している;すなわち、ドナーcd73−/−T細胞は、EAE誘導の後にcd73+/+tcrα−/−レシピエントマウスのCNSに浸潤する。EAE誘導後13日目の野生型マウス(図3A〜図3C)およびcd73−/−マウス(図3D〜図3F)からの凍結組織切片をCD4抗体で標識付けした。図3Gは、EAE誘導後13日目の野生型マウスおよびcd73−/−マウスからの凍結組織切片内の、領域ごとに定量化された脳および脊髄内のCD4+浸潤リンパ球の平均数を示している。マウス1匹あたり、1つの脳につき8つの解剖学的に同様の領域、および1つの脊髄につき4つの領域を、10×倍率で分析した(n=5マウス/群)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表している。図3H〜図3Lは、EAE誘導後、第12日目(図3K)、第18日目(図3Hおよび図3L)、または第22日目(図3Iおよび図3J)の野生型マウス(図3H〜図3J)または、cd73−/−マウス(図3K〜図3L)からCD4+細胞を受け取ったEAE誘導tcrα−/−マウスからのCD4抗体で標識付けされた海馬(図3H、図3I、および図3K)ならびに小脳(図3Jおよび図3L)の凍結組織切片を示している。ヘマトキシリン(hemotoxylin)染色された核の背景(青色)に対するHRP抗ラットIg+AEC(赤色)を用いて免疫反応性を検出した。矢印がリンパ球浸潤の部位を示す。スケールバーは500μmを表す。
図4A〜図4Kは、EAE誘導後にCNSリンパ球浸潤をほとんど、または全く示さないcd73−/−マウスを示している;すなわち、cd73−/−T細胞は、cd73+/+tcrα−/−マウスへの移入およびEAE誘導の後、CNSに浸潤する。EAE誘導後13日目の野生型マウス(図4A〜図4C)およびcd73−/−マウス(図4D〜図4F)からの凍結組織切片をCD45抗体で標識付けした。EAE誘導後、第12日目(図4J)、第18日目(図4Gおよび図4K)、または第22日目(図4Hおよび図4I)の野生型マウス(図4G〜図4I)または、cd73−/−マウス(図4J〜図4K)からCD4+細胞を受け取ったEAE誘導tcrα−/−マウスからのCD45抗体で標識付けされた海馬(図4G、図4H、および図4J)ならびに小脳(図4Iおよび図4K)の凍結組織切片を示している。ヘマトキシリン(hemotoxylin)染色された核の背景(青色)に対するHRP抗ラットIg+AEC(赤色)を用いて免疫反応性を検出した。矢印がリンパ球浸潤の部位を示す。スケールバーは500mmを表す。
図5A〜図5Cは、ミエリン特異的T細胞が、EAE誘導後、cd73−/−マウスの脳に効率的に入り込まないことを示している。MOG35−55に特異的なT細胞レセプターを発現させる、MOG35−55免疫化形質転換2d2マウスからのVβ11+T細胞を、脾臓およびリンパ節から分離し、EAE誘導を伴って野生型マウスまたはcd73−/−マウスへ養子移入した。移入およびEAE誘導後、1日目、3日目、8日目、および15日目に、脾臓(図5A)、リンパ節(図5B)、および脳(図5C)を取り出し、細胞を収穫した。細胞をCD45およびVβ11発現についてフローサイトメトリーによって分析した。データは、与えられたそれぞれの日のそれぞれの器官について、CD45+集団中のVβ11+細胞のパーセンテージにおける相対倍率変化(relative fold change)(RFC)を表す。数値は、1.0を基準値に等しいものとし、移入/EAE誘導後1日目の時点の各器官で見出された細胞パーセンテージに基準化した。
図6A〜図6Dは、養子移入された、野生型マウスからのCD73+T細胞が、EAE感受性をcd73−/−マウスに与えることができるということを示している。図6Aは、MOG免疫化野生型マウスの脾臓およびリンパ節からのCD4+T細胞を濃縮し、野生型マウス(塗り潰された正方形、n=5)またはcd73−/−マウス(白抜き菱形、n=5)へ養子移入して、続いて、付随するEAEを誘導したことを示している。2つの独立した実験のうちの一方からの結果を示している。図6Bは、先に免疫化された野生型マウスおよびcd73−/−マウスの脾臓およびリンパ節からのT細胞をCD4およびCD73発現に基づいて分別し、cd73−/−マウス内に養子移入して、続いて、付随するEAEを誘導したことを示している(n=5/各群)。塗り潰された正方形はCD73を発現させる野生型マウスからのドナー細胞を表し;白抜き正方形はCD73発現を欠く野生型マウスからのドナー細胞を表し;白抜き菱形はcd73−/−マウスからのドナー細胞を表す。図6C〜図6Dは、未処置の野生型マウス(図6C左)およびcd73−/−マウス(図6C右)ならびにEAE誘導後12日目の野生型マウス(図6D)からのCNS脈絡叢の凍結組織切片を、CD73特異的抗体で(図6C)、またはCD45特異的抗体(図6D)で染色したことを示している。ヘマトキシリン(hemotoxylin)染色された核の背景(青色)に対するHRP抗ラットIg+AEC(赤色)を用いて免疫反応性を検出した。括弧がCD73染色を指し示している。矢印はCD45リンパ球染色を指し示している。スケールバーは500μmを表す。
図7A〜図7Dは、アデノシン受容体遮断がマウスをEAEの発症から保護するということを示している。図7Aは、EAEが誘導された場合の平均EAE評点を示しており、疾患活動性を毎日監視し、平均EAE評点を、飲料水単独(塗りつぶされた形状)、または広域スペクトルアデノシン受容体アンタゴニストカフェインが0.6g/mLを加えた飲料水(白抜き形状)のどちらか一方を与えられた、野生型マウス(正方形)およびcd73−/−マウス(菱形)において計算した。結果は1回の実験による(一群につき、n=5マウス)。図7Bは、Z310マウス脈絡叢細胞株におけるGAPDHハウスキーピング遺伝子と比べたアデノシン受容体mRNAの発現レベルを示している。サンプルを3通りで実行した;エラーバーは平均値の標準誤差を表す。図7Cは、マウスを、EAE誘導の1日前に、およびEAE誘導後第30日目まで毎日、45%DMSO中、2mg/kgのA2aアデノシン受容体アンタゴニストSCH58261(皮下に1mg/kgおよび腹腔内に1mg/kg)(塗りつぶされた正方形、n=4マウス/群)、または、45%DMSO単独(白抜き正方形、n=5マウス/群)で処置した後の結果を示している。これらの結果は、2つの実験を代表している。図7Dは、EAE誘導後15日目のSCH58261処置およびDMSO処置のマウスからの凍結組織切片内の、領域ごとに定量化された脳および脊髄中のCD4+浸潤リンパ球の平均数を示している。マウス1匹あたり、1つの脳につき8つの解剖学的に同様の領域、および1つの脊髄につき4つの領域を、10×倍率で分析した(n=4マウス)。エラーバーは平均値の標準誤差を表す。
A2aアデノシン受容体アンタゴニストSCH58261がEAE誘導後に脈絡叢におけるICAM−1上方制御を防ぐことを示している。マウスを、EAE誘導の1日前に、およびEAE誘導後第30日目まで毎日、DMSO中のA2aアデノシン受容体アンタゴニストSCH58261、2mg/kg(1mg/kgは皮下に与え、1mg/kgは腹腔内に与えた)(n=4マウス/群)、またはDMSO単独(n=5マウス/群)で処置した。これらの結果は1回の実験による。EAE誘導後15日目の、SCH58261およびDMSOで処置されたマウスからの凍結組織切片を、脈絡叢におけるICAM−1発現について調べた。40×倍率における、ICAM−1(赤色染色、白い矢印)およびDAPI(青色、核)に染色された、DMSOで処置された野生型(左)、またはSCH58261で処置された野生型(右)。画像は4匹の別個のマウスによるものである。
図9A〜図9Bは、細胞外アデノシンを欠き、ゆえにアデノシン受容体を介する適切なシグナル伝達ができないCD73−/−マウスを、NECAで処置し、その結果、PBS対照に対してほぼ5倍の色素移動の増加をもたらしたことを示している(図9A)。NECAで処置された野生型マウスはまた、対照マウスを超える増加を示している(図9B)。百日咳はマウスEAEモデルにおいて血液脳関門漏出を誘導することが知られているので、百日咳を陽性対照として使用した。
ヒト内皮細胞株hCMEC/D3上でのアデノシン受容体発現を示している。
hCMEC/D3細胞をtranswell膜上に播種してコンフルエントまで増殖させた後の結果を示している;NECA(一般的なアデノシン受容体(AR)アゴニスト)、CCPA(A1ARアゴニスト)、CGS 21860(A2AARアゴニスト)、またはDMSO媒体を用いて、あるいは用いずに、2×106のジャーカット細胞を上層チャンバに加え、移動した細胞を24時間後に数えた。
Transwell膜にZ310細胞を播種しコンフルエントまで増殖させた後の結果を示している;NECA(n=1、一般的なARアゴニスト)、CCPA(n=1、A1ARアゴニスト)、CGS 21860(n=1、A2AARアゴニスト)、またはDMSO媒体(n=1)を用いるか、または用いずに、2×106のジャーカット細胞を上層チャンバに加え、移動した細胞を24時間後に数えた。
hCMEC/D3細胞を24ウェルプレート上でコンフルエントまで増殖させた後の結果を示している;様々な濃度のNECA(一般的なARアゴニスト)、CCPA(A1ARアゴニスト)、CGS 21860(A2AARアゴニスト)、DMSO媒体、またはForksolin(cAMPを誘導する)を用いて、あるいは用いずに細胞を処理し;15分後、溶解バッファーを加えて、反応を停止させるために細胞を−80℃で凍結させて;cAMP Screenキット(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスター・シティー)を使用して、cAMPレベルを検定した。
2008年2月12日にCFA/MOG35−55+PTXで免疫化し、41日間毎日評点を付けた、雌A1アデノシン受容体ノックアウト(A1ARKO、n=5)マウス、および野生型(WT、n=5)マウスの結果を示している。
図15A〜図15Bは、脳内皮を通るFITC−デキストラン溢出によって測定された、カフェインを給餌された野生型マウスの脳、およびカフェインを給餌されたCD73−/−マウスの脳を示している。
アデノシン受容体アンタゴニストであるSCH58261がFITCデキストラン溢出を阻害する間、アデノシン受容体アゴニストであるNECAで処置された野生型マウスの血液脳関門を横切るFITCデキストラン溢出の結果をグラフの形で示している。
マウスをアデノシン受容体アゴニストであるNECAで処置した後、BioTex分光光度計によって620nmにおいて測定された、血液脳関門を横切るエバンスブルー色素溢出の結果を示している。] 図2A 図2B 図2C 図2D 図3G 図3H 図3I 図3J 図3K 図3L
[0019] 本発明の一態様は、対象における血液脳関門透過性を増加させる方法を対象にしている。この方法は、増加した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階、および、選択された対象を治療に供する段階を含む。この治療は、対象における血液脳関門透過性を増加させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる。]
[0020] アデノシンは、低酸素、虚血、または炎症状態において生成される代謝困難の細胞シグナルである。その主な仕事は、酸素供給/要求率の増加、プレコンディショニング、抗炎症作用、および、血管形成の刺激を含む、様々な受容体介在性メカニズムによって、組織損傷を減らし修復を促進することである(ジェイコブソン(Jacobson)ら著、「治療標的としてのアデノシン受容体(Adenosine Receptors as Therapeutic Targets)」、ネイチャー・レビューズ・ドラッグ・ディスカバリー(Nat. Rev. Drug Discov.)、5:247〜264、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。アデノシンの生物学的効果は最終的には、受容体分布の異なるパターンおよび/または特定の細胞タイプにおける4つの既知のアデノシン受容体(「AR」)サブタイプの親和性によって決定される。]
[0021] CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ)は、エクト−酵素活性を有する70kDグリコシル−ホスファチジル−イノシトール−アンカー細胞表面分子である。これは多くの細胞タイプ上に豊富に発現され、その細胞タイプには、リンパ球のサブセット(ヤマシタら著、「マウスリンパ球におけるCD73発現およびFyn依存性シグナル伝達(CD73 Expression and Fyn-Dependent Signaling on Murine Lymphocytes)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Eur. J. Immunol.)、28:2981〜2990、1998年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、内皮細胞(ヤマシタら著、「マウスリンパ球におけるCD73発現およびFyn依存性シグナル伝達」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー、28:2981〜2990、1998年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、および、上皮細胞(ストローメイヤー(Strohmeier)ら著、「ヒト腸管上皮におけるCD73の表面発現、極性化、および機能的意義(Surface Expression, Polarization, and Functional Significance of CD73 in Human Intestinal Epithelia)」、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J. Clin. Invest.)、99:2588〜2601、1997年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)が含まれる。これは、ヌクレオシド−5’−一リン酸(AMPおよびIMP)をアデノシンおよびイノシンのようなヌクレオチドに分解することによるプリンサルベージ経路の一部である。]
[0022] CD73制御の適切な方法は、内容全体を参照により本願明細書に組み込むヤルカネン(Jalkanen)に付与された米国特許出願公開第2006/0198821(A1)号に記載されているように、組換えCD73タンパク質を投与すること、あるいは、内皮のCD73発現を誘導することができるサイトカインまたは別因子によるか、あるいは、両療法の組み合わせによることを含む。より詳細には、本発明において使用されるべき適切な物質は、CD73遺伝子の転写を直接的または間接的に上方制御するサイトカインまたは他の因子を含む。本発明での使用のために適切なサイトカインは典型的には、インターフェロンまたはインターロイキンであるが、他の物質も使用されうる。該サイトカインがインターフェロンである場合、該インターフェロンは、α−、β−、γ−、ω−、または任意の他のインターフェロンであってよく、前述したインターフェロンの任意のサブタイプであることもできる。特にα−インターフェロンおよびβ−インターフェロンが本発明での使用に適していると考えられる。内皮のCD73発現を誘導できる任意のインターロイキンもまた、本発明での使用に適している。そのようなインターロイキンの例には、IL−4、IL−10、IL−13、およびIL−20が含まれる。]
[0023] 一実施形態では、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは双方の投与は、上昇した発現により、または組換えCD73タンパク質の直接的投与により得られる、上昇したCD73レベルの結果として産生されるアデノシンの源を保護するために、アデノシン一リン酸(「AMP」)の投与と組み合される。]
[0024] 組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは双方の投与は、AMPがアデノシン二リン酸(「ADP」)またはアデノシン三リン酸(「ATP」)に転換するのを防ぐアデニル酸キナーゼ阻害剤の投与と共に行うことができる。]
[0025] 代替的に、組換えCD73タンパク質またはサイトカインまたは双方の投与は、アデノシンの変質を防ぐアデノシンデアミナーゼ阻害剤の投与と組み合わせてもよい。このことはさらに、AMP、および任意にAMPがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)に転換するのを防ぐアデニル酸キナーゼ阻害剤も投与することと組み合わせることもできる。]
[0026] (上述したようにCD73により生成されうる)細胞外アデノシンは、免疫細胞が中枢神経系に入り込むことを調整する。したがって、BBB透過性は、局所アデノシン濃度と共にアデノシン受容体活性により調節される:A1受容体は、低アデノシン濃度で活性化され(高親和性)、A2aは、高アデノシン濃度で活性化される(低親和性)。ゆえに、アデノシン有用性を増加させることは、BBBの透過性を増加させることになる。逆に、アデノシンの有用性を減少させることは、BBBの透過性を減少させることになる。加えて、CD73レベルまたは活性を増加させることは、詳細を上述したように追加の局所アデノシンを産生し、それによりBBBの透過性を増加させることになる。]
[0027] CD73酵素活性のプリンヌクレオシド生成物であるアデノシンは、細胞表面上の特異的受容体に結合する。アデノシンは、多くの生理学的および病理学的現象に関与すると報告されている。アデノシンは、全ての生細胞中に見出され、虚血または20無酸素(20 anoxia)などの適切な条件下で放出されることができ、この場合アデノシンはその後、様々な生理学的効果を生み出すようにアデノシン受容体に作用することができる。]
[0028] アデノシン受容体は現在、細胞外アデノシンと結合する内在性膜タンパク質として知られており、これによりGタンパク質として知られている特異的グアニンヌクレオチド結合タンパク質を介して膜貫通シグナルを起こして、アデニル酸シクラーゼ、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、およびホスホリパーゼCを含む様々な第2メッセンジャー機構を調節する。以下の文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む、スタイルズ(Stiles)著、「アデノシン受容体他:生理学的調節の分子機構(Adenosine Receptors and Beyond: Molecular Mechanisms of Physiological Regulation)」、クリニカル・リサーチ(Clin. Res.)、38(1):10〜18、1990年;スタイルズ著、「アデノシン受容体(Adenosine Receptors)」、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol Chem.)、267:6451〜6454、1992年を参照されたい。]
[0029] A2Aアデノシン受容体を活性化することは、BBBの透過性を増加させることになる。適するアデノシン受容体A2A活性化因子は、当技術分野で周知であるA2Aアゴニストである(プレス(Press)ら著、「アデノシン受容体アンタゴニストおよびアゴニストの治療可能性(Therapeutic Potential of Adenosine Receptor Antagonists and Agonists)」、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ(Expert Opin. Ther. Patents)、17(8):1〜16、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。他のA2Aアデノシン受容体アゴニストは、リンディン(Lindin)らに付与された米国特許第6,232,297号および米国特許出願公開第2003/0186926(Al)号、サブロッキ(Zablocki)らに付与された米国特許出願公開第2005/0054605(A1)号、ならびにリー(Li)らに付与された米国特許出願公開第2006/0040888(Al)号、同第2006/0040889(Al)号、同第2006/0100169(Al)号および同第2008/0064653(A1)号に記載されているアゴニストを含み、これら特許文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む。そのような化合物は、オルソン(Olsson)らに付与された米国特許第5,140,015号および同第5,278,150号;クリスタリー(Cristalli)に付与された米国特許第5,593,975号;ミヤサカ(Miyasaka)らに付与された米国特許第4,956,345号;ハッチンソン(Hutchinson)ら著、「CGS 21680C,優先的降圧作用を有するA2選択的アデノシン受容体アゴニスト(CGS 21680C, an A2 Selective Adenosine Receptor Agonist with Preferential Hypotensive Activity)」、ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティックス(J. Pharmacol. Exp. Ther.)、251:47〜55、1989年;オルソンら著、「N6置換N−アルキルアデノシン−5’−ウロンアミド(N6-Substituted N-alkyladenosine-5'-uronamides):A1およびA2アデノシン受容体のための認識基を有する二官能性リガンド(Bifunctional LigandsHaving Recognition Groups for A1 and A2 Adenosine Receptors)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、29:1683〜1689、1986年;ブリッジェズ(Bridges)ら著、「N6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−(2−メチルフェニル)エチル]アデノシンおよびそのウロンアミド誘導体(N6-[2-(3,5-dimethoxyphenyl)-2-(2-methylphenyl)ethyl]adenosine and its Uronamide Derivatives):アデノシンA2受容体のための高親和性および高選択性の双方を有する新規のアデノシンアゴニスト(Novel Adenosine Agonists With Both High Affinity and High Selectivity for the Adenosine A2 Receptor)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、31:1282、1988年;ハッチンソン(Hutchinson)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、33:1919、1990年;ウキーダ(Ukeeda )ら著、「2−アルコキシアデノシン(2-Alkoxyadenosines):冠状動脈A2アデノシン受容体における強力で選択的なアゴニスト(Potent and Selective Agonists at the Coronary Artery A2 Adenosine Receptor)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、34:1334、1991年;フランシス(Francis)ら著、「一連のN−アルキル化2−アミノアデノシンにおける高度に選択的なアデノシンA2受容体アゴニスト(Highly Selective Adenosine A2 Receptor Agonists in a Series of N-alkylated 2-aminoadenosines)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、34:2570〜2579、1991年;ヨネヤマ(Yoneyama)ら著、「選択的アデノシンA2受容体アゴニスト、2−(1−オクチニル)−アデノシン(YT−146)の血管降圧薬メカニズムはグリベンクラミド感受性K+チャネルの開放を含む(Vasodepressor Mechanisms of 2-(1-octynyl)-adenosine (YT-146), a Selective Adenosine A2 Receptor Agonist, Involve the Opening of Glibenclamide-sensitive K+ Channels)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.)、213(2):199〜204、1992年;ピート(Peet)ら著、「アデノシンA1およびA2受容体のための選択性を有する立体構造的に制限されたキラル(フェニルイソプロピル)アミノ−置換ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンおよびプリン(Conformationally Restrained, Chiral (phenylisopropyl)amino-substituted pyrazolo[3,4-d]pyrimidines and Purines with Selectivity for Adenosine A1 and A2 Receptors)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、35:3263〜3269、1992年;ならびに、クリスタリーら著、「A2アデノシン受容体における選択的アゴニストとしてのアデノシンの2−アルキニル誘導体およびアデノシン−5’−N−エチルウロンアミド(2-Alkynyl Derivatives of Adenosine and Adenosine-5'-N-ethyluronamide as Selective Agonists at A2 Adenosine Receptors)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、35(13):2363〜2368、1992年に、記載されているように合成されうる。これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む。これらのアデノシンA2A受容体アゴニストは、例示的であり、限定的ではないと意図されている。]
[0030] A1アデノシン受容体のブロッキングつまり不活性化もまた、BBBの透過性を増加させることになる。適するアデノシン受容体A1不活性化因子は、当技術分野で周知であるアデノシン受容体A1アンタゴニストである(プレスら著、「アデノシン受容体アンタゴニストおよびアゴニストの治療可能性」、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ、17(8):1〜16、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。適するアデノシン受容体A1アンタゴニストには、以下の特許文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む、ハーショル(Hocher)らに付与された米国特許出願公開第2008/0027082(A1)号、ベラルディネッリ(Belardinelli)らに付与された米国特許第5,446,046号および同第5,668,139号、ニーリィ(Neely)に付与された米国特許第6,117,998号、ならびに、ウィルスン(Wilson)らに付与された米国特許第7,247,639号に、記載されたアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。]
[0031] BBB透過性を増加させることにおいて、選択された対象は、中枢神経系(「CNS」)障害を有していてよい。]
[0032] (精神医学的/行動性疾患または障害を包含する)CNSの障害には、後天性てんかん様失語症、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、脳梁の脳梁欠損症、失認、アイカルディ症候群、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、無脳症、アンゲルマン症候群、血管腫症、無酸素症、失語症、失行症、クモ膜嚢腫、クモ膜炎、アルノルト−キアリ奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群、毛細血管拡張性運動失調症、注意欠陥多動性障害、自閉症、聴覚処理障害、自律神経機能不全、背部痛、バッテン病、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼痙攣、良性限局性筋萎縮症、良性頭蓋内圧亢進症、両側性前頭頭頂多少脳回(bilateral frontoparietal polymicrogyria)、ビンスワンガー病、眼瞼痙攣、ブロッホ−サルズバーガー症候群、腕神経叢損傷、脳膿瘍、脳傷害、脳損傷、脳腫瘍、脊椎腫瘍、ブラウン−セカール症候群、カナヴァン病、手根管症候群(cts)、灼熱痛、中枢痛症候群、橋中心髄鞘崩壊症、中心核ミオパシー、頭部障害、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、大脳萎縮症、脳性巨人症、脳性小児麻痺、シャルコー−マリー−トゥース病、キアリ奇形、舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(「CIDP」)、慢性疼痛、慢性局所疼痛症候群(chronic regional pain syndrome)、コフィン−ラウリー症候群、昏睡(遷延性植物状態を含む)、先天性両側顔面神経麻痺、大脳皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋骨癒合症、クロイツフェルト−ヤコブ病、累積外傷障害、クッシング症候群、巨細胞性封入体病(「CIBD」)、サイトメガロウイルス感染症、ダンディー−ウォーカー症候群、ドーソン病(Dawson disease)、ド・モルシエ症候群、デジュリーヌ−クルンプケ麻痺、デジュリーヌ−ソッタス病、睡眠相後退症候群、認知症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、糖尿病性神経障害、びまん性硬化症、自律神経障害、計算力障害、書字障害、失読症、ジストニー、早期幼児てんかん性脳障害、トルコ鞍空洞症候群、脳炎、脳ヘルニア、脳三叉神経血管腫症、遺糞症、転換、エルプ麻痺、先端紅痛症、本態性振戦、ファブリー病、ファール症候群、失神、家族性痙性麻痺、熱性痙攣、フィッシャー症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、ゲルストマン症候群、巨細胞動脈炎、巨大細胞封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、異所性灰白質、ギラン−バレー症候群、HTLV−1関連脊髄症、ハラーフォルデン−シュパッツ病、頭部外傷、頭痛、片側顔面痙攣、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性多発神経炎性運動失調症、耳帯状疱疹、帯状疱疹、ヒラヤマ症候群(hirayama syndrome)、全前脳症、ハンチントン病、水無脳症、水頭症、コルチゾン過剰症、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎(immune-mediated encephalomyelitis)、封入体筋炎、色素失調症,乳児性フィタン酸蓄積症、乳児レフスム病、点頭てんかん、炎症性ミオパシー、頭蓋内嚢胞、頭蓋内圧亢進症、ジュベール症候群、カーンズ−セイアー症候群、ケネディ病、キンズボーン症候群、クリッペル−フェーユ症候群、クラッベ病、クーゲルベルク−ヴェランダー病、クールー、ラフォラ病、ランバート−イートン無筋力症症候群、ランダウ−クレフナー症候群、延髄外側(ワレンベルグ)症候群、学習障害、リー病、レノックス−ガストー症候群、レッシュ−ナイハン症候群、白質ジストロフィー、レヴィ小体認知症、滑脳症、閉じ込め症候群、ルーゲーリッグ病、腰部椎間板疾患、ライム病−神経学的後遺症、マシャード−ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、大脳症、巨大脳症、メルカーソン−ローゼンタール症候群、メニエール病、髄膜炎、メンケス病、異染性白質ジストロフィー、小頭症、偏頭痛、ミラー・フィッシャー症候群、小卒中、ミトコンドリア筋症、メビウス症候群、単肢筋萎縮症、運動ニューロン病、運動技能障害、もやもや病、ムコ多糖症、多発梗塞認知症、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、体位性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、筋痛性脳脊髄炎、重症筋無力症、ミエリン破壊びまん性硬化症(myelinoclastic diffuse sclerosis)、乳児ミオクローヌス性脳症、ミオクローヌス、ミオパシー、筋細管性ミオパシー、先天性ミオトニー、睡眠発作、神経線維腫症、神経遮断性悪性症候群、エイズの神経学的兆候、ループスの神経学的後遺症、神経性筋強直症、神経セロイドリポフスチン症、神経細胞移動障害、ニーマン−ピック病、非24時間睡眠覚醒症候群、非言語的学習障害、オサリヴァン−マクラウド症候群(O'sullivan-mcleod syndrome)、後頭神経痛、潜在性脊髄癒合不全続発(occult spinal dysraphism sequence)、大田原症候群(ohtahara syndrome)、オリーブ橋小脳萎縮症、オプソクローヌス−ミオクローヌス症候群、視神経炎、起立性低血圧症、使い過ぎ症候群、反復視、感覚異常、パーキンソン病、先天性パラミオトニー、腫瘍随伴疾患、発作(paroxysmal attacks)、パリー−ロンベルク症候群(ロンベルク症候群としても知られている)、ペリツェウス−メルツバッハー病、周期性四肢麻痺、末梢神経障害、遷延性植物状態、広汎性発達障害、光くしゃみ反射、フィタン酸蓄積症、ピック病、つままれた神経(pinched nerve)、下垂体腫瘍、PMG、ポリオ、多小脳回、多発性筋炎、孔脳症、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛(「PHN」)、感染後性脳脊髄炎、体位性低血圧、プラダー−ウィリー症候群、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性顔面片側萎縮(ロンベルク症候群としても知られている)、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性灰白質萎縮症(progressive sclerosing poliodystrophy)、進行性核上麻痺、偽脳腫瘍、ラムゼー−ハント症候群(I型およびII型)、ラスムッセン脳炎、反射性交感神経性ジストロフィー、レフサム病、反復運動障害、反復性ストレス障害、下肢静止不能症候群、レトロウイルス関連ミエロパシー、レット症候群、ライ症候群、ロンベルク症候群、狂犬病、舞踏病、サンドホフ病、統合失調症、シルダー病、裂脳症、感覚統合機能不全、中隔視神経異形成症、ゆさぶられっ子症候群、帯状疱疹、シャイ−ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸、睡眠病、SNATIATION、ソトス症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮、脊柱管狭窄、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、進行性核上麻痺を参照、脊髄小脳失調症、全身硬直症候群、脳卒中、スタージ−ウェーバー症候群、亜急性硬化性全脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、表在性鉄沈着症、シドナム舞踏病、失神、共感覚、脊髄空洞症、遅発性ジスキネジー、テイ−サックス病、側頭動脈炎、破傷風、脊髄係留症候群、トムゼン病、胸郭出口症候群、三叉神経痛性チック、トッド麻痺、トゥレット症候群、一過性脳虚血発作、伝染性海綿様脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、トリパノソーマ症、結節性硬化症、側頭動脈炎を含む脈管炎、フォン・ヒッペル−リンダウ病(「VHL」)、ビリウスク脳脊髄炎(Viliuisk encephalomyelitis)(「VE」)、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ−ホフマン病、ウェスト症候群、むち打ち症、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、および、ツェルウェガー症候群が含まれうるが、これらに限定されない。ゆえに、全てのCNS関連状態および障害は、BBB経路の薬物送達により治療されうることが認識される。]
[0033] 本発明の化合物は、経口的、非経口的、例えば皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、鼻腔内滴下により、または、鼻、咽喉、および気管支の粘膜などの粘膜への適用により、投与されうる。これら化合物は、単独または適切な薬学的担体とともに投与されてもよく、錠剤、カプセル、粉末、液剤、懸濁剤または乳剤などの固形または液状でありうる。]
[0034] 本発明の活性化合物は、例えば不活性希釈剤を用いて、または同化性食用担体を用いて経口的に投与されてもよく、あるいは、本発明の活性化合物は、殻の堅いカプセルまたは殻の軟らかいカプセル内に封入されてもよく、あるいは、本発明の活性化合物は、錠剤に圧縮されてもよく、あるいは、本発明の活性化合物は、治療食の食品と直接組み合わされてもよい。治療的経口投与については、これら活性化合物は、賦形剤と組み合わされてもよく、錠剤、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップなどの形態で使用されてもよい。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。これらの組成物中の化合物のパーセンテージは、当然ながら変えてもよく、好都合に単位重量の約2%〜約60%の間であってよい。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適した投与量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物は、経口投与量単位が約1〜250mgの間の活性化合物を含有するように調製される。]
[0035] 錠剤、カプセルなどはまた、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモでんぷん、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;および、スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤も含有することができる。投与量単位形態がカプセルである場合、上記種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体も含有することができる。]
[0036] 様々な他の材料が、被覆剤として、または投与量単位の物理的形態を変更するために、存在してもよい。例えば、錠剤は、セラック、糖、またはその双方で被覆されてもよい。シロップは、活性成分に加えて、甘味剤としてスクロース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびに、サクランボ味またはオレンジ味などの香味料を含有してもよい。]
[0037] これら活性化合物はまた、非経口的に投与されてもよい。これら活性化合物の溶液または懸濁剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中に調製されうる。分散系もまた、グリセロール、液体ポリエチレン・グリコール、およびそれらの油中混合物に調製されうる。例示的な油は、例えばピーナッツ油、ダイズ油または鉱油である、石油由来、動物由来、植物由来、または合成由来の油である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液、ならびに、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、液体担体、特に注射可能溶液に好ましい。貯蔵および使用の通常条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を妨げるために保存料を含有する。]
[0038] 注射使用に適している薬学的形態には、無菌の水溶液または水分散系、および、無菌の注射可能な溶液または分散系の即時調製のための無菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は、無菌でなければならず、そして容易な注射器利用性(syringability)が存在する程度に流体でなければならない。この薬学的形態は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒でありうる。]
[0039] 本発明の化合物はまた、エーロゾルの形態で気道に直接投与されてもよい。エーロゾルとして使用するために、溶液または分散系中の本発明の化合物は、例えば、従来の補助剤を含むプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤である、適切な噴射剤と共に加圧エーロゾル容器内に包装されてもよい。本発明の材料はまた、ネブライザーまたはアトマイザーなどの非加圧形態で投与されてもよい。]
[0040] 本発明の別の態様は、対象における血液脳関門透過性を減少させる方法を対象にしている。この方法は、減少した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階、および、選択された対象を治療に供する段階を含む。この治療は、対象における血液脳関門透過性を減少させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を減少させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を減少させる。]
[0041] 本発明のこの態様は、上述された薬学的製剤および投与方法を使用して実行されうる。]
[0042] 詳細に上述したように、BBBの透過性は、局所のアデノシンレベル、CD73、および、アデノシン受容体活性により制御される。アデノシン受容体の活性を変えることは、当技術分野において周知であるアデノシン受容体アンタゴニストおよび/またはアゴニストを提供することにより達成されうる(プレスら著、「アデノシン受容体アンタゴニストおよびアゴニストの治療可能性」、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ、17(8):1〜16、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。]
[0043] 血液関門透過性を減少させるために対象のアデノシン受容体活性を変えることは、その対象にA2Aアデノシン受容体アンタゴニストおよび/またはA1アデノシン受容体アゴニスト(ただし、これらに限定されない)を投与することにより達成されうる。]
[0044] いくつかのアデノシンA2A受容体アンタゴニストが、当業者に知られており、個別的または本明細書に記載された方法と併せて使用されうる。そのようなアンタゴニストには、(−)−R,S)−メフロキン(Mefloquine(商標)として販売されているラセミ混合物の活性鏡像異性体)、3,7−ジメチル−1−プロパルギルキサンチン(DMPX)、3−(3−ヒドロキシプロピル)−7−メチル−8−(m−メトキシスチリル)−1−プロパルギルキサンチン(MX2)、3−(3−ヒドロキシプロピル)−8−(3−メトキシスチリル)−7−メチル−1−プロパルギルキサンチンリン酸二ナトリウム塩(3-(3-hy- droxypropyl)-8-(3-methoxystyryl)-7-methyl-l- propargylxanthin phosphate disodium salt)(MSX−2のリン酸プロドラッグである、MSX−3)、7−メチル−8−スチリルキサンチン誘導体、SCH 58261、KW−6002、アミノフリルトリアゾロ−トリ−アジニルアミノエチルフェノール(ZM241385)、および8−クロロスチリル−カフェイン、KF17837、VR2006、イストラデフィリン、VER 6489、VER 6623、VER 6947、VER 7130、VER 7146、VER 7448、VER 7835、VER 8177VER−11135、VER−6409、VER 6440、VER 6489、VER 6623、VER 6947、VER 7130、VER 7146、VER 7448、VER 7835、VER 8177などのVERNALIS薬物、ピラゾロ[4,3−e]1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンおよび5−アミノ−イミダゾロ−[4,3−e]−1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジンなど(リー(Li)らに付与された米国特許出願公開第2006/0128708号:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、ピラゾロ[4,3−e]−[1,2,4]−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、ケーゼ(Kase)らに付与された国際公開第01/92264号を参照のこと)、2,7−二置換−5−アミノ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、ケーゼらに付与された国際公開第03/048163号を参照のこと)、2,5−二置換−7−アミノ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、ヴ(Vu)ら著、「強力で選択的なアデノシンA2a受容体アンタゴニストとしての[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジンのピペラジン誘導体(Piperazine Derivatives of [1,2,4]Triazolo[1,5-a][1,3,5]triazine as Potent and Selective Adenosine A2a Receptor Antagonists)」、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー、47(17):4291〜4299、2004年を参照のこと)、9−置換−2−(置換-エチン−1−イル)−アデニン(9-substituted-2-(substituted-ethyn-1-yl)-adenines)(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、ビーグルホール(Beauglehole)らに付与された米国特許第7,217,702号を参照のこと)、7−メチル−8−スチリルキサンチン誘導体、ピラゾロ[4,3−e)1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン、および5−アミノ−イミダゾロ−[4,3−e]−1,2,4−トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、リー(Li)らに付与された米国特許出願公開第2006/0128708号を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストは、例示的であり、限定するものではないことが意図される。]
[0045] 適するA1アデノシン受容体アゴニストには、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、サブロッキ(Zablocki)らに付与された米国特許出願公開第2005/0054605(A1)号に記載されたアゴニストが含まれる。]
[0046] BBB透過性を減少させることにおいて、選択された対象は、炎症性疾患を有していてよい。そのような炎症性疾患には、炎症の媒介物質が血液脳関門を通過する疾患が含まれる。そのような炎症性疾患には、細菌感染、ウイルス感染、または自己免疫疾患により引き起こされる炎症が含まれるが、これらに限定されない。さらに詳細には、そのような疾患には、髄膜炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)−1、脳炎、単純ヘルペスウイルス(「HSV」)脳炎、トキソプラズマ脳炎(Toxoplams gondii encephalitis)、および、進行性多巣性白質脳症が含まれるが、これらに限定されない。]
[0047] BBB透過性が減少される場合、選択された対象はまた、リンパ球が脳へ入り込むことによって媒介される状態を有していてもよい。このような治療可能な他の状態には、脳の脳炎、パーキンソン病、てんかん、HIVによる神経学的兆候−AIDS、ループスおよびハンチントン病の神経学的後遺症、髄膜炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、HSV脳炎、ならびに進行性多巣性白質脳症が含まれる。]
[0048] 本発明のさらに別の態様は、中枢神経系の障害または状態を有する対象を治療する方法を対象にしている。この方法は、中枢神経系の障害または状態を有している対象を選択する段階、および、中枢神経系の障害または状態を治療するのに有効な治療用物質を提供する段階を含む。血液脳関門透過剤(blood brain barrier permeabilizing agent)が提供され、この血液脳関門透過性剤は、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいはCD73レベルおよび/または活性を増加させる。治療用物質および血液脳関門透過剤は、その治療用物質が血液脳関門を通過して障害または状態を治療するのに有効な条件下で、選択された対象に投与される。]
[0049] 本発明のこの態様は、上述された薬剤および投与方法を用いて実行されうる。]
[0050] 治療用物質は、CNSの疾患または状態の治療において有用な任意の治療用物質を含んでよい。そのような他の化合物は、抗生物質、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および抗腫瘍剤を含むが、これらに限定されない任意のクラスの薬物または薬剤であってよい。抗寄生虫剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤などと共に投与される場合、血液脳関門透過剤の化合物は、疾患の治療に適する任意の投与方法および投与経路によって、典型的には薬学的組成物として、投与されてよい。]
[0051] 治療薬は、(例えば、神経変性疾患の発症を阻害するか、または防ぐ)治療用物質として、または予防薬として送達されうる。治療用物質は、治療される根本的な障害の根絶または改善を引き起こす。予防薬は、疾患を発症させる危険性のある患者に、または、診断がまだされていないとしても、そのような疾患の1つまたはそれ以上の生理学的症状を訴える患者に投与される。代替的に、予防薬投与は、特に根本的な障害の生理学的症状が周期的に現れる場合、その症状の発症を避けるために適用されてもよい。この後者の実施形態では、該療法は、根本的な兆候の代わりに、付随する生理学的症状について予防をするものである。特定の適用に有効な実際量は、とりわけ、治療される状態および投与経路に依存する。]
[0052] 治療用物質は、免疫抑制剤、抗炎症薬、増殖抑制薬、抗遊走剤(anti-migratory agents)、抗線維化剤、アポトーシス促進薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗悪性腫瘍薬、抗体、抗血栓剤、抗血小板剤、Ilblllla剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、化学療法剤、血栓溶解薬、血管拡張薬、抗菌薬すなわち抗生物質、有糸分裂阻害薬、増殖因子アンタゴニスト、フリーラジカル捕捉剤、生物製剤、放射線治療剤、放射線不透過性剤、放射性標識化剤、抗凝血薬(例えばヘパリンおよびその誘導体)、血管新生抑制薬(例えば、サリドマイド)、血管形成薬、PDGF−Bおよび/またはEGF阻害剤、抗炎症薬(例えば乾癬薬)、リボフラビン、チアゾフリン、zafurin、抗血小板剤(例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばアセチルサリチル酸))、ADP阻害剤(クロピドグレルおよびticlopdipineなど)、ホスホジエステラーゼIII阻害剤(hosphodiesterase III inhibitors)(シロスタゾールなど)、糖タンパク質II/IIIIa剤(lycoprotein II/IIIIa agents)(アブシキシマブなど)、エプチフィバチドおよびアデノシン再取込み阻害剤(ジピリダモール(dipyridmoles)などの治癒および/または促進剤(例えば抗酸化剤および窒素酸化物ドナー))、制吐薬、制嘔吐剤、トリプジオリド(tripdiolide)、ジテルペン、トリテルペン、ジテルペンエポキシド、ジテルペノイドエポキシド、トリエポキシド、または、雷公藤(tripterygium wifordii hook F)(TWHF)、SDZ−RAD、RAD、RAD666、または40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、これらの誘導体、これらの薬学的塩、ならびに、これらの組み合わせでありうる。]
[0053] 本発明の別の態様において、治療可能剤は、生理活性タンパク質またはペプチドである。そのような生理活性タンパク質またはペプチドの例には、細胞調節ペプチド、走化性ペプチド、抗凝固ペプチド、抗血栓ペプチド、抗腫瘍ペプチド、抗感染ペプチド、成長増強ペプチド、および、抗炎症ペプチドが含まれる。タンパク質の例には、抗体、酵素、ステロイド、成長ホルモンおよび成長ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモンならびにそのアゴニストおよびアンタゴニスト類似体、ソマトスタチンおよびその類似体、ゴナドトロピン、ペプチドT、チロカルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン、バソプレシン、オキシトシン、アンギオテンシンIおよびII、ブラジキニン、カリジン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン、ならびに、前述の分子の多数の類似体および同類物が含まれる。本発明のいくつかの態様において、BBB透過性は、抗生物質または抗感染治療可能剤を送達するために本明細書の上記の1つまたは複数の方法によって調節される。そのような抗感染剤は、微生物の活性を減少させるか、または微生物を死滅させる。]
[0054] いくつかの実施形態では、治療用物質および血液脳関門透過剤は、単一「化合物」製剤として調製される。このことは、複数の既知方法の任意のものによって達成されうる。例えば、治療用物質および血液脳関門透過剤は、単一の薬学的に許容可能な賦形剤に混ぜ合わせることができる。別のアプローチでは、治療用物質および血液脳関門透過剤は、別個の賦形剤中で調製され、その別個の賦形剤をマイクロカプセル化してから混ぜ合わせるか、あるいは、その別個の賦形剤が別個の薄膜を形成して単一丸剤などにすることもできる。]
[0055] 一実施形態では、治療用物質および血液脳関門透過剤は、共に結合される。いくつかの実施形態では、治療用物質および血液脳関門透過剤は、単一化合物を形成するために、直接的に共に結合されるか、または、「テザー(tether)」または「リンカー(linker)」により共に結合される。特定の理論に縛られずに、このような結合された化合物が改善された特異性/選択性を提供すると考えられている。]
[0056] 直接またはリンカー/テザーにより分子を結合するためのいくつかの化学は、当業者に周知である。二官能性化合物を形成するために治療用物質と血液脳関門透過剤とを結合させるために利用される特定の化学は、治療用物質の化学的性質および所望とされる「リガンド間の」間隔によって決まる。様々な治療用物質および血液脳関門透過剤は典型的に、成分を共に結合させるために、リンカー上または対置される成分上(すなわち治療用物質または血液脳関門透過剤のどちらか一方)の適する官能基と反応するのに利用可能な様々な官能基(例えばカルボン酸(COOH)、遊離アミン(—NEE)など)を含有する。]
[0057] 代替的に、これら成分は、追加の反応性官能基に曝露または結合するために誘導体化されうる。この誘導体化は、イリノイ州ロックフォードのピアース・ケミカル・カンパニー(Pierce Chemical Company)より入手可能のリンカー分子など、いくつかのリンカー分子の任意のものの結合を含むことができる。]
[0058] 本明細書において使用される「リンカー」または「テザー(tether)」は、二官能性または多官能性化合物を形成するために、2つ以上のリガンド(例えば、治療用物質または血液脳関門透過剤)を結合させるように使用される分子である。該リンカーは典型的には、二官能性または多官能性部分を含む成分の全てに共有結合を形成することができるように選択される。適するリンカーは、当業者に周知であり、直鎖または分枝鎖炭素リンカー、複素環炭素リンカー、アミノ酸、核酸、デンドリマー、合成ポリマー、ペプチドリンカー、ペプチドおよび核酸類似体、炭水化物、ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない。成分の1つまたは複数がポリペプチドである場合、該リンカーは、構成アミノ酸に、それらの側基により(例えば、システインへのジスルフィド結合により)、または、末端アミノ酸のα炭素アミノ基またはカルボキシル基により、結合されうる。]
[0059] いくつかの実施形態では、第一治療用物質上の基と反応する1つの官能基、および血液脳関門透過剤上の官能基と反応する別の基を有する二官能性リンカーは、二官能性化合物を形成するために使用されうる。代替的に、誘導体化は、遊離アルデヒド基を生成するために成分を過ヨウ素酸で化学的処理(例えば、糖タンパク質、炭水化物、または核酸などの糖部分のグリコール開裂)することを含んでもよい。これらの遊離アルデヒド基は、リンカーを化合物と結合させるためにリンカー上のヒドラジン基または遊離アミンと反応させることができる(例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込む、ロドウェル(Rodwell)らに付与された米国特許第4,671,958号を参照されたい)。抗体または抗体断片などのポリペプチドの遊離スルフヒドリル基を生成するための手順もまた知られている(内容全体を参照により本願明細書に組み込む、ニコロッティ(Nicolotti)らに付与された米国特許第4,659,839号を参照されたい)。]
[0060] 治療用物質および血液脳関門透過剤が双方ともペプチドである場合、二官能性化合物は化学的に合成されるか、あるいは、互いに直接的に結合されるか、またはペプチドリンカーにより結合された、双方の成分を含む融合タンパク質として組換え的に発現されうる。]
[0061] いくつかの実施形態では、リシン、グルタミン酸、およびポリエチレングリコール(PEG)を基にした異なる長さのリンカーが成分を結合するために使用される。分子をPEGに結合するための化学は当業者に周知である(例えば、以下の文献の内容全体を参照によって本願明細書に組み込んだ、ベロネーゼ(Veronese)著、「ペプチドおよびタンパク質ペグ化(Peptide and Protein PEGylation):問題および解決法の概説(a Review of Problems and Solutions)」、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、22:405〜417、2001年;ザリプスキー(Zalipsky)ら著、「薬物のポリエチレングリコールへの結合(Attachment of Drugs to Polyethylene Glycols)」、ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル(Eur. Plym. J.)、19(12):1177〜1183、1983年;オルソン(Olson)ら著、「ポリ(エチレングリコール)化ヒト増殖ホルモンアンタゴニストの調製および特性評価(Preparation and Characterization of Poly(ethylene glycol)ylated Human Growth Hormone Antagonist)」、ポリ(エチレングリコール)の化学および生物学的応用(Poly(ethylene glycol) Chemistry and Biological Applications)、170〜181、ハリスおよびザリプスキー編集、ACS、ワシントンDC、1997年;デルガド(Delgado)ら著、「PEG結合タンパク質の使用および特性(The Uses and Properties of PEG-Linked Proteins)」、クリティカル・レビューズ・イン・セラピューティック・ドラッグ・キャリアー・システム(Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Sys.)、9:249〜304、1992年;ペドレー(Pedley)ら著、「抗CEA抗体のポリ(エチレングリコール)修飾による腫瘍局在化増加の可能性(The Potential for Enhanced Tumour Localisation by Poly(ethylene glycol) Modification of anti-CEAAntibody)」、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Brit. J. Cancer)、70:1126〜1130、1994年;エア(Eyre)およびファーヴァ(Farver)著、テキストブック・オブ・クリニカル・オンコロジー(Textbook of Clinical Oncology)、377〜390(ホルレーブ(Holleb)ら編集、1991年);リー(Lee)ら著、「ポリエチレングリコールと結合した単一鎖Fvタンパク質の長期循環寿命(ProlongedCirculating Lives of Single-chain of Fv Proteins Conjugated with Polyethylene Glycol):共役化学および化合物の比較(a Comparison of Conjugation Chemistries and Compounds)」、バイオコンジュゲイト・ケミストリー(Bioconjug. Chem.)、10:973〜981、1999年;ヌッチ(Nucci)ら著、「ポリ(エチレングリコール)−修飾タンパク質の治療的価値(The Therapeutic Value of Poly(Ethytene Glycol)-Modified Proteins)」、アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビューズ6:133〜151、1991年;フランシス(Francis)ら著、「ポリエチレングリコール修飾(Polyethylene Glycol Modification):腫瘍標的に対する改善された方法論の関連性(Relevance of Improved Methodology to Tumour Targeting)」、ジャーナル・オブ・ドラッグ・ターゲティング(J. Drug Targeting)、3:321〜340、1996年、を参照されたい)。]
[0062] ある実施形態において、治療用物質および血液脳関門透過剤の結合は、グルタルアルデヒド、EDCI、塩化テレフタロイル、臭化シアンなどのそのような結合試薬の使用により、または、還元的アミノ化により、達成されうる。ある実施形態において、成分は、国際公開第9317713(A)号に開示された種類のヒドロキシ酸リンカーによって結合されうる。PEGリンカーはまた、様々なPEGテザー薬物の調製のために利用されうる(例えば、内容全体を参照によって本願明細書に組み込んだ、リー(Lee)ら著、「不安定エステル官能性を有する基質におけるアジドから一級アミンへの還元(Reduction of Azides to Primary Amines in Substrates Bearing Labile Ester Functionality):葉酸テザー薬物の調製のためのPEG可溶化「Y」形状イミノ二酢酸試薬の合成(Synthesis of a PEG-Solubilized, “Y”-Shaped Iminodiacetic Acid Reagent for Preparation of Folate-Tethered Drugs)」、オーガニック・レタース(Organic Lett.)、1: 179〜181、1999年を参照されたい)。]
[0063] 本発明のさらなる態様は、血液脳関門透過性を増加させるのに効果的な化合物を選別する方法を対象にしている。この方法は、未改変の動物と比較して、低下したCD73発現レベル、低下したアデノシン発現レベル、および/または、調節されたアデノシン受容体活性を有する改変された動物を提供することを含む。また、1つもしくは複数の候補化合物も提供され、その1つもしくは複数の候補化合物は、該改変された動物に投与される。その後、その1つもしくは複数の候補化合物がアデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるかどうかが、評価される。該改変された動物において、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるこれら候補化合物はその後、血液脳関門透過性を増加させるのに潜在的に効果的であるとみなされる。]
[0064] 本発明のある実施形態において、本発明の方法はまた、形質転換動物を使用して実施されてもよい。形質転換動物は、大きく2つのタイプ、すなわち「ノックアウト」および「ノックイン」に分類されうる。「ノックアウト」は、好ましくは標的遺伝子発現がほんのわずかになるか、または検知されないような標的遺伝子の機能の減少を結果としてもたらす、形質転換配列の導入による標的遺伝子の変化を有する。「ノックイン」は、例えば、標的遺伝子の追加複写物の導入により、あるいは、標的遺伝子の内因性複写物の発現増加を提供する調節配列を作動可能に挿入することにより、標的遺伝子の発現増加を結果としてもたらす宿主細胞ゲノムにおける変化を有する形質転換動物である。ノックインまたはノックアウト形質転換動物は、標的遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性でありうる。本発明の形質転換動物は、CD73、アデノシン、および/またはアデノシン受容体を過剰発現または低発現させることができるノックアウトまたはノックインとして大きく類別されうる。]
[0065] 本発明のある実施形態において、形質転換動物は、BBB透過性調節を決定、識別、および/または定量化するためのモデル系を提供するように設計される。そのような決定は、BBB透過性の崩壊または改変の前または後を含む、動物の寿命の間の任意の時点で行われうる。形質転換モデル系はまた、BBB透過性を促進する、すなわち増加させる生物学的活性剤の開発のために使用されうる。さらに、モデル系は、(例えば、外傷または疾患の結果によるBBB開放など、BBB「開放」(すなわち透過性増加)後に)試験剤が関門を修復するか、または透過性を減少させるかどうかを検定するために利用されうる。さらに、生体外技術を含む、細胞に基づく環境、すなわち細胞培養環境で行われるさらなる研究または検定のために、本発明の形質転換動物から細胞を単離することができる。]
[0066] 本発明のある実施形態では、該動物モデルは、その動物の神経系においてBBB透過性状態の改変をもたらす手順を受けることが可能な任意のヒト以外の脊椎動物を含む。好ましいモデル生物体には、哺乳類、ヒト以外の霊長類、およびげっ歯類が含まれるが、これらに限定されない。好ましいモデルの非限定例は、ラット、マウス、モルモット、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、チンパンジー、および、サルである。これらの試験動物は、野生型または形質転換型でありうる。]
[0067] 現在、胚顕微操作における技術進歩により、異種DNAを哺乳類の受精卵に導入することも可能である。例えば、全能性または多能性幹細胞が、顕微注射、リン酸カルシウム媒介沈殿、リポソーム融合、レトロウイルス感染、または他の手段により形質転換されうる。これらの形質転換された細胞はその後、胚の中に導入され、そしてその胚はその後、形質転換動物に発育することになる。好ましい実施形態では、発育中の胚を、所望の導入遺伝子を含有するウィルスベクターに感染させて、感染させた胚から該導入遺伝子を発現する形質転換動物を生み出す。別の好ましい実施形態では、所望の導入遺伝子は、好ましくは単一細胞期に、胚の前核または細胞質に同時注入され、その胚は成熟した形質転換動物に発育することができる。形質転換動物を生み出すためのこれらおよび他の異なる方法は、当技術分野において十分に確立されており、ゆえに本明細書において詳述しない。例えば、内容全体を参照により本願明細書に組み込んだ、米国特許第5,175,385号、および同第5,175,384号を参照されたい。]
[0068] BBB透過性は、当技術分野において知られている様々な指示薬を利用することによって試験されうる。例えば、分子量が180ダルトンを超える色素、トレーサーまたはマーカーは、無処理BBBを通過するのを阻まれる。検定は、マウス、ラット、イヌ、ブタ、またはサルを含むがこれらに限定するものではない、実験動物に行われうる。適する指示薬には、血液脳関門透過性を決定、可視化、測定、識別、または定量化するために利用される、当技術分野において知られている任意の色素、マーカー、またはトレーサーが含まれる。非限定例には、エバンスブルーおよびフルオレセインナトリウムが含まれる。]
[0069] 本発明のやはりさらなる態様は、薬剤を対象にしている。この薬剤は、中枢神経系の障害または状態を治療するのに有効な治療用物質、および、血液脳関門透過剤を有し、この血液脳関門透過剤は、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる。]
[0070] この医薬は、上述した方法と実質的に同じ方法で調製され投与されうる。]
[0071] 〔実施例1−マウス〕
Cd73−/−マウスは、先に記載されており(トンプスン(Thompson)ら著、「低酸素中の血管漏出におけるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ(CD73)の重要な役割(Crucial Role for Ecto-5’-Nucleotidase (CD73) in Vascular Leakage During Hypoxia)」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(J. Exp. Med.)、200:1395〜1405、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、C57BL/6に対して14世代にわたり戻し交配させた。Cd73−/−マウスは、感染に対する明白な感受性を有さず、リンパ器官のサイズおよび細胞構成、ならびに生体内および生体外検定におけるTおよびB細胞応答に基づき、正常であると思われる(トンプスンら著、「低酸素中の血管漏出におけるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ(CD73)の重要な役割」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン、200:1395〜1405、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。C57BL/6マウス、およびC57BL/6バックグラウンドのtcrα−/−マウスは、ザ・ジャクソン・ラボラトリーズ(The Jackson Laboratories)から購入された。マウスは、コーネル大学またはトゥルク大学において特定病原体未感染条件下で、飼育され収容された。アデノシン受容体遮断実験のために、DMSO(PBS中45体積%)中、0.6g/Lのカフェイン(Sigma)または2mg/kgのSCH58261(1mg/kgを皮下および1mg/kgを腹腔内)、あるいは45%DMSO単独を加えた飲料水をマウスに与えることを、EAE誘導の1日前から始め、実験の間中、継続した。マウスに実行される全ての手順は、関連動物審査委員会(relevant animal review committee)により承認された。]
[0072] 〔実施例2−EAE誘導および評価〕
EAEは、スワンボルグ(Swanborg)著、「ヒト脱髄疾患のためのモデルとしてのげっ歯類における実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis in Rodents as a Model for Human Demyelinating Disease)」、クリニカル・イミュノロジー・アンド・イミュノパソロジー(Clin. Immunol. Immunopathol.)、77:4〜13、1995年、および、バイノ(Bynoe)ら著、「自己抗原ペプチドによる皮膚免疫は実験的アレルギー性脳脊髄炎を防止するTサプレッサー細胞を誘導する(Epicutaneous Immunization with Autoantigenic Peptides Induces T Suppressor Cells that Prevent Experimental Allergic Encephalomyelitis)」、イミュニティー(Immunity)、19:317〜328、2003年に記載されているように、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(「MOG」)EAE誘導措置をマウスに実施することによって誘導される。これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む。つまり、MOG35−55ペプチド(PBS中3mg/mL)(Invitrogen)と完全フロイントアジュバント(CFA、Sigma)との1:1乳濁液(50μL)を各々の側腹部に皮下注射した。百日咳毒素(PTX、20ng)(Biological Laboratories Inc.)を、免疫化した時点、および2日後に再び、静脈内に与えた(PBS200μL)。疾患症状重症度:すなわち、0=疾患なし、0.5〜1=弱い/力のない尾部、2=力のない尾部および部分的な後肢麻痺、3=完全後肢麻痺、4=後肢および前肢両方の麻痺、5=死亡、に基づいて、EAEについてマウスに毎日評点を付けた。評点4のマウスは安楽死させた。]
[0073] 〔実施例3−T細胞調製および養子移入〕
PTXを用いずにCFA中のMOG35−55ペプチドでマウスに抗原刺激をした。1週間後、脾臓およびリンパ節からリンパ球を採取し、赤血球を溶解するためにACK緩衝剤(0.15MのNH4Cl、1mMのKHCO3、0.1mMのEDTA、pH7.3)と共にインキュベートした。CD8(TIB−105)、IAb,d,v,p,q,r(212.A1)、FcR(2.4−G2)、B220(TIB−164)、NK1.1(HB191)に対する抗体と、それからBioMagヤギ抗マウスIgG、IgM、および、ヤギ抗ラットIgG(Qiagen)と共に細胞をインキュベートした。負の磁気を高めた後、CD4+細胞を、直接使用するか、あるいは特定の亜集団にさらに分別した。分別のために、CD4に対する抗体(RM4−5)およびCD73に対する抗体(TY/23)で細胞を染色し、いくつかの実験では、CD25に対する抗体(PC61)で細胞を染色し、その後、FACSAria(BD Biosciences)を利用して分離した。分別後の純度は決まって99%を超えていた。養子移入のために、CD4+細胞または分別されたT細胞の全てを洗浄し、無菌PBS中に再懸濁した。レシピエントマウスは無菌PBS200μL中2.5×106個以下の細胞を静脈内に受け取った。]
[0074] 〔実施例4−フローサイトメトリー〕
細胞懸濁液をCD4に対する蛍光色素結合抗体(RM4−5)、CD73に対する蛍光色素結合抗体(TY/23)、またはFoxP3に対する蛍光色素結合抗体(FJK−16s)で染色した。細胞内FoxP3染色は、メーカー(eBioscience)の使用説明書にしたがって実行された。染色された細胞をFACSCalibur(BD Biosciences)上に得た。FlowJoソフトウェア(Tree Star)でデータを分析した。]
[0075] 〔実施例5−T細胞サイトカイン検定〕
MOG免疫化マウスから分別されたT細胞を、照射されたC57BL/6の脾細胞の存在下で、0μMまたは10μMのMOGペプチドと共に培養した。18時間の時点で上澄み液を収集して、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、IL−17、IL−1β、およびTNFαについてBio−plexサイトカイン(Biorad)検定を利用して分析した。]
[0076] 〔実施例6−免疫組織化学(「IHC」)〕
麻酔をかけたマウスをPBSで灌流し、脳、脾臓、および脊髄を分離し、Tissue Tek−OCT培養液中で瞬間凍結した。5μm切片(矢状方向の脳)をSupefrost/Plusスライド(Fisher)に貼り付け、アセトン中で固定して、−80℃で保管した。免疫染色のために、内因性ペルオキシダーゼを遮断するためにスライドをPBS中0.03%のH2O2で解凍、処理し、正常ヤギ血清(Zymed)中のカゼイン(Vector)で遮断し、その後、抗CD45(YW62.3)、抗CD4(RM4−5)、または抗ICAM−1(3E2)と共にインキュベートした。スライドをビオチン化ヤギ抗ラットIg(Jackson ImmunoResearch)およびストレプトアビジン−HRP(Zymed)と共にインキュベートし、AEC(赤)基質キット(AEC (Red) substrate kit)(Zymed)およびヘマトキシリン対比染色を用いて展開した。Fluoromount−Gと共にカバースリップを乗せ、それを光の下で撮影した(Zeiss)。]
[0077] 〔実施例7−リアルタイムq−PCR〕
トリゾール(Invitrogen)を使用して、RNAをZ310脈絡膜叢細胞株から分離した(ツェン(Zheng)ら著、「マウス脈絡叢からの不死化Z310脈絡叢上皮細胞株の確立および特性評価(Establishment and Characterization of an Immortalized Z310 Choroidal Epithelial Cell Line from Murine Choroid Plexus)」、ブレイン・リサーチ(Brain Res.)、958:371〜380、2002年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。cDNAをReverse−iTキット(ABGene)を使用して合成した。ARに特異的なプライマー(要求に応じて利用可能)を、遺伝子発現レベルを決定するために使用し、ABI7500リアルタイムPCRシステムで作動するSYBR−Greenキット(ABGene)を使用してGAPDHハウスキーピング遺伝子レベルに標準化した。各qPCR生成物の特異性を測定するために融解曲線分析を行った。]
[0078] 〔実施例8−EAEにおけるCD73の役割評価〕
アデノシンの免疫調節および免疫抑制特性に起因して、EAEにおけるCD73の役割を評価した。A1アデノシン受容体(AR)−欠損マウスにおける悪化したEAEの報告に基づいて(ツツイ(Tsutsui)ら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する(A1 Adenosine Receptor Upregulation and Activation Attenuates Neuroinflammation and Demyelination in a Model of Multiple Sclerosis)」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(J. Neurosci.)、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、細胞外アデノシンの産生を触媒することができないcd73−/−マウスは、重篤なEAEを体験することが予想された。驚いたことに、cd73−/−マウスは、EAEの誘導に対して強い耐性を示した。しかしながら、cd73−/−マウスからのCD4+T細胞は、CNS抗原に対して免疫反応を生じる能力を有しており、cd73+/+T細胞−欠損マウスに養子移入した場合、重篤なEAEを引き起こす。野生型マウスからのCD73+CD4+T細胞もまた、cd73−/−レシピエントに移入された場合、疾患を引き起こした。これは、リンパ球上またはCNS中のいずれかにおけるCD73発現が、EAEの間リンパ球が脳へ入り込むために必要であることを示唆する。cd73+/+マウスは、広域スペクトルARアンタゴニストカフェインおよびA2aAR特異的アンタゴニストSCH58261によりEAE誘導から保護されていたので、このデータは、CD73それ自体ではなく、CD73により産生された細胞外アデノシンが、EAEの間リンパ球がCNS中に入り込むことを調整するということを示唆している。これらの結果は、EAEの発症を調整することにおけるCD73およびアデノシンの役割を明らかにした最初のものである。]
[0079] 〔実施例9−Cd73−/−マウスはEAE誘導に耐性を示す〕
CD73がEAEの進行の間に炎症を制御することにおいて役割を担うかどうかを決定するために、Cd73−/−マウスおよび野生型(Cd73+/+)マウスに、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(「MOG」)EAE誘導措置を実施した(スワンボルグ著、「ヒト脱髄疾患のためのモデルとしてのげっ歯類における実験的自己免疫性脳脊髄炎」、クリニカル・イミュノロジー・アンド・イミュノパソロジー、77:4〜13、1995年;バイノら著、「自己抗原ペプチドによる皮膚免疫は実験的アレルギー性脳脊髄炎を防止するTサプレッサー細胞を誘導する」、イミュニティー、19:317〜328、2003年:これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。EAEの発症についての毎日の監視から、cd73−/−マウスが、それらの野生型対照物と比較して疾患重症度の劇的な減少を常に示すことが明らかになった(図1)。疾患誘導の3週間後までに、cd73−/−マウスは、野生型マウスの平均EAE評点2.0(力のない尾部および部分的な後肢麻痺)と比較して、たった0.5(弱い尾部)の平均EAE評点を有した(図1)。] 図1
[0080] 〔実施例10−cd73−/−マウスからのCD4+T細胞は、MOGの免疫化に応答する〕
その後、EAEの誘導に対するcd73−/−マウスの耐性は、免疫反応を抑制するcd73−/−リンパ球の能力の強化、または、これらのリンパ球がMOGの刺激に応答することができないことの、いずれか一方によって説明されうるかどうかを問うた。自然発生的CD4+CD25+FoxP3+T細胞、すなわちTregは、積極的に誘導されたEAEを調整することができる(コーム(Kohm)ら著、「最前線:CD4+CD25+調節性T細胞は積極的実験的自己免疫性脳脊髄炎の間に抗原特異的自己反応性免疫反応および中枢神経系炎症を抑制する(Cutting Edge: CD4+CD25+ Regulatory T Cells Suppress Antigen-Specific Autoreactive Immune Responses and Central Nervous System Inflammation During Active Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)」、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J. Immunol.)、169:4712〜4716、2002年:この内容全体を本願明細書に組み込む)。Tregは最近になってCD73を発現することが示され、いくつかの報告はCD73の酵素活性がTreg機能に必要とされていると示唆しているので(コービー(Kobie)ら著、「制御性T細胞および抗原刺激された中立CD4 T細胞はCD73を発現し、これは5’−アデノシン一リン酸をアデノシンに転換することによりエフェクターCD4 T細胞を抑制する(T Regulatory and Primed Uncommitted CD4 T Cells Express CD73, Which Suppresses Effector CD4 T Cells by Converting 5’-Adenosine Monophosphate to Adenosine)」、ジャーナル・オブ・イミュノロジー、177:6780〜6786;デアグリオ(Deaglio)ら著、「制御性T細胞に発現したCD39およびCD73により触媒されたアデノシン産生は、免疫抑制を媒介する(Adenosine Generation Catalyzed by CD39 and CD73 Expressed on Regulatory T Cells Mediates Immune Suppression)」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(J. Exp. Med.)、204:1257〜1265、2007年:これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、Tregの数および抑制活性がcd73−/−マウスにおいて正常であったかどうかを問うた。図2Aに示されているように、EAE誘導の前または後のいずれにおいても、野生型マウスおよびcd73−/−マウスにおけるCD4+FoxP3+Tregの頻度に有意な相違はなかった。同様に、CD73を発現したCD4+T細胞のパーセンテージは、野生型マウスにおいてEAE誘導の後、穏やかにしか変化しなかった(図2B)。加えて、MOG抗原特異的CD4+エフェクターT細胞増殖を阻害する野生型およびcd73−/−Tregの抑制能力に有意な相違は観察されなかった。cd73−/−T細胞がMOGペプチドで刺激された際に反応することができるかどうかを決定するために、サイトカインを増殖し生成するこれら細胞の能力を評価した。MOG免疫化cd73−/−マウスおよび野生型マウスからのCD4+T細胞は、様々な濃度のMOGペプチドに応答した生体外増殖において同様の程度を示した。しかしながら、MOG免疫化cd73−/−マウスからのCD4+T細胞は、野生型のCD73+CD4+T細胞またはCD73−CD4+T細胞と比較して、生体外MOG刺激に続いてより高いレベルのIL−17およびIL−1βを分泌した(図2C)。上昇したレベルのIL−17は、MS(Matuseviciusら著、「血液およびCSF単核細胞におけるインターロイキン−17mRNA発現は多発性硬化症において増大する(Interleukin-17mRNAExpression in Blood and CSF Mononuclear Cells is Augmented in Multiple Sclerosis)」、マルチプル・スクラロウシス(Mult. Scler.)、5:101〜104、1999年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、およびEAEの発症(コミヤマ(Komiyama)ら著、「IL−17は実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症において重要な役割を担う(IL-17 Plays an Important Role in the Development of Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)」、ジャーナル・オブ・イミュノロジー、177:566〜573、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)と関連し、一方、高いレベルの炎症性IL−1βサイトカインは、MSに対する危険因子であり、(デ・ヨング(de Jong)ら著、「再発性多発性硬化症の感受性および進行に対する危険因子としてのIL−1βおよびIL−1Raの産生(Production of IL-1beta and IL-1Ra as Risk Factors for Susceptibility and Progression of Relapse-Onset Multiple Sclerosis)」、ジャーナル・オブ・ニューロイミュノロジー(J. Neuroimmunol.)、126:172〜179、2002年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)かつ、IL−17産生のエンハンサーである(サットン(Sutton)ら著、「自己免疫性脳脊髄炎を媒介するIL−17産生T細胞の誘導におけるインターロイキン(IL)−1の重要な役割(A Crucial Role for Interleukin (IL)-1 in the Induction of IL-17-Producing T Cells That Mediate Autoimmune Encephalomyelitis)」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン、203:1685〜1691、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、INF−γおよびTNF−αの分泌について、MOG刺激に続く野生型T細胞とcd73−/−T細胞との間に相違は観察されなかった(図2C)。全体的に、これらの検定からの結果は、cd73−/−T細胞はMOGの免疫化に十分に応答できることを示唆している。] 図2A 図2B 図2C
[0081] それから、cd73−/−マウスからのT細胞が、EAEを引き起こす能力を有するかどうかを決定した。このことを試験するために、MOG免疫化cd73−/−マウスの脾臓およびリンパ節からのCD4+T細胞を、tcrα−/−(cd73+/+)レシピエントマウスに移入した後にEAEを誘導する能力について評価した。tcrα−/−マウスは、内因性T細胞を欠いており、それら自身でEAEを発症させることができない(エリオット(Elliott)ら著、「αβ+T細胞を欠くマウスは実験的自己免疫性脳脊髄炎の誘導に耐性を示す(Mice Lacking Alpha Beta + T Cells are Resistant to the Induction of Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)」、ジャーナル・オブ・ニューロイミュノロジー、70:139〜144、1996年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。cd73−/−ドナーからCD4+T細胞を受け取ったCd73+/+tcrα−/−レシピエントマウスは、野生型CD4+T細胞を受け取ったCd73+/+tcrα−/−レシピエントマウスと比較すると、より重篤な疾患を顕著に発症させた(図2D)。野生型およびcd73−/−ドナーのCD4+T細胞は、cd73+/+tcrα−/−レシピエントマウスへの移入に続いて、等しい程度の増殖を示した。したがって、cd73−/−マウスからのCD4+T細胞は、EAEを誘導できるだけでなく、cd73+/+tcrα−/−マウスに移入されると野生型マウスに由来するCD4+T細胞よりもさらに重篤なEAEを引き起こす。これらの結果は、cd73−/−CD4+T細胞がMOG刺激に応答して上昇したレベルの(EAEを悪化させることで知られている)IL−17およびIL−1βを分泌した、生体外検定と一貫性があり(図2C)、cd73−/−マウスが、非造血細胞におけるCD73発現の欠如(CNSにおける発現の欠如が最も起こりうる)のため、MOG誘導EAEに耐性を示すことを示唆している。] 図2C 図2D
[0082] 〔実施例11−Cd73−/−マウスは、EAE誘導後にリンパ球のCNSへの浸潤をほとんど/全く示さない〕
EAEは、主にCD4+T細胞媒介疾患であり(モンテロ(Montero)ら著、「CD4+、CD25+およびCD8+T細胞による実験的自己免疫性脳脊髄炎の調整(Regulation of Experimental Autoimmune Encephalomyelitis by CD4+, CD25+ and CD8+ T Cells):枯渇抗体を使用した分析(Analysis Using Depleting Antibodies)」、ジャーナル・オブ・オートイミュニティー(J. Autoimmun.)、23:1〜7、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、EAE進行の間、リンパ球はまず、CNS抗原に対する炎症反応を開始するためにCNSへのアクセスを獲得しなければならず、この結果、軸索脱髄および麻痺をもたらす(ブラウン(Brown)ら著、「炎症および神経変性事象の時間経過および分布は実験的自己免疫性脳脊髄炎の病変形成のための構造的基礎を提案する(Time Course and Distribution of Inflammatory and Neurodegenerative Events Suggest Structural Bases for the Pathogenesis of Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)」、ジャーナル・オブ・コンパラティブ・ニューロロジー(J. Comp. Neurol.)、502:236〜260、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。cd73−/−マウスにおいてEAE誘導に続いてCNSリンパ球浸潤が観察されるかどうかを決定するために、脳および脊髄切片を免疫組織化学的検査によりCD4+T細胞およびCD45+細胞の存在について検査した。Cd73−/−マウスは、MOG免疫化後13日目の時点で、野生型マウスと比較して(図3A〜図3C、図3G)、脳および脊髄におけるCD4+リンパ球(図3D〜図3G)およびCD45+リンパ球(図4(補足:図1))の頻度に劇的な減少を示した。加えて、2d2 TCR形質転換マウスからのMOG特異的T細胞(ベテッリ(Bettelli)ら著、「ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質−特異的T細胞受容体形質転換マウスは自発性自己免疫視神経炎を発症させる(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein-Specific T Cell Receptor Transgenic Mice Develop Spontaneous Autoimmune Optic Neuritis)」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン、197:1073〜1081、2003年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)を野生型マウスまたはcd73−/−マウスのいずれかに移入しEAE誘導を伴う、リンパ球追跡実験において、CNSにおける2d2細胞のパーセンテージは、野生型レシピエントマウスにおいて経時的に数倍増加したが、cd73−/−レシピエントにおいては全く増加しなかった(図5)。全体的に、これらの結果は、cd73−/−マウスにおけるEAE誘導に対する観察された保護は、著しく減少したCNSリンパ球浸潤と関連することを示唆している。それにもかかわらず、MOG免疫化cd73−/−マウスからのCD4+T細胞は、EAEを発症させるよう付随して誘導されたcd73+/+tcrα−/−マウスに移入すると、CNSへのアクセスを獲得する能力を有した(図3Kおよび図3L)。実際のところ、より早期およびより広範囲のCNSにおけるCD4+リンパ球浸潤が、野生型CD4+T細胞を受け取ったcd73+/+tcrα−/−マウスにおいてよりも(図3H〜図3J)、cd73−/−CD4+T細胞を受け取ったcd73+/+tcrα−/−マウスにおいて(図3K、図3L)観察された。したがって、これらの結果は、cd73−/−マウスからのドナーT細胞はcd73+/+レシピエントマウスのCNSに浸潤する能力を有することを証明している。] 図1 図3G 図3K 図3L 図4 図5
[0083] 〔実施例12−CD73は効率的なEAEの発症のためにリンパ球上またはCNS中のいずれかにおいて発現されなければならない〕
次に、CD4+T細胞上のCD73発現が、CNS中のCD73発現の欠如を補い、EAEの発症を可能にするかどうかを問うた。したがって、CD4+T細胞をMOG免疫化野生型マウスからcd73−/−レシピエントへ養子移入し、付随してEAEを誘導し、同様に処置された野生型レシピエントと疾患活動性を比較した(図6A)。野生型レシピエントが予想通り、EAE誘導に続いて疾患を発症させた一方、cd73−/−レシピエントもまた、疾患誘導の3週間後までに平均疾患評点1.5で顕著なEAEを発症させた。これは、cd73−/−マウスが通常これと同時点で示した平均評点0.5よりも(図1)、はるかに高かった。CD4+T細胞CD73発現とEAE感受性との関連をさらに定義付けるために、免疫化野生型マウスからの分別されたCD73+CD4+およびCD73−CD4+T細胞、または、免疫化cd73−/−マウスからの完全CD4+(CD73−)T細胞を、EAE誘導を伴ってcd73−/−レシピエントに移入した(図6B)。野生型マウスからのCD73+CD4+T細胞を受け取ったCd73−/−マウスは、誘導後3週間の時点で、約1.5の平均評点でEAEを発症させた。反対に、野生型由来CD73−CD4+T細胞を受け取ったcd73−/−マウスは、有意なEAEを発症させなかった。加えて、CD73発現tcrα−/−マウスにおいて重篤なEAEを引き起こす(図2D)能力を有するcd73−/−ドナーマウスからのCD4+細胞はまた、レシピエントcd73−/−マウスにおいてEAEを増強することはできなかった(図6B)。したがって、T細胞上のCD73発現は、非造血細胞におけるCD73発現の欠如を部分的に補うことができるが、CD73が両区画において発現される場合に、EAEは最も効果的に誘導される。] 図1 図2D 図6A 図6B
[0084] EAEの発症を促進するCD73発現非造血細胞の正体は、知られていない。BBBにおける血管内皮細胞が、多くの種類の内皮細胞がCD73を発現するので、有望な候補として見なされた(ヤマシタ(Yamashita)ら著、「マウスリンパ球におけるCD73発現およびFyn依存シグナル伝達(CD73 Expression and Fyn-Dependent Signaling on Murine Lymphocytes)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー、28:2981〜2990、1998年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。しかしながら、免疫組織化学的検査から、マウス脳内皮細胞が、CD73−であることが明らかになった。しかしながら、これらの実験の間、CD73は脳内の脈絡叢上で高度に発現されることが観察された(図6C)。脈絡叢とは、EAE進行の間にリンパ球がCNS内へ入り込む入口点である(ブラウンら著、「炎症および神経変性事象の時間経過および分布は実験的自己免疫性脳脊髄炎の病変形成のための構造的基礎を提案する」、ジャーナル・オブ・コンパラティブ・ニューロロジー、502:236〜260、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。図4Dは、EAE誘導後12日目の野生型マウスの脈絡叢と関連するリンパ球の浸潤を示す。また、極微のCD73染色が脊髄の髄膜下領域上に観察された。総合すると、これらの結果は、CD73の発現が、T細胞上であろうとCNS中(おそらく脈絡叢上)であろうと、効率的なEAEの発症に必要であるということを示唆している。] 図4D 図6C
[0085] 〔実施例13−アデノシン受容体アンタゴニストは、EAE誘導からマウスを保護する〕
CD73はAMPのアデノシンへの分解を触媒し、ARはCNS中に発現されるので(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年;ローシー(Rosi)ら著、「神経細胞アデノシンA2B受容体への脳炎の影響(The Influence of Brain Inflammation Upon Neuronal Adenosine A2B Receptors)」、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー(J. Neurochem.)、86:220〜227、2003年:これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、次に、ARシグナル伝達がEAE進行の間、重要であるかどうか決定した。野生型およびcd73−/−マウスを、EAE実験の1日前およびEAE実験の継続期間にわたって、飲料水中0.6g/Lの広域スペクトルARアンタゴニストカフェイン(ダッリーニャ(Dall'Igna)ら著、「神経保護のアデノシン受容体アンタゴニストとしてのカフェイン(Caffeine as a Neuroprotective Adenosine Receptor Antagonist)」、アナルズ・オブ・ファーマコセラピー(Ann. Pharmacother.)、38:717〜718、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)により処置し、これはマウス1匹あたり1日4.0mgのカフェインとなる、おおよその投与量に対応する(ヨハンソン(Johansson)ら著、「マウス脳におけるA1およびA2Aアデノシン受容体ならびにA1mRNA(A1 and A2A Adenosine Receptors and A1 mRNA in Mouse Brain):長期カフェイン処置の効果(Effect of Long-Term Caffeine Treatment)」、ブレイン・リサーチ(Brain Res.)、762:153〜164、1997年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)(図7A)。カフェインを摂取した野生型マウスは、EAEの発症から劇的に保護された(図7A)。これは先に公開された結果に匹敵する(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。予想通りに、カフェインを摂取したcd73−/−マウスは、EAEを発症させなかった(図7A)。CD73が脈絡叢上で高度に発現されるので(図6C)、次に、ARもまた脈絡叢上で発現されるかどうかを決定した。Z310マウス脈絡叢細胞株を利用して(ツェンら著、「マウス脈絡叢からの不死化Z310脈絡叢上皮細胞株の確立および特性評価」、ブレイン・リサーチ、958:371〜380、2002年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、A1およびA2aアデノシン受容体サブタイプのmRNAのみをqPCRにより検出した(図7B)。A1AR−/−マウスが、疾患誘導に続いて重篤なEAEを発症させることが先に示されているので(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、SCH58261(メラニ(Melani)ら著、「選択的A2A受容体アンタゴニストSCH58261は神経学的欠損から脳損傷およびラット局所脳虚血におけるp38MAPK活性化を保護する(The Selective A2A Receptor Antagonist SCH 58261 Protects From Neurological Deficit, Brain Damage and Activation of p38 MAPK in Rat Focal Cerebral Ischemia)」、ブレイン・リサーチ、1073〜1074:470〜480、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、A2aサブタイプに特異なARアンタゴニストによる野生型マウスの処置が、EAEの発症を防ぐことができるかどうかを問うた。野生型マウスに、1mg/kgのDMSO中SCH58261またはDMSO単独を腹腔内および皮下の両方で(合計2mg/kg)EAE誘導の1日前、および実験の全期間にわたって30日間、毎日与えた(図7C)。SCH58261を摂取した野生型マウスは、DMSO単独を摂取した野生型マウスと比較して、EAEの発症から劇的に保護された(図7C)。加えて、SCH58261を与えられた野生型マウスは、DMSO処置された野生型マウスと比較して、EAE誘導後15日目の時点で、脳および脊髄におけるCD4+リンパ球の頻度に有意な低下を示した(図7D)。脈絡叢上の接着分子(ICAM−1、VCAM−1、およびMadCAM−1など)がEAEの病変形成において役割を担うことを研究が示しているので(エンゲルハート(Engelhardt)ら著、「中枢神経系炎症における脈絡叢の関与(Involvement of the Choroid Plexus in Central Nervous System Inflammation)」、マイクロスコピカル・リサーチ・アンド・テクノロジー(Microsc. Res. Tech.)、52:112〜129、2001年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、SCH58261処置が、EAE誘導に続いて脈絡叢上での接着分子発現に影響を及ぼしたかどうかを決定した。DMSOおよびSCH58261で処置された野生型マウスからの脈絡叢の比較は、A2aAR遮断が、通常はEAE進行の間に起こるICAM−1の上方制御を防いだことを示す(図8)。] 図6C 図7A 図7B 図7C 図7D 図8
[0086] これらの結果に基づいて、cd73−/−マウスが細胞外アデノシンの産生を触媒することができないことが、MOG免疫化に続いてEAEを効率的に発症させることへの失敗を説明し、脈絡叢でのCD73発現およびA2aARシグナル伝達がEAE進行のための必要条件であると、結論を下した。]
[0087] この研究の目的は、MSについての動物モデルのEAEにおけるCD73の役割を評価することであった。CD73が、通例免疫抑制性である細胞外アデノシンの形成を触媒し(Boursら著、「免疫および炎症における内因性シグナル伝達分子としてのアデノシン5’−三リン酸およびアデノシン(Adenosine 5’-Triphosphate and Adenosine as Endogenous Signaling Molecules in Immunity and Inflammation)」、ファーマコロジー・アンド・セラピューティックス(Pharmacol. Ther.)、112:358〜404、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、A1AR−/−マウスが重篤なEAEを示すので(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、本発明者らは、cd73−/−マウスもまた重篤なEAEを発症させる可能性があると予測した。しかしながら、cd73−/−マウスは、EAE誘導に対して高度な耐性を示し、このことは、おびただしい量の研究が、cd73−/−マウスはより炎症になりやすいことを証明していることを考慮すると驚くべき発見である。例えば、cd73−/−マウスはよりブレオマイシン誘導肺損傷にかかりやすく(ウォリメル(Volmer)ら著、「エクト-5'-ヌクレオチダーゼ(CD73)媒介アデノシン産生は、ブレオマイシン誘導肺損傷のマウスにおける組織保護である(Ecto-5'-Nucleotidase (CD73)-Mediated Adenosine Production is Tissue Protective in a Model of Bleomycin-Induced Lung Injury)」、ジャーナル・オブ・イミュノロジー、176:4449〜4458、2006年:この内容全体を本願明細書に組み込む)、より血管炎症および新生内膜肥厚になりやすい(ツェルネッケ(Zernecke)ら著、「CD73/エクト−5’−ヌクレオチダーゼは血管炎症および新生内膜肥厚を防ぐ(CD73/ecto-5'-Nucleotidase Protects Against Vascular Inflammation and Neointima Formation)」、サーキュレイション(Circulation)、113:2120〜2127、2006年:この内容全体を本願明細書に組み込む)。これらの報告と一致して、本発明者らは、cd73−/−T細胞はMOG刺激に続いて高レベルのEAE関連炎症性サイトカイン、IL−1βおよびIL−17を産生したということを示した。さらに、T細胞を欠くが末梢全体にわたってCD73を発現するtcrα−/−マウスへのcd73−/−T細胞の養子移入は、結果として、抗炎症メディエーターとしてアデノシンが果たす役割に一致するMOG免疫化に続いて重篤なCNS炎症をもたらした。MSに対する最も効果的な療法の1つであるIFN−β治療が生体外および生体内の両方において内皮細胞上でのCD73発現を上方制御することを示したことに注目することは興味深い(アイラス(Airas)ら著、「多発性硬化症の治療におけるIFN-βの作用機構(Mechanism of Action of IFN-Beta in the Treatment of Multiple Sclerosis):CD73およびアデノシンに対する特別参照(A Special Reference to CD73 and Adenosine)」、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシス(Ann. N. Y. Acad. Sci.)、1110:641〜648、2007年:この内容全体を本願明細書に組み込む)。ゆえに、IFN−βがMS患者に恩恵をもたらす機構は不完全にしか理解されていないが、既知の抗炎症および神経保護効果を伴うアデノシン産生の増加が要因になりうる。]
[0088] EAE誘導に対する耐性と一致して、cd73−/−マウスは、野生型マウスと比較してEAEの間CNSに浸潤する細胞のより低い頻度を有した。このことはまた、CD73産生アデノシンが低酸素の間に血管内皮を横切る好中球の移動、および流入領域リンパ節の高内皮細静脈を横切るリンパ球の移動を制限することが先に示されているので、予期しなかった発見であった(トンプスン(Thompson)ら著、「低酸素中の血管漏出におけるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ(CD73)の重要な役割」、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン、200:1395〜1405、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。対照的に、本発明者らのデータは、CD73およびCD73により産生された細胞外アデノシンは病原性T細胞のCNS内への効率的な通過にとって必要とされることを示唆している。したがって、CD73およびアデノシンがEAEの間にCNSリンパ球浸潤において担う役割は、神経炎症の調節におけるそれらの役割よりも重大である。]
[0089] CNS中へのT細胞移動のためにCD73がどこで発現されるべきかを知ることは重要である。CD73は、T細胞のサブセット上(ヤマシタら著、「マウスリンパ球におけるCD73発現およびFyn依存性シグナル伝達」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー、28:2981〜2990、1998年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)ならびにいくつかの上皮細胞上(ストローメイヤーら著、「ヒト腸管上皮におけるCD73の表面発現、極性化、および機能的意義」、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、99:2588〜2601、1997年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)および内皮細胞上(ヤマシタら著、「マウスリンパ球におけるCD73発現およびFyn依存性シグナル伝達」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー、28:2981〜2990、1998年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)に見出される。ここで提示されるデータは、cd73−/−T細胞はMOG免疫化に十分応答するが、CD73が非造血組織内で発現されないかぎり、cd73−/−T細胞はCNSに入り込むことはできない、ということを明らかに証明している(すなわちcd73+/+tcrα−/−マウスはcd73−/−マウスからのCD4+T細胞の養子移入後EAEを発症させる)。非造血細胞上のCD73の欠如はまた、T細胞上のCD73発現により幾分補うことができる(すなわちcd73−/−マウスは、CD73−ではなくCD73+のCD4+T細胞が養子移入されるとEAEにかかりやすくなる)。CNS内のCD73の適切な源としてBBB内皮細胞が検討される一方で、CD73はヒト脳内皮細胞上に発現されるので(アイラスら著、「多発性硬化症の治療におけるIFN−βの作用機構:CD73およびアデノシンに対する特別参照」、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシス、1110:641〜648、2007年:この内容全体を本願明細書に組み込む)、免疫組織化学的検査は、マウス脳内皮細胞はCD73−であることを明らかにした。しかしながら、CD73は、血液と脳脊髄液(CSF)との間の関門を形成しCNS内のリンパ球免疫監視を調整する役割を有する脈絡叢上皮細胞上に高度に発現されることが見出された(ステファン(Steffen)ら著、「CAM−1、VCAM−1およびMAdCAM−1は、脈絡叢上皮上に発現されるが脈絡叢内皮上では発現されず、生体外でリンパ球の結合を媒介する(CAM-1, VCAM-1, and MAdCAM-1 are Expressed on Choroid Plexus Epithelium but Not Endothelium and Mediate Binding of Lymphocytes In Vitro)」、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am. J. Pathol.)、148:1819〜1838、1996年:この内容全体を本願明細書に組み込む)。該脈絡叢はまた、EAE進行の開始の間、T細胞のための入口点であると示唆されている(ブラウンら著、「炎症および神経変性事象の時間経過および分布は実験的自己免疫性脳脊髄炎の病変形成のための構造的基礎を提案する」、ジャーナル・オブ・コンパラティブ・ニューロロジー、502:236〜260、2007年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。EAEおよびMSの双方においてVLA−4/VCAM−1結合を介するリンパ球−脳内皮細胞の相互作用の役割は、十分に証明されてきたが(ライス(Rice)ら著、「多発性硬化症のための抗α4インテグリン療法(Anti-Alpha4 Integrin Therapy for Multiple Sclerosis):機構および原理(Mechanisms and Rationale)」、ニューロロジー(Neurology)、64:1336〜1342、2005年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、おそらく内皮BBBを横切るリンパ球移動は、少なくともEAEについては、疾患発症よりも疾患維持および進行のために、より重要である。]
[0090] 次の問題は、CD73がT細胞のCNSへの移動をどのように促すかである。初期の取り組みでは、リンパ球CD73は、LFA−1依存方法でヒトリンパ球を内皮細胞に結合することを促進できる、ということを示した(アイラスら著、「CD73会合は、リンパ球機能関連抗原−1−依存機構により、リンパ球の内皮細胞への結合を促進する(CD73 Engagement Promotes Lymphocyte Binding to Endothelial Cells Via a Lymphocyte Function-Associated Antigen-1-dependent Mechanism)」、ジャーナル・オブ・イミュノロジー、165:5411〜5417、2000年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。しかしながら、このことは、CD73欠損T細胞はCNSに入り込み、cd73+/+tcrα−/−マウスに重篤な疾患を引き起こすことがあるので、EAEではCD73の機能であるようには思われない(図2D)。代替的に、CD73は、細胞表面ARのためのリガンドである細胞外アデノシンを産生するために酵素として機能することができる。カフェインまたはSCH58261によるAR遮断はマウスをEAEから保護しうることを考慮すると、現在与えられている研究に関連するのはこの後者の機能である。広域スペクトルARアンタゴニストカフェインもまた、特定のホスホジエステラーゼを阻害するが(チョウイ(Choi)ら著、「カフェインおよびテオフィリン類似体(Caffeine and Theophylline Analogues):アデノシン受容体アンタゴニストとしておよびホスホジエステラーゼ阻害剤としての活性と行動的影響との相関関係(Correlation of Behavioral Effects With Activity as Adenosine Receptor Antagonists and as Phosphodiesterase Inhibitors)」、ライフ・サイエンシス(Life Sci.)、43:387〜398、1988年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、EAE進行の広域スペクトルARアンタゴニストカフェインの調節は、たいがいARシグナル伝達への影響による(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。この説は、SCH58261もまたA2aARシグナル伝達を特異的に阻害することによってEAE進行を防ぐという事実により支持される。CD73ならびにA1およびA2aARサブタイプは脈絡叢上で発現されるので、脈絡叢においてCD73により産生された細胞外アデノシンは、自己分泌方式でシグナル伝達することができる。] 図2D
[0091] 該A1およびA2aARは機能的に互いに対して拮抗し、アデノシンに対して異なる親和性を有するので(カルタ(Quarta)ら著、「側坐核の殻内でのグルタミン酸およびドーパミン放出におけるアデノシンA1およびA2a受容体が果たす正反対の調節性役割。慢性的カフェイン曝露の効果(Opposite Modulatory Roles for Adenosine A1 and A2A Receptors on Glutamate and Dopamine Release in the Shell of the Nucleus Accumbens. Effects of Chronic Caffeine Exposure)、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー、88:1151〜1158、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、アデノシンの細胞外濃度が、該A1およびA2a受容体を発現する細胞がどのように応答するのかを決定する:ゆえに、低濃度のアデノシンはA1サブタイプを活性化し、より高濃度がA2aサブタイプを刺激する機構的スイッチを作り出す(シルエラ(Ciruela)ら著、「アデノシンA1−A2A受容体ヘテロマーによる線条体グルタミン酸作動性神経伝達のシナプス前制御(Presynaptic Control of Striatal Glutamatergic Neurotransmission by Adenosine A1-A2A Receptor Heteromers)」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、26:2080〜2087、2006年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。CNSにおいて、このA1/A2a相互作用が神経炎症を媒介することにおいて重要であると示唆する根拠があり、ここで、A1シグナル伝達は保護的である一方、A2aシグナル伝達は炎症を促進する。例えば、A1アデノシン受容体を欠くマウスは疾患誘導に続いて重篤なEAEを発症させる一方(ツツイら著、「A1アデノシン受容体上方制御および活性化は、多発性硬化症モデルにおける神経炎症および脱髄を軽減する」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、24:1521〜1529、2004年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、A2aアンタゴニストを与えられたマウスは、EAEから完全に保護される(図5C)。加えて、A2a受容体を欠くマウスは、一過性局所虚血により誘導された脳損傷から保護される(チェン(Chen)ら著、「A(2A)アデノシン受容体欠損は、マウスにおける一過性局所虚血により誘導された脳損傷を和らげる(A(2A) Adenosine Receptor Deficiency Attenuates Brain Injury Induced by Transient Focal Ischemia in Mice)」、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、19:9192〜9200、1999年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。したがって、脈絡叢におけるCD73産生アデノシンシグナル伝達は、CNSでの炎症を調節することにおいて非常に重要な役割を担うように思われる。] 図5C
[0092] このアデノシンシグナル伝達はおそらく、脈絡叢での接着分子の発現を調整するだろう。複数の研究は、脈絡叢での接着分子、ICAM−1、VCAM−1、およびMadCAM−1の上方制御が、EAE進行と関連することを示した(エンゲルハートら著、「中枢神経系炎症における脈絡叢の関与」、マイクロスコピカル・リサーチ・アンド・テクノロジー、52:112〜129、2001年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。A2aARアンタゴニストSCH58261で処置されたマウスは、通常EAE誘導に続いて起こるような脈絡叢ICAM−1発現の増加を経験しないので(図8)(エンゲルハートら著、「中枢神経系炎症における脈絡叢の関与」、マイクロスコピカル・リサーチ・アンド・テクノロジー、52:112〜129、2001年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)、この結果は、A2aARシグナル伝達がEAE進行の間、ICAM−1を増加させることを示唆している。] 図8
[0093] 要約すると、このデータは、CD73がEAEの進行において重大な役割を担うことを示す。CD73を欠くマウスは、EAE誘導と関連する変性症状およびCNS炎症から保護される。このことは、EAEの間にリンパ球がCNS内へ効率的に入り込むためのCD73発現およびARシグナル伝達の必要性を証明する最初の研究である。ここに提示されたデータは、MSおよび他の神経炎症疾患に対する新規療法へつながることになる旅路の第1歩を印する可能性がある。]
[0094] 〔実施例14−BBBはアデノシン受容体の活性化を通して調節されうる〕
この実験の目的は、血液脳関門はアデノシン受容体の活性化によって調節されうるかどうかを決定することであった。NECAは、A1、A2aおよびA3アデノシン受容体に対して同様の親和性を有し、かつA2bアデノシン受容体に対して低い親和性を有する非選択的アデノシン受容体アゴニストである。アデノシン受容体の活性化が血液脳関門(BBB)を横切るエバンスブルー色素の溢出を誘導するかどうかを決定するために、非選択的アデノシン受容体アゴニストである、NECA(n=5、100μL 0.01nM);A2aアデノシン受容体特異的アンタゴニストである、SCH58261(n=5、1mg/kg);BBB漏出を誘導することで知られており、そのため陽性対照として使用される薬剤である、百日咳毒素(n=7、200μL);および、媒体対照としてPBS(n=5、100μL)でマウスを処置した。細胞外アデノシンを産生する能力を欠くCD73−/−マウスもNECAで処置した(n=4、100μL 0.01nM)。処置は200μLの1%エバンスブルー色素の静脈注射(計2μgの色素を注射)の1時間前に、単一静脈注射として施された。エバンスブルーを投与して4時間後に、ケタミン/キシラジン混合物でマウスに麻酔をし、左心室を介して氷冷PBSで灌流した。脳を採取し、n,n−ジメチルホルムアミド(DMF)中、5μL/mg(体積:重量)で均質化した。組織をDMF中で72時間、室温でインキュベートして色素を抽出した。抽出に続いて、組織/溶媒混合物を30分間500×gで遠心分離し、100μLの上澄み液をBioTex分光光度計で620nmにおいて読み取った。データを、μg エバンスブルー/mL DMFとして表す。]
[0095] 一般的なアデノシン受容体アゴニストNECAでマウスを処置することは、血液脳関門を横切る色素の移動を誘導することができる。このことは、この関門がアデノシン受容体の活性化を通して調節されうることを示唆する。図9Aにおいて、細胞外アデノシンを欠き、ゆえにアデノシン受容体を通して適切にシグナル伝達することができないCD73−/−マウスをNECAで処置し、その結果、色素移動においてPBS対照に対してほぼ5倍の増加をもたらした。本発明者らは、このアンタゴニストを使用したA2aアデノシン受容体の遮断はリンパ球が脳へ入り込むことを防ぐことができる、ということを示したので、SCH58261を陰性対照として使用した(ミルズ(Mills)ら著、「実験的自己免疫性脳脊髄炎の間、リンパ球が中枢神経系内へ効率的に入り込むためにCD73が必要である(CD73 is Required for Efficient Entry of Lymphocytes into the Central Nervous System During Experimental Autoimmune Encephalomyelitis)」、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシス(Proc. Natl. Acad. Sci.)、105(27):9325〜9330、2008年:この内容全体を参照により本願明細書に組み込む)。図9Bにおいて、NECAで処置された野生型マウスもまた、対照マウスを超える増加を示している。百日咳がマウスEAEモデルにおいて血液脳関門漏出を誘導することが知られているので、百日咳を陽性対照として使用する。] 図9A 図9B
[0096] 〔実施例15−A2aおよびA2bアデノシン受容体はヒト内皮細胞株hCMEC/D3上に発現される〕
生体外で血液脳関門(BBB)を確立するために、BBB特性を有するとして先に説明されたヒト脳内皮細胞株hCMEC/D3(ウエクスラー(Weksler)ら著、「ヒト成人脳内皮細胞株の血液脳関門特異的特性(Blood-brain Barrier-specific Properties of a Human Adult Brain Endothelial Cell Line)」、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー、19(13):1872〜4、2005年;ポラー(Poller)ら著、「薬物輸送研究のためのヒト血液脳関門モデルとしてのヒト脳内皮細胞株hCMEC/D3(The Human Brain Endothelial Cell Line hCMEC/D3 as a Human Blood-brain Barrier Model for Drug Transport Studies)」、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー、107(5):1358〜1368、2008年:これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む)を取得した。ここで、これらの細胞におけるアデノシン受容体の発現パターンを確立した。]
[0097] hCMEC/D3細胞をコンフルエントまで増殖させて採取し、TRIzol試薬(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)をメーカーの使用説明書にしたがって使用してRNAを抽出した。VersocDNAキット(Thermo Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用してcDNAを合成し、Power SYBR Green(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスター・シティー)を使用してリアルタイムPCRを実行した。]
[0098] 図10に示されているように、A2aおよびA2bアデノシン受容体は、ヒト内皮細胞株hCMEC/D3において発現されることが見出された。] 図10
[0099] 〔実施例16−脳内皮細胞のアデノシン受容体刺激は、BBBを通るリンパ球移動を促進する〕
血液脳関門(BBB)は内皮細胞から構成される。EAEの後期の間、リンパ球はBBBを横断することが知られている。脳内皮細胞のアデノシン受容体刺激がBBBを通るリンパ球移動を促進することができるかどうかを決定するために、生体外BBBを確立した。BBB特性を有するとして先に説明されたヒト脳内皮細胞株hCMEC/D3(ウエクスラーら著、「ヒト成人脳内皮細胞株の血液脳関門特異的特性」、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー、19(13):1872〜4、2005年;ポラーら著、「薬物輸送研究のためのヒト血液脳関門モデルとしてのヒト脳内皮細胞株hCMEC/D3」、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー、107(5):1358〜1368、2008年:これら文献の内容全体を参照により本願明細書に組み込む)を取得した。]
[0100] hCMEC/D3細胞をTranswell上に播種し、コンフルエントになるまで増殖させた。NECA(一般的なアデノシン受容体(AR)アゴニスト)、CCPA(A1ARアゴニスト)、CGS 21860(A2AARアゴニスト)、またはDMSO媒体を用いて、あるいは用いずに、2×106のジャーカット細胞を上層チャンバに加えた。24時間後、下層チャンバ内の移動した細胞を数えた。数値を、HCMECD3を播種していないtranswellを通って移動した細胞の数と比べる。]
[0101] 図11に示されたように、広域スペクトルアデノシン受容体アゴニストであるNECAはいくらかの移動を誘導した。A2aアデノシン受容体アゴニストであるCGSは、より低濃度で使用された場合、生体外BBBを横切るリンパ球移動を促進した。A1アゴニストであるCCPAは、高レベルでリンパ球移動を誘導した。これは、おそらくCCPAに対してより低い親和性を有し、ゆえにCCPAのより高いレベルでのみ活性化される、A2aアデノシン受容体の活性化に起因する。] 図11
权利要求:

請求項1
対象における血液脳関門透過性を増加させる方法であって、増加した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階と、前記対象における血液脳関門透過性を増加させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる治療に、前記選択された対象を供する段階と、を含む、方法。
請求項2
前記選択された対象を、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させる治療に供する、請求項1に記載の方法。
請求項3
前記選択された対象を、アデノシン受容体を調節する治療に供する、請求項1に記載の方法。
請求項4
A2aアデノシン受容体アゴニストが投与される、請求項3に記載の方法。
請求項5
A1アデノシン受容体アンタゴニストが投与される、請求項3に記載の方法。
請求項6
前記選択された対象を、CD73レベルおよび/または活性を増加させる治療に供する、請求項1に記載の方法。
請求項7
前記選択された対象が、精神医学的/行動性障害およびCNS疾患からなる群から選択される状態を有している、請求項1に記載の方法。
請求項8
前記選択された対象が、統合失調症、躁鬱病、認知症、および、双極性障害からなる群から選択される精神医学的/行動性障害を有している、請求項7に記載の方法。
請求項9
対象における血液脳関門透過性を減少させる方法であって、減少した血液脳関門透過性から利益を得る可能性のある対象を選択する段階と、前記対象における血液脳関門透過性を減少させるのに有効な条件下で、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を減少させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を減少させる治療に、前記選択された対象を供する段階と、を含む、方法。
請求項10
前記選択された対象を、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を減少させる治療に供する、請求項9に記載の方法。
請求項11
前記選択された対象を、アデノシン受容体を調節する治療に供する、請求項9に記載の方法。
請求項12
A2aアデノシン受容体アンタゴニストが投与される、請求項11に記載の方法。
請求項13
A1アデノシン受容体アゴニストが投与される、請求項11に記載の方法。
請求項14
前記選択された対象を、CD73レベルおよび/または活性を減少させる治療に供する、請求項9に記載の方法。
請求項15
前記対象が、炎症性疾患を有している、請求項9に記載の方法。
請求項16
前記対象が、リンパ球が脳内に入り込むことによって媒介される状態を有している、請求項9に記載の方法。
請求項17
前記対象が、中枢神経系の脳炎、パーキンソン病、てんかん、HIVによる神経学的兆候−AIDS、ループスの神経学的後遺症、ハンチントン病、および脳腫瘍からなる群から選択される状態を有している、請求項9に記載の方法。
請求項18
前記対象が、髄膜炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎、および進行性多巣性白質脳症からなる群から選択される状態を有している、請求項17に記載の方法。
請求項19
中枢神経系の障害または状態について対象を治療する方法であって、前記中枢神経系の前記障害または状態を有している対象を選択する段階と、前記中枢神経系の前記障害または状態を治療するのに有効な治療用物質を提供する段階と、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる血液脳関門透過剤を提供する段階と、前記治療用物質および前記血液脳関門透過剤を、前記治療用物質が血液脳関門を通過して前記障害または状態を治療するのに有効な条件下で、前記選択された対象に投与する段階と、を含む、方法。
請求項20
前記治療用物質および前記血液脳関門透過剤が、共に結合される、請求項19に記載の方法。
請求項21
前記血液脳関門透過剤が、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させる、請求項19に記載の方法。
請求項22
前記血液脳関門透過剤が、アデノシン受容体を調節する、請求項19に記載の方法。
請求項23
A2aアデノシン受容体アゴニストが投与される、請求項22に記載の方法。
請求項24
A1アデノシン受容体アンタゴニストが投与される、請求項22に記載の方法。
請求項25
前記血液脳関門透過剤が、CD73レベルおよび/または活性を増加させる、請求項19に記載の方法。
請求項26
前記投与する段階が、静脈内に行われる、請求項19に記載の方法。
請求項27
血液脳関門透過性を増加させるのに効果的な化合物を選別する方法であって、未改変の動物と比較して、低下したCD73発現レベル、低下したアデノシン発現レベル、および/または、調節されたアデノシン受容体活性を有する改変された動物を提供する段階と、1つまたは複数の候補化合物を提供する段階と、前記1つまたは複数の候補化合物を前記改変された動物に投与する段階と、前記1つまたは複数の候補化合物がアデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるかどうかを評価する段階と、前記改変された動物において、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させるこれら候補化合物を、血液脳関門透過性を増加させるのに潜在的に効果的であるとみなす段階と、を含む、方法。
請求項28
中枢神経系の障害または状態を治療するのに有効な治療用物質と、アデノシンレベルおよび/または生物学的利用能を増加させ、アデノシン受容体を調節し、ならびに/あるいは、CD73レベルおよび/または活性を増加させる、血液脳関門透過剤と、を含む、薬剤。
請求項29
前記治療用物質および前記血液脳関門透過剤が、共に結合されている、請求項28に記載の薬剤。
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引用文献:
公开号 | 申请日 | 公开日 | 申请人 | 专利标题
法律状态:
2012-06-05| A300| Withdrawal of application because of no request for examination|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20120605 |
优先权:
申请号 | 申请日 | 专利标题
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