专利摘要:
ティピファルニブ(R115777、ザーネストラ)によるファルネシルトランスフェラーゼ阻害に応答する見込みのある急性骨髄性白血病(AML)患者集団を診断する際に有用な、単純な二遺伝子発現アッセイ(RASGRP1:APTX)である。
公开号:JP2011512785A
申请号:JP2009553739
申请日:2008-03-13
公开日:2011-04-28
发明作者:ファン・ホンタオ;ラポニ・ミッチ;ワン・イーシン
申请人:ベリデックス・エルエルシーVeridex,LLC;
IPC主号:C12Q1-68
专利说明:

[0001] 〔発明の背景〕
現在、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤に対する応答を予測するために利用可能な方法は全く存在しない。ティピファニブ(Tipifarnib)は、臨床で試験された最初のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)であった。Rowinsky et al. (2006)参照。それは、AML、MM、MDS、および、CMLを含む血液疾患で顕著な活性を示し、AMLおよびMDSでは、最大約15%の完全寛解率を有した。Mesa et al. (2006)、Karp et al. (2001)、Lancet et al. (2007)、Fenaux et al. (2007)、およびHarousseau et al. (2007)参照。FTIは、Rasを含む数多くの重要なシグナル伝達分子に対するファルネシル基の付加を競合的に阻害することによって、機能する。Rowinsky et al. (2006)、およびCox et al. (2002)参照。]
[0002] がんに関係するいくつかの分子(例えば、Ras)が、細胞の原形質膜の内部リーフレットと相互作用し、様々なシグナル伝達経路に関わるようになるためには、ファルネシルトランスフェラーゼ酵素によりファルネシル化されなければならない。Rasは、プレニル化されるCAAXボックスを有するような、がんに関係する唯一のタンパク質ではない。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)は、様々なタンパク質のC末端CAAXモチーフへの炭素ファルネシル基の共有結合を阻害する治療薬である。それらは、がんおよび増殖性疾患(例えば、白血球)の治療に有用である。FTIにより最も有益に対処可能な疾患には、急性骨髄性白血病(AML)がある。]
[0003] 多くの治療計画に当てはまることだが、FTIによる治療に応答する患者もいれば、そうでない患者もいる。応答する見込みのない患者に治療を処置することは、望ましいことではない。このように、薬物を投与する前に、患者がこのような治療に応答することがどのように期待されるか知ることは有用であり、それにより、非応答者が不必要に治療されなくなるだろうし、また、薬物から利益を受ける最も良い機会を有する者が、適切に治療されモニターされるだろう。更に、治療に応答する者のうち、異なる応答の程度があってもよい。FTIに応答しない患者、または、FTI単独の応答が、望まれる応答よりも低い患者に対しては、FTI以外の治療薬による治療、または、FTIに加えた治療薬による治療が有益かもしれない。]
[0004] 歴史的に、ras遺伝子の変異状態が、FTIに対する患者応答についての候補マーカーであると考えられた。この根拠は、FTIがRas形質転換細胞を妨げることができ、また、ras遺伝子内の特異的点突然変異が、多くのがんにおけるRas経路の構成的活性化を引き起こすという臨床前証拠に基づいた。End et al. (2001)、Reuter et al. (2000)、およびBos et al. (1989)参照。腫瘍が1つまたは2つの経路の活性化に大いに依存しているということ(「がん遺伝子依存症」仮説)が概して受け入れられているため、特定の経路により促進された腫瘍を有する患者は、その経路を阻害する薬物に対して応答すべきであるということになる。Weinstein et al. (2006)参照。しかしながら、経路は、複数の事象により活性化されうるし、また、Ras突然変異の活性化がない場合でも、Rasはアップレギュレーションされうる。Ehmann et al. (2006)参照。更に、臨床研究において、ras突然変異とFTIに対する応答の間に相関がないことが示されている。Karp et al. (2001)、および米国特許出願第20070048782号参照。実際、いくつかの初期臨床研究は、高頻度のras突然変異を示すがんに着目しているが、残念ながら、これらの臨床試験では、応答率が低かった。Mesa (2006)、Rao et al. (2004)、およびVan Cutwem et al. (2004)参照。]
[0005] 〔発明の概要〕
我々は、67人の患者由来の骨髄を分析した。その骨髄は、以前に未治療であり、N-Ras変異、グローバル遺伝子発現、および/または、特定遺伝子の定量PCR(qPCR)について危険性の高い急性骨髄性白血病(AML)である高齢者における、ティピファルニブ[R115777、ザーネストラ(ZARNESTRA)(登録商標)]によるファルネシルトランスフェラーゼ阻害の第2相研究に由来した。マイクロアレイプロファイリングにより、二遺伝子発現比率(RASGRP1:APTX)を同定し、これはティピファルニブに対する応答を予測するのに最も高い精度を提示した。我々は、再発または難治性AML由来の54個のサンプルの独立セットにおいて、この分類指標が、NPV92%およびPPV 28%(オッズ比4.4)で、ティピファルニブに対する応答を予測できることを示した。したがって、この分類指標は、新たに診断したAML、および、再発または難治性AMLの両方において、高いNPVを維持しながら、約50%程度全応答率を改善し、また、患者の全生存を有意に改善する。また、同じ臨床研究に由来する30個のAMLサンプルにおいて、qPCRにより二遺伝子分類指標を検証したところ、陰性適中率(NPV)81%および陽性適中率(PPV)50%(オッズ比4.3)を示した。これらのデータは、単純な二遺伝子発現解析が、ティピファルニブに対して応答する見込みのあるAML患者集団を診断する際に有用かもしれないことを示唆している。]
[0006] マイクロアレイ技術は、様々ながんにおける数多くの異なる治療モダリティ(乳がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および、白血病における化学療法または内分泌療法を含む)に対する応答または耐性を予測するような、遺伝子発現プロファイルを同定するために利用されている。Ma et al. (2004)、Chang et al. (2003)、Jansen et al. (2005)、Potti et al. (2006)、Shipp et al. (2002)、Rosenwald et al. (2002)、Lossos et al. (2004)、Yeoh et al. (2002)、およびHolleman et al. (2004)参照。我々は以前にも、再発または難治性AMLにおけるティピファルニブの応答の分子的予測因子を同定するために、遺伝子発現プロファイリングを用いた。米国特許出願第20070048782号参照。本願において、新たに診断されたAMLにまでこの研究を拡張し、臨床転帰を予測するような二遺伝子発現比率(RASGRP1:APTX)の同定に至った。更に、この分類指標がqPCRにより解析可能であり、また、再発または難治性AMLにおいても予測有用性を有することを示す。]
[0007] 〔図面の簡潔な説明〕
図1は、AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1遺伝子の性能を示す。新たに診断されたAMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標を用いた正確度(A)とカプラン・マイヤー生存曲線(B)である。
図2は、AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1:APTX遺伝子対の性能を示す。二遺伝子分類指標により層別化された、新しく診断されたAML患者(A)と、再発/難治性AML患者(C)の全生存は、カプラン・マイヤー分析を用いてプロットされている。新たに診断されたAML(B)と再発/難治性AML(D)における二遺伝子分類指標の正確度を示す。
図3は、qPCRを用いたRASGRP1:APTX遺伝子分類指標の性能を示す。(A)20人の応答者と10人の進行性疾患を有する患者についての正規化RASGRP1:APTXCt値である。マイクロアレイ上で行われた20個の独立サンプルと10個の訓練サンプルとを別々に示す。水平線はグループ平均を示す。(B)全30人の患者についての新たに診断されたAMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標の正確度を示す。患者を層別化するために、カットオフ0を用いた。(C)層別化した患者の関連した全生存を、カプラン・マイヤー分析を用いてプロットする。
図4は、再発および難治性AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1遺伝子の性能を示す。再発/難治性AMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標を用いた正確度(A)とカプラン・マイヤー生存曲線(B)である。
図5は、RASGRP1:APTX遺伝子発現比率により層別化された、非FTIにより治療されたAML患者の全生存を示す。利用可能なデータセットには、RASGRP1とAPTXの両方に対する3つのcDNAプローブが存在する。まず、各遺伝子の平均値を計算し、その後、これらの値のRASGRP1:APTX比率を計算した。1を超える比率の患者を進行者に分類し、1未満の比率の患者を応答者に分類した。その後、カプラン・マイヤー分析を実施した。
図6は、AffymetrixとqPCRデータとの相関を示す。Affymetrix GeneChipとqPCRの両方により分析された9つのRNAサンプルを、線形回帰分析により比較した。] 図1 図2 図3 図4 図5 図6
[0008] 〔発明の詳細な説明〕
本明細書で言及する治療薬は、FTIである。それらは多くの剤形を採ることができるが、がんおよび増殖性疾患に関係するタンパク質のファルネシル化に干渉するか、または、低減させるといった必須の阻害機能を共有する。好ましくは、FTIは、AMLのような白血病の治療のために指示されるものである。FTIに対して応答する患者は、FTIによる治療の後、骨髄で50%を超える芽細胞の減少が見られる者である。]
[0009] 数多くのFTIが本発明の範囲内であり、米国特許第5,976,851号、同第5,972,984号、同第5,972,966号、同第5,968,965号、同第5,968,952号、同第6,187,786号、同第6,169,096号、同第6,037,350号、同第6,177,432号、同第5,965,578号、同第5,965,539号、同第5,958,939号、同第5,939,557号、同第5,936,097号、同第5,891,889号、同第5,889,053号、同第5,880,140号、同第5,872,135号、同第5,869,682号、同第5,861,529号、同第5,859,015号、同第5,856,439号、同第5,856,326号、同第5,852,010号、同第5,843,941号、同第5,807,852号、同第5,780,492号、同第5,773,455号、同第5,767,274号、同第5,756,528号、同第5,750,567号、同第5,721,236号、同第5,700,806号、同第5,661,161号、同第5,602,098号、同第5,585,359号、同第5,578,629号、同第5,534,537号、同第5,532,359号、同第5,523,430号、同第5,504,212号、同第5,491,164号、同第5,420,245号、および同第5,238,922号に記載されたものが含まれる。非ペプチド性の、いわゆる「小分子」治療薬が好ましい。より好ましいFTIは、キノリン、または、キノリン誘導体(例えば、
7−(3−クロロフェニル)−9−[(4−クロロフェニル)−1H−イミダゾール−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−5−オン、
7−(3−クロロフェニル)−9−[(4−クロロフェニル)−1H−イミダゾール−1−イルメチル]−1,2−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン、
8−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル),メチル]−6−(3−クロロフェニル)−1,2−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン、および、
8−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−6−(3−クロロフェニル)−2,3−ジヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−5−オン)である。最も好ましいFTIは、(B)−6−[アミノ(4−クロロフェニル)(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−(3−クロロフェニル)−1−メチル−2(1H)−キノリノンである。]
[0010] FTIおよび他の治療薬により白血病を治療することを含む本発明の態様において、本明細書で言及される治療薬は、キノリンを基とするFTIによる治療を受けた白血球細胞の遺伝子発現分析を通じて詳説された生物学的経路に対する効果を有するものである。]
[0011] タンパク質またはペプチドを発現することができる核酸配列(「遺伝子」)がゲノム内に単に存在することは、タンパク質またはペプチドが所与の細胞で発現されるかどうかの決定因子ではない。タンパク質またはペプチドを発現することができる所与の遺伝子であるかどうか、また、仮にそうであるならば、このような発現がどの程度起こるかは、様々な複雑な因子により決定される。これらの因子を理解し、評価することの困難性に関わらず、遺伝子発現を評価することにより、所与の刺激(例えば、薬物または他の治療薬の導入)に対する細胞性応答についての有用な情報を得ることができる。遺伝子が活性か不活性かの程度の相対的な指標は、遺伝子発現プロファイルにおいて見出される。本発明の遺伝子発現プロファイルは、所与の治療から利益を受ける見込みのある患者を同定し治療するために、または、薬物もしくは治療に対して、ほとんどもしくは全く有益な応答を経験する見込みのない所与の治療から患者を除外するために用いられる。]
[0012] 遺伝子発現プロファイルを確立するための好ましい方法(関連する生物学的経路の詳説に到達するために用いられるものも含む)には、タンパク質またはペプチドをコードしうる遺伝子により産生されるRNAの量を決定することが含まれる。このことは、逆転写PCR(RT−PCR)、競合RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、ディファレンシャルディスプレイRT−PCR、ノザンブロット分析、および、他の関連した試験により達成される。個々のPCR反応を用いて、これらの技術を実施することが可能であるが、mRNAから産生されたコピーDNA(cDNA)またはコピーRNA(cRNA)を増幅し、マイクロアレイを通じて分析することが最も良い。多くの異なるアレイ配置やそれらの製造方法が本分野の当業者に既知であり、米国特許(例えば、米国特許第5,445,934号、同第5,532,128号、同第5,556,752号、同第5,242,974号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,472,672号、同第5,527,681号、同第5,529,756号、同第5,545,531号、同第5,554,501号、同第5,561,071号、同第5,571,639号、同第5,593,839号、同第5,599,695号、同第5,624,711号、同第5,658,734号、および同第5,700,637号)に説明されている。]
[0013] マイクロアレイ技術は、何千もの遺伝子の定常状態のmRNAレベルの測定を同時に可能にし、それにより、細胞生物学に対するFTIの効果、また、このような効果の分析に基づいて起こりうる治療効果を同定するための強力なツールを提示する。2つのマイクロアレイ技術が現在広く使われている。1つ目はcDNAアレイであり、2つ目はオリゴヌクレオチドアレイである。これらのチップの構成に違いは存在するけれども、本質的に全ての下流データ分析および出力は同じものである。これらの分析の結果は、一般的には、標識プローブから受信されたシグナルの強度の測定であり、そのプローブは、マイクロアレイ上の既知の位置で核酸配列にハイブリダイゼーションするような、サンプル由来のcDNAを検出するために用いられる。一般的に、シグナルの強度は、cDNAの量、すなわち、サンプル細胞で発現したmRNAの量に比例する。非常に多くのこのような技術が利用可能であり、有用である。遺伝子発現を検出するための好ましい方法は、米国特許第6,271,002号、同第6,218,122号、同第6,218,114号、および同第6,004,755号に見ることができる。]
[0014] このような強度を比較することによって、発現レベルの分析を実施する。このことは、試験サンプル対対照サンプルにおける遺伝子の発現強度の比率マトリックスを生成することにより行うのが、最良である。例えば、薬物で処置された組織由来の遺伝子発現強度を、薬物で処置されていない同じ組織から生み出される発現強度と比較することができる。これらの発現強度の比率は、試験サンプルおよび対照サンプル間の遺伝子発現の倍数的変化を示唆している。]
[0015] また、遺伝子発現プロファイルは、数多くの方法で表示することができる。最も一般的な方法は、比率マトリックスを、列が試験サンプルを、行が遺伝子を示すような図形的なデンドログラムに配置することである。同様の発現プロファイルを有する遺伝子が互いに近位にあるように、データを配置する。各遺伝子の発現比率は、色として視覚化される。例えば、1未満の比率(ダウンレギュレーションを示す)は、スペクトラムの青い部分に現れ、1を超える比率(アップレギュレーションを示す)は、スペクトラムの赤い部分に色として現れるかもしれない。このようなデータを表示するために、市販のコンピュータソフトウェアプログラムが利用可能であり、Batelleの“OMNIVIZ PRO”ソフトウェア、および、Stanfordの“TREE VIEW”ソフトウェアが含まれる。]
[0016] 異なる発現をする遺伝子は、FTIによる処置後の異常細胞において、アップレギュレーションされるか、ダウンレギュレーションされるかのいずれかである。アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションは、いくつかの基準に対する遺伝子の発現量において(それを測定するために用いられるシステムにおけるノイズの寄与を超えて)検出可能な違いが見られることを意味する相対的な用語である。この場合、基準は、未処置の異常細胞で測定された遺伝子発現である。処置された異常細胞における目的の遺伝子は、その後、同じ測定方法を用いた基準レベルに対して、アップレギュレーションされるか、ダウンレギュレーションされるかのいずれかである。好ましくは、アップレギュレーションやダウンレギュレーションのレベルは、ハイブリダイゼーションされたマイクロアレイプローブの強度測定の倍数的変化に基づいて区別される。このような区別を成すために、1.5倍の違いが好ましい。すなわち、処置対未処置の異常細胞において遺伝子が異なる発現をしていると言う以前に、処置細胞が、未処置細胞よりも1.5倍を超える、または、1.5倍未満の強度を生ずるということが見出される。1.7倍の違いがより好ましく、遺伝子発現測定において2倍以上の違いが最も好ましい。]
[0017] 遺伝子のポートフォリオは、グループ化された遺伝子のセットであり、それらから得られた情報は、診断、予後、または、治療選択のような臨床的に関連のある判断をなすための基礎を提供する。この場合、ポートフォリオにより支持された判断には、FTIによる白血病の治療が含まれる。遺伝子発現プロファイルのポートフォリオは、遺伝子の組み合わせから構成されうる。]
[0018] 本発明の1つの方法は、人間が治療薬の使用に対して応答する見込みがあるかどうかを決定するために、様々な遺伝子についての遺伝子発現を比較することを伴う。応答者を非応答者と区別するような遺伝子発現プロファイルを確立することで、各々の遺伝子発現プロファイルを、媒体(例えば、以下に説明するようなコンピュータで読み取り可能な媒体)に固定する。異常細胞(例えば、AMLでの場合、造血芽細胞)を含むような患者サンプルを入手する。その後、異常患者細胞から、サンプルRNAを入手し、増幅し、また、適切なポートフォリオにおける遺伝子について、好ましくはマイクロアレイを通じて、遺伝子発現プロファイルを入手する。その後、サンプルの発現プロファイルを、応答者および非応答者として以前に決定されたものと比較する。サンプル発現パターンがFTI応答者発現パターンと一致するならば、FTIによる治療が(医学的考慮と対抗しない限り)指示されうる。サンプル発現パターンがFTI非応答者発現パターンと一致するならば、FTIによる治療は指示されないだろう。好ましくは、発現パターンの一致性は、上記に説明したマイクロアレイ読み取りの強度測定に基づいて決定される。]
[0019] 同様に、治療応答をモニターするために、遺伝子発現プロファイル分析を実施することができる。本方法の1つの態様において、一連の治療全体の様々な時期で、FTIにより治療された患者に対して、上記に説明した遺伝子発現分析を実施する。遺伝子発現パターンが応答者と一致するならば、患者治療は継続される。もしそうでないならば、追加の治療薬(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、投薬量の変化、FTI治療の除去といったように、患者治療が変更される。このような分析により、検出可能な臨床兆候の前に、または、別のあいまいな臨床兆候に直面した際に、介入や治療調整が可能になる。]
[0020] ある点では応答者を示唆し、ある点では非応答者を示唆するような、いくつかの遺伝子発現プロファイルが記録されるあいまいな結果に至る可能性がある。例えば、ポートフォリオは、3つの遺伝子が、応答者と一致するようにアップレギュレーションされ、他の遺伝子が、通常応答者についての場合であるようにアップレギュレーションされないということを示すかもしれない。このような場合、患者が薬物に対して応答するか、または、応答しないかの確率を決定するために、統計アルゴリズムを適用することができる。この目的に適した統計アルゴリズムが周知であり、利用可能である。]
[0021] 本発明の物品は、疾患を治療し、診断し、予後し、病期決定し、さもなければ、評価するために有用な遺伝子発現プロファイルを表現したものであり、コンピュータ読み取り可能な媒体(磁気、光学、および、同様のもの)のような自動的に読み取ることができる媒体に小型化するものである。また、物品は、このような媒体中で遺伝子発現プロファイルを評価するための使用説明書も含むことができる。例えば、物品は、上記に説明した遺伝子のポートフォリオの遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピュータ使用説明書を有するCD−ROMを含んでもよい。また、物品は、電子的に記録された遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それらを、患者サンプル由来の遺伝子発現データと比較してもよい。あるいは、異なる表現フォーマットに、プロファイルを記録することができる。図形的な記録はこのようなフォーマットのうちの1つである。図1は、このような記録の図形的な表示の例を示している。上記に述べた“OMNIVIZ”および“TREE VIEW”コンピュータプログラムに組み込まれたようなクラスタリングアルゴリズムは、このようなデータを視覚化する際に、最も良い補助でありうる。] 図1
[0022] 本発明による追加の物品は、本発明の遺伝子発現ポートフォリオを識別するよう配置された、上記に説明したような核酸アレイ(例えば、cDNAアレイ、または、オリゴヌクレオチドアレイ)である。]
[0023] クラスタリング分析(上記に述べたアルゴリズムを含む)を用いて、特定の統計的信頼性を有する遺伝子間の調節関係を確立するために、患者サンプルの発現レベルを比較することができる。このような発現データに基づいて、動的マップを構築した。このような遺伝子ネットワークマップは、創薬のために有用である。例えば、ひとたび目的の基礎遺伝子が同定されると、このような遺伝子ネットワークマップを用いて、可能性のある上流の調節遺伝子のリストが見出される。その後、薬物標的として使用するために、このように同定された遺伝子、または、それらの発現産物を分析する。いくつかの実施態様において、同定された特定遺伝子の調節機能を、白血病を治療する際に使用するための治療薬を同定するために用いた。]
[0024] 転写調節、RNAプロセッシング、および、RNAエディティングは、すべて、自身の遺伝子がコードするタンパク質により達成される。その上、DNA配列は、位置効果により、他の遺伝子発現の長距離制御を行うことができる。したがって、しばしば、他の遺伝子の発現により、遺伝子発現は調節される。調節された遺伝子すなわち下流遺伝子に対して、そのような調節遺伝子は上流遺伝子と呼ばれる。単純な調節経路:A++>B−−>C++>D(ここで、A、B、C、Dは遺伝子であり、++はアップレギュレーション、−−はダウンレギュレーションである)において、遺伝子Aは、遺伝子Bの上流遺伝子であり、BはCの上流遺伝子である。ネットワークが頻繁にループしており、相互接続していることを、本分野の当業者はよく理解しているだろう。いくつかの例では、遺伝子発現は、正または負のフィードバックのいずれかとして、自身の産物により調節される。]
[0025] 発現レベルが相関する遺伝子をグループ化するために、クラスター分析法を用いた。クラスター分析のための方法は、Harfigan (1975) Clustering Algorithms, NY, John Wile and Sons, Inc.、Everritt (1980) Cluster Analysis 2nd. Ed. London Heineman Educational books, Ltd.に詳細に説明されている。変数間の関係を分解し、遺伝子ネットワークのための因果モデルを試験するために、経路分析を用いた。白血病細胞における複数の薬物の初期標的を、このような細胞を治療するのに有用な薬剤/薬剤クラスとして同定した。本発明によると、薬物は、生物学的システムを混乱させるような、任意の程度の複雑性を有する任意の化合物である。]
[0026] 薬物の生物学的効果は、1つ以上のRNA種の転写もしくは分解の速度、1つ以上のポリペプチドの翻訳もしくは翻訳後プロセッシングの速度もしくは程度、1つ以上のタンパク質の分解の速度もしくは程度、1つ以上のタンパク質の活動もしくは活性の阻害もしくは刺激等における、薬物を介した変化の結果であってもよい。好ましいFTIに加えて、本発明の好ましい薬物は、MAPK/ERKシグナル伝達経路、TGFβ、WNT、または、アポトーシス経路を調節するものである。これらには、チロシンキナーゼ阻害剤、MEKキナーゼ阻害剤、P13Kキナーゼ阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、アポトーシス調節剤、および、それらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。これらのうちで最も好ましい例示的な薬物は、Novartisの「グリベック」チロシンキナーゼ阻害剤、U-0126MAPキナーゼ阻害剤、PD-098059MAPキナーゼ阻害剤、SB-203580MAPキナーゼ阻害剤、および、アンチセンス、リボザイム、ならびに、DNAザイムBcl-XL抗アポトーシス剤である。他の有用な薬剤の例には、米国特許第6,306,897号のカラノリド、同第6,284,764号の置換二環式、同第6,133,305号のインドリン、および、同第6,271,210号のアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれるが、これに限定されない。]
[0027] 述べたように、本発明の薬物は、遺伝子治療またはアンチセンス治療に対して指示される治療薬でありうる。mRNAの翻訳を阻害するために、mRNA配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを細胞に導入することができ、これにより、mRNAをコードする遺伝子の機能を妨げることができる。遺伝子発現を妨げるためのオリゴヌクレオチドの使用が、例えば、Strachan and Read, Human Molecular Genetics, 1996に説明されている。]
[0028] これらのアンチセンス分子は、DNA、DNAの安定誘導体(例えば、ホスホロチオエート、もしくは、メチルスルホン酸)、RNA、RNAの安定誘導体(例えば、2’−O−アルキルRNA)、または、他のアンチセンスオリゴヌクレオチドミメティクスであってもよい。マイクロインジェクション、リポソームカプセル化、または、アンチセンス配列を含むベクターからの発現により、アンチセンス分子を細胞に導入してもよい。]
[0029] 遺伝子治療の場合、レシピエント宿主細胞の注入により治療的DNAの伝達を仲介するようなウイルスベクターに、目的の遺伝子を連結することができる。適切なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、および、同様のものが含まれる。あるいは、遺伝子治療のための細胞に、非ウイルス技術によって、治療的DNAを伝達することができる。その非ウイルス技術には、リガンド・DNA結合物、もしくは、アデノウイルス・リガンド・DNA結合物を用いた、レセプターを介した標的化DNA伝達、リポフェクション膜融合、または、直接マイクロインジェクションが含まれる。これらの手法およびその変形は、in vivo遺伝子治療と同様に、ex vivo遺伝子治療についても適している。遺伝子とともに用いるのに適した遺伝子治療の分子的方法についてのプロトコルは、Gene Therapy Protocols, edited by Paul D. Robbins, Human press, Totowa NJ, 1996に説明されている。]
[0030] 本発明の薬物を含む薬学的に有用な組成物は、薬学的に許容可能なキャリアの添加のように、既知の方法にしたがって処方されてもよい。このようなキャリアおよび処方方法の例は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに見出されるかもしれない。有効な投与に適した薬学的に許容可能な組成物を形成するために、このような組成物は、薬物の有効な量を含むだろう。薬物の有効な量は、様々な要因(例えば、個人の病状、体重、性別、および、年齢)に応じて変更してもよい。他の要因には、投与方法が含まれる。薬学的組成物は、様々な経路(例えば、皮下、局所、経口、および、筋肉内)によって、個体に提供されてもよい。]
[0031] 本発明の薬物には、薬物の基礎分子の化学誘導体が含まれる。すなわち、それらには、基礎分子の一部とは限らない追加の化学的官能基が含まれてもよい。このような官能基は、基礎分子の可溶性、半減期、吸収性等を改善するかもしれない。あるいは、官能基は、基礎分子の望ましくない副作用を弱めたり、もしくは、基礎分子の毒性を低減させたりしてもよい。このような官能基の例は、様々な文章(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences)に説明されている。]
[0032] 本明細書に開示した方法にしたがって同定された化合物を、任意の可能性のある毒性を最小化しつつ最適な阻害もしくは活性を得るように、定期的な試験により規定された適切な投薬量で、単独で用いてもよい。その上、他の薬剤の共投与または連続投与が望ましいかもしれない。]
[0033] 本発明の薬物を、慣用される投与用賦形剤中、広範な治療投薬剤形で投与することができる。例えば、錠剤、カプセル(持続放出処方および徐放出処方を含む)、ピル、パウダー、顆粒、エリキシル、チンキ、溶液、懸濁液、シロップ、および、エマルジョンのような経口的な投薬剤形用量で、または、注入によって、薬物を投与することができる。同様に、静脈内用(ボーラスおよび輸液の両方)、腹腔内用、閉塞しつつ、もしくは、閉塞しない局所用、または、筋肉内用の剤形で投与してもよく、薬学的分野における当業者に周知のあらゆる剤形を用いてもよい。望ましい化合物の有効だが非毒性の量を、修飾薬として用いることができる。]
[0034] 生産物の日常投薬量を、一日あたり患者あたり0.01〜1,000mgの広い範囲で変更してもよい。経口投与用として、好ましくは、組成物は、分割錠剤または非分割錠剤の剤形で提供され、その錠剤には、治療すべき患者に対する投薬量の病兆に応じて調整した活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、および、50.0mgが含まれる。薬物の有効な量は通常、一日あたり体重の約0.0001mg/kg〜約100mg/kgの投薬量レベルで供給される。その範囲は、より詳しくは、一日あたり体重の約0.001mg/kg〜10mg/kgである。望ましい効果を達成するために組み合わされる場合、投薬量を調製する。一方、相乗効果のある結果であって、いずれかの薬剤を単独で用いた場合よりも病状が低減する結果を達成するために、これらの様々な薬剤の投与量を、別々に最適化し、組み合せてもよい。]
[0035] 有利なことに、本発明で用いられる化合物または調節因子を、一日一回用量で投与してもよく、または、一日総用量を一日に2回、3回、または、4回に分けて投与してもよい。更に、本発明のための化合物または調節因子を、適切な鼻腔内用賦形剤の局所的な使用を経由した鼻腔内用剤形で投与することができるし、本分野の当業者に周知の経皮用スキンパッチの剤形を用いて、経皮経路を経由して投与することができる。経皮送達システムの剤形で投与するためには、投薬投与は、当然、投薬計画にわたって断続的であるよりもむしろ連続的なものであるだろう。]
[0036] 1つを超える活性薬剤の組み合わせ治療で、活性薬剤が別々の投薬処方である場合、活性薬剤を同時に投与することができるし、別々に時間差で投与することができる。]
[0037] 本発明の化合物または調節因子を利用する投薬計画は、様々な要因に応じて選択する。それらの要因には、患者の型、種、年齢、体重、性別、および、医療状況、治療されるべき病状の重篤度、投与経路、患者の腎機能および肝機能、ならびに、用いられた具体的な薬剤が含まれる。通常の技術を有する医師または獣医は、病状の進行を妨げ、無効にし、または、停止するために必要とされる薬物の有効な量を、容易に決定し、処方することができる。毒性なしに薬効を生ずるような範囲の薬物濃度を達成する際の最適精度は、標的部位に対する薬剤有効性の動態に基づいた計画を必要とする。これは、薬物の分布、平衡、および、消失に対する考慮を伴う。]
[0038] 本発明の薬物は、活性成分を形成することができ、一般に、適切な薬学的希釈剤、補形剤、または、キャリア(本明細書では「キャリア」材料を選択的に言及する)との混合物で投与される。それらは、投与の意図された剤形(すなわち、経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップ、および、同様のもの)の点で、また、慣用される薬務と一致するように適切に選択される。]
[0039] 例えば、錠剤またはカプセルの剤形で経口投与するためには、活性薬物成分を、経口用の非毒性の薬学的に許容可能な不活性のキャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水、および、同様のもの)と組み合わせることができる。更に、望ましいか必要とされる場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および、着色剤も混合物中に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖類(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、コーンシロップ、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント、または、アルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋、および、同様のものが含まれるが、これに限定されない。これらの投薬剤形で用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および、同様のものが含まれるが、これに限定されない。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガム、および、同様のものが含まれるが、これに限定されない。]
[0040] 液剤のために、適切に風味付けされた懸濁剤または分散剤[例えば、合成ゴムおよび天然ゴム(例えば、トラガカント、アカシア、メチルセルロース、および、同様のもの)]に、活性薬物成分を組み合わせることができる。用いてもよい他の分散剤には、グリセリン、および、同様のものが含まれる。非経口投与のためには、滅菌懸濁液、および、滅菌溶液が望ましい。等張調整物は概して適切な保存剤を含んでいるが、静脈内投与が望ましい場合に用いられる。]
[0041] また、本発明における薬物を、リポソーム送達システム(たとえば、小単層ベシクル、大単層ベシクル、および、多重膜ベシクル)の剤形で投与することができる。リポソームを、様々なリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミン、または、ホスファチジルコリン)から形成することができる。]
[0042] また、本発明における薬物を、化合物分子を結合する個別のキャリアとしてモノクローナル抗体を使用することによって送達してもよい。また、本発明における薬物を、標的化可能な薬物キャリアとしての可溶性ポリマーと結合してもよい。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、または、パルミトイル基置換のポリエチルエンオキシドポリリシンが含まれうる。更に、本発明における薬物を、薬物の制御された放出を達成する際に有用な生分解ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、および、架橋性または両親媒性ヒドロゲルブロックコポリマー)と結合してもよい。]
[0043] 経口投与のために、カプセル、錠剤、または、ボーラスの剤形で、薬物を投与してもよいし、あるいは、それらを食餌と混ぜることができる。カプセル、錠剤、および、ボーラスは、適当なキャリア賦形剤(例えば、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、または、第二リン酸カルシウム)と組み合わせた活性成分から構成される。活性成分を、均一な混合物が得られるような適切な微粉状の不活性成分(希釈剤、充填剤、崩壊剤、および/または、結合剤を含む)とともによく混ぜることによって、これらの単位投薬剤形を準備する。不活性成分は、薬物と反応しないであろうものであり、治療される動物に対して非毒性のものである。適切な不活性成分には、デンプン、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、植物性ゴムおよび植物油、ならびに、同様のものが含まれる。これらの処方には、治療される動物種の大きさおよび種類、ならびに、感染の種類および重篤度といった数多くの要因に応じて、広範な量の活性成分および不活性成分が含まれてもよい。また、活性成分を、単純に化合物を飼料と混合することによって投与してもよいし、飼料の表面に化合物を塗布することによって投与してもよい。]
[0044] あるいは、化合物または調節因子を、不活性な液体キャリアに溶解された活性成分から構成される処方の注入により、非経口的に投与してもよい。注入は、筋肉内、管腔内、気管内、または、皮下のいずれであってもよい。注入可能な処方は、適切な不活性液体キャリアと混合された活性成分から構成される。受容可能なキャリアには、有機溶媒(例えば、ソルケタル、グリセロールホルマール、および、同様のもの)と同様に、植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、胡麻油、および、同様のもの)が含まれる。代わりに、水性の非経口用処方をも用いてもよい。植物油は好ましい液体キャリアである。最終処方が0.005〜10重量%の活性成分を含むように、液体キャリアに活性成分を溶解するか懸濁することによって、処方を調製する。]
[0045] 本明細書で引用した全ての参照文献を、参照により本明細書に組み入れる。本発明を更に、以下の非限定的な例により、例示する。]
[0046] 〔実施例1〕
材料と方法
≪臨床評価≫
本研究は、67個の骨髄サンプルを利用した。以前に未治療の危険性の高いAMLである158人の高齢者における、ティピファルニブ[R115777、ザーネストラ(登録商標)]によるファルネシルトランスフェラーゼ阻害の有効性および安全性を調査するような非盲検、多施設、非比較の第2相研究から、これらのサンプルを収集した。臨床結果は、別に発表されている。Lancet et al. (2006)参照。]
[0047] ≪サンプル収集および加工≫
ティピファニブによる治療前に同意した患者から、骨髄サンプルを収集し、単核球をその場で加工した。骨髄吸引物をPBSで希釈し、フィコール・ジアトリゾ酸(1.077 g/mL)と遠心分離した。濃縮した白血病血液細胞をPBSで2回洗浄し、10%DMSOを含むFBSに再懸濁し、即座に−70℃〜−80℃で凍結した。Trizol Kit(Qiagen;Santa Clarita, CA)を用いて、全RNAを細胞サンプルから抽出した。Agilent Bioanalyzerでのリボソームバンドの存在を評価することにより、RNAの品質を決定した。良質のサンプルをマイクロアレイ分析のために更に加工した。業者の使用説明書(Qiagen;Santa Clarita, CA)にしたがって、トリゾール加工した(Trizol-processed)骨髄の同一サンプルから、DNAを単離した。グローバル遺伝子発現、N-Ras変異、および/または、特定遺伝子のqPCRについて、サンプルを解析した(図1)。] 図1
[0048] ≪N-Ras変異状態≫
N-rasにおける突然変異の活性化の分析を、以前に説明されているとおり、PCRおよびRFLP分析により決定した。End et al. (2001)参照。N-ras遺伝子のエキソン1およびエキソン2を、シングルマルチプレックス反応で同時に増幅し、分注物を2度目のPCRのために用いた。2度目のアンプリコンにおける自然の切断、または、プライマーにより誘導された制限酵素部位に対する耐性は、分析された遺伝子座における部位が破壊されたような突然変異の存在を示唆した。特異的部位の分析のための制限酵素は、BslI(N-rasコドン12、コドン13)、MscI(N-rasコドン61、位置1、位置2)、および、BfaI(N-rasコドン61、位置3)であった。反応物を一晩消化し、PCR産物をAgilent Bioanalyzerで分析した。]
[0049] ≪マイクロアレイ分析≫
cDNAおよびcRNAの合成を、Affymetrix(Santa Clara, CA)プロトコルにしたがって実施した。多くのサンプルの収量が低かったため、以前に説明したように、2度の線形増幅を実行した。米国特許出願第20070048782号参照。ハイブリダイゼーションのために、40mMトリス酢酸(pH 8.1)、100mM酢酸カリウム、および、30mM酢酸マグネシウム中、94℃で35分間インキュベーションすることにより、cRNA 11μgを無作為に断片化した。60rpmに設定したローティッセリーオーブンにおいて、45℃で16時間、断片化したcRNAをU133Aアレイとハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション後、アレイを洗浄し[6×SSPE、および、トリトンX100(0.005%)を含む0.5×SSPEで]、ストレプトアビジン・フィコエリトリン(SAPE)(Molecular Probes;Eugene, OR)で染色した。Agilent G2500A GeneArray scanner(Agilent Technologies;Palo Alto, CA)を用いて、結合標識プローブの定量を実施した。]
[0050] 各アレイの全蛍光強度を均一値600まで計測した。シグナル対ノイズ比(未加工の平均シグナル/ノイズ)を計算することにより、チップ性能を定量した。そのシグナル対ノイズ比が20未満の場合、または、チップ上の存在コールが30%未満の場合、チップを更なる分析から取り除いた。チップの少なくとも10%で「存在」をコールする場合にのみ、遺伝子を更なる分析に含ませた。このカットオフ後、約12,000個のAffymetrixプローブセットが残ったままであった。主成分分析に基づいて異常値を同定することにより、また、遺伝子強度の正規分布を分析することにより(Partek Pro V5.1)、遺伝子発現データの品質を更に制御した。マイクロアレイデータをNCBIのGene Expression Omnibus(GEO;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)に寄託した。それらは、GEOシリーズのアクセッション番号GSEXXXXにより利用可能である。]
[0051] ≪応答の定義≫
ティピファルニブに対する応答は、臨床報告で報告されている。また、それらを、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、または、血液学的改善(HI)を有する患者として定義した。Lancet et al. (2006)参照。簡潔に言えば、HIを、5%未満の骨髄芽細胞数、または、骨髄芽における少なくとも半分程度の減少として定義した。進行性疾患(PD)を、骨髄における、もしくは、基準からの循環芽細胞割合における50%を超える増加、または、(少なくとも2つの連続事象における)循環芽細胞の新たな出現のいずれかとして定義した。安定疾患(SD)を、CR、PR、HI、または、PDの基準に適合しない任意の応答として定義した。]
[0052] ≪統計的分析≫
個々の遺伝子、および/または、複数の遺伝子分類指標の全体の予測値を試験するために、受信者動作特性(ROC)分析を利用した。応答者と進行性疾患である患者との間で異なる発現をする遺伝子を同定するために、以下の遺伝子選別基準を用いた。すなわち、感度100%の「応答者」を同定するための特異度が40%以上;T検定のp値(不等分散を有するlog2変換データ)が0.05未満;2倍より大きい倍数的変化。これらの基準を通過した遺伝子を、AUC(ROC曲線下面積)によりランク付けした。]
[0053] 分類指標を確立するために、応答スコアを、ティピファルニブ治療に対して応答する各患者の機会を計算するために用いた。t統計を重み付けとして、重み付けされた発現シグナルの線形組み合わせとして、スコアを定義した。感度100%と最も高い特異度を保証するために、訓練セットのROC曲線から、閾値を決定した。予測因子にいくつの遺伝子が含まれる必要があるか決定するために、リーブワンアウト交差検定(LOOCV)を実行した。遺伝子の異なる数に基づいて「残された」サンプルについての応答スコアを記録した。異なる数の遺伝子を有する予測因子の性能を、2つの予測グループの誤判別エラー率、感度、特異度、カプラン・マイヤー曲線の分離を測定したp値に基づいて評価した。そして、それにより、最も良い予測因子を選択した。]
[0054] トップスコアペア(TSP)アルゴリズムは、最初にGeman et al. (2004)により導入された。要するに、そのアルゴリズムは、事象の頻度における絶対差(Dij)に基づいて、すべての遺伝子ペア(遺伝子i、j)をランク付けする。ここで、遺伝子iは、クラスC1からC2間のサンプルにおいて、遺伝子jよりも高い発現値を有する。複数のトップスコアペア(全てが同じDijを持つ)がある場合、遺伝子発現レベルの反転が、遺伝子対内の1つのクラスから他のクラスまで起こる程度の規模を測定するような二番目のランクスコアによって、トップペアを選択する。すべてのサンプルで2倍を超える絶対Dijの最も高い頻度を有するようなトップペアが、候補ペアとして選択されるだろう。その後、独立の試験データセットにおいて、候補ペアを評価した。]
[0055] アルゴリズムがどのように働くか評価するために、ワンリーブアウト交差検定(LOOCV)を、訓練データセットで実行した。最大の誤判別エラー率に基づいて、予測因子の性能を評価した。R(R Development Core Team, 2006)を用いて、すべての統計分析を行った。]
[0056] ≪リアルタイム定量RT−PCR≫
各サンプルについて、全RNA1μg(OD260により評価した)を、High CapacitycDNAReverse Transcription kit(Applied Biosystems;FosterCity, CA)を用いて、業者の使用説明書にしたがって逆転写した。その後、サンプルを25℃、10分間インキュベーションし、それから、最適なRNA変換のために、37℃、30分間インキュベーションした。ABIPrism 7900HTsequence detection system(Applied Biosystems;Foster City, CA)を用いて、すべてのサンプルについて、qPCRを3回実施した。各反応液には、全反応量10μL中に、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix containing UNG(Applied Biosystems;Foster City, CA)5μL、cDNAテンプレート4.5μL、および、20×Assay on Demand Gene Expression Assay Mix0.5μL、または、9pmolフォワードプライマーおよびリバースプライマー、ならびに、2.5pmolプローブ(Applied Biosystems, Foster City, CA)が含まれた。小さなアンプリコンサイズ(100ヌクレオチド未満)のために、すべてのプライマー、プローブセットを選択し、FAM蛍光発生プローブを用いた。用いたプライマーおよびプローブは、APTX(製品番号4331182;Applied Biosystems)、および、RASGRP1(製品番号4351372;Applied Biosystems)であった。未加工のCt値を、サンプルセットから平均Ctを差し引き、標準偏差で割り、その後、各遺伝子(APTX-RASGRP1)の正規化Ct値の違いを計算することにより正規化することによって、RASGRP1:APTX発現比率を計算した。Ma et al. (2004)参照。]
[0057] 結果
本研究は、白血病骨髄サンプルの遺伝子発現プロファイルを試験した。そのサンプルは、以前に未治療で危険性の高い急性骨髄性白血病である高齢患者におけるファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤ティピファルニブの第2相臨床試験に登録された患者に由来した。Lancet et al. (2006)参照。67人の患者由来の骨髄サンプルを、ティピファルニブによる治療前に収集し、白血病骨髄性細胞をフィコール密度遠心分離により濃縮した(表1)。13人の応答者(9人がCR、4人がHI)、8人の安定疾患患者、および、13人の進行性疾患患者由来の良質な全RNAを増幅し、標識し、Affymetrix U133A GeneChipにハイブリダイゼーションさせた。特異的遺伝子の検証のためのqPCRにより、全30個のサンプルを評価し、N-Ras変異状態について32個のサンプルを評価した。]
[0058] ≪Ras変異状態および患者転帰≫
32人のAML患者の骨髄由来のDNAを、N-Ras活性化突然変異(コドン12、13、61)についてスクリーニングした。患者のうちの34%(11人/32人)が、N-Ras突然変異を示し、1人の患者が複数のコドンで突然変異を有していた(表2)。N-Ras変異状態とティピファルニブに対する応答または全生存との間に、統計的に有意な相関は全く存在しなかった。]
[0059] ≪新たに診断されたAMLコホート由来の予測遺伝子の同定≫
次に、新たに診断されたAML集団におけるティピファルニブに対する応答の遺伝子予測性を同定することを目的とした。この目的のために、13人の応答者(9人がCR、4人がHI)、および、13人の進行性疾患患者において、探索実験を実施した。安定疾患患者は、この分析には利用しなかった。なぜならば、これらの患者は、応答者または非応答者のいずれかとして明確に定義できないからである。再発および難治性AMLについてのマーカーを同定するために利用したのと同じアプローチ(米国特許出願第20070048782号参照)を用いて、応答を予測するような45個のプローブセット(38個のユニーク遺伝子に相当する)を同定した(表3)。選択基準は、特異度カットオフ40%および平均遺伝子発現差が少なくとも2倍であり、高感度(100%に近づくような)の応答者を予測するだろう遺伝子を同定することを目的とした。訓練セットの受信者動作特性(ROC)から規定される曲線下面積に基づいて、遺伝子をランク付けした。この値は、完全な値を示すAUC1.0である遺伝子の全体の予測値を表す。まず、LOOCV法を用いて、各遺伝子を、訓練セットにおいて試験した。トップ遺伝子は、RASguanyl-releasing protein 1(RASGRP1)であり、AUC0.95を示した。]
[0060] その後、分類指標の遺伝子数を増やすことが、予測値を改善するかどうか試験した。LOOCVアプローチを用いて、その後、各分類指標の感度、特異度、および、全体のエラー率をプロットすることによって、トップ遺伝子のみが最も良い予測値を提供することが見出された(データ不図示)。線形的な方法で分類指標に遺伝子を加えることでは、予測値は改善されなかった。高い感度に対してバイアスをかけたカットオフを用いたところ、RASGRP1遺伝子が、全予測精度76.9%で、NPV88.9%およびPPV70.6%を可能にすることが、LOOCVにより示された(図1A)。その上、カプラン・マイヤー分析により、応答者の全生存中央値(386日)と進行者の全生存中央値(68日)において、有意な差があることが示された(図1B)。したがって、新たに診断されたAMLにおいて、この単一遺伝子の過剰発現が、高い陰性適中率とともに、ティピファルニブに対する結果を予測した。] 図1A 図1B
[0061] ≪トップスコアペア分類指標の同定≫
線形アプローチを用いて追加の遺伝子を分類指標に加えても、RASGRP1の予測値は改善されなかった。したがって、RASGRP1単独の予測値を改善するだろう遺伝子を選択するための代替的な遺伝子選択アルゴリズムを利用した。この目的のために、我々は、最も良い予測精度を提供するだろう最も良い遺伝子ペアを同定するために、トップスコアペア(TSP)アルゴリズムを利用した。Geman et al. (2004)参照。二遺伝子間の最大の差を引き出すために利用され、診断アッセイに基づいたqPCRを開発することを目的とする場合、このアプローチは有用かもしれない。訓練セット由来のTSPは、RASGRP1およびaprataxin(APTX)であった。応答者において、RASおよびAPTXはそれぞれ、過剰発現、および、不足発現した。サンプルの訓練セットにおいて、このトップスコアペア(TSP)が、たった8%の全エラー率とともに、NPV85.7%およびPPV91.7%を提供することが、ロバストなLOOCVにより示された(図2A)。予測された応答者と非応答者との間の全生存における差は、357日であった(図2B)。これらのデータは、モデル構築アルゴリズムが、低い関連した予測エラー率を有することを示す。] 図2A 図2B
[0062] ≪再発または難治性AMLの独立セットにおけるRASGRP1:APTX分類指標の検証≫
次に、54個の再発/難治性AML患者サンプルから構成される独立のマイクロアレイデータセットにおいて、TSP分類指標の外部検証を実施した。米国特許出願第20070048782号参照。重要なことに、がん治療に対する応答を予測することを目的とした診断アッセイは、高い感度(および、陰性適中率)を有するべきである。なぜならば、可能性のある応答値をできる限り多くとらえることが重要だからである。したがって、TSP分類指標を試験するために適切なカットオフを定義するために、受容可能な特異度のレベルを維持しつつ、応答者を予測する高感度を得る必要性を考慮した。訓練セットにおいて、達成された特異度のレベルは、感度が100%から80%に設定された場合、それぞれおよそ30%から100%の範囲であった。分類指標が応答者をできるだけ多く予測することを保証するために、訓練セットにおいて、特異度約60%を提供する保存的なカットオフを試験した。このカットオフを再発/難治性AMLの独立試験セットに適用したところ、RASGRP1:APTX遺伝子分類指標により、NPV92%およびPPV27.6%(有病率18.5%と比較される)で層別化された(図3C)。応答者に関連したオッズ比は、4.38であった。このことがRASGRP1単独の予測精度と同様である一方、TSP分類指標の適用によって、より良いNPV、および、RASGRP1についてはたった56日である(図4)のと比較して、全生存98日という予測された応答者と進行者との間の改善された差が示された(図3D)。] 図3C 図3D 図4
[0063] ≪RASGRP1:APTX発現比率のqPCR検証≫
二遺伝子発現比率は、より臨床的に関連のあるqPCR検出システムの使用を可能にする。30個のサンプル(PDが20個、CRが6つ、HIが3つ、および、PRが1つ)は、qPCRのために十分な全RNAを提供した。したがって、これら新しく診断されたAML臨床研究由来の30個のサンプル(応答者が10個、進行性疾患が20個)において、TaqMan(登録商標)qPCRを用いたティピファルニブに対する応答の予測因子として、RASGRP1:APTX遺伝子発現比率を評価した。これらのサンプルのうちの9つが、マイクロアレイプラットフォーム上で解析されたが、21個が不良なRNAのために探索セットにおいては利用されなかった。したがって、この試験セットの2/3が、完全に独立なサンプルから構成される。9つのサンプルの評価によって、2つのプラットフォーム間のRASGRP1:APTX発現比率に良い相関(r=0.74)があることが示された(図6)。カットポイント0を用いたところ、二遺伝子分類指標は、30人の患者のうちの20人において、PPV50%およびNPV81%で、治療転帰を正確に予測した(図3)。応答者として分類された者が、295日の中央値を有する一方、予測された耐性患者の全生存中央値は、82日であった(図3C)。] 図3 図3C 図6
[0064] ≪RASGRP1:APTX分類指標はFTI治療と独立した診断利用性は有さない≫
化学療法計画で治療された116人のAML患者の独立なマイクロアレイデータセットにおいて、二遺伝子発現比率を試験した。Bullinger et al. (2004)参照。RASBRP1:APTX分類指標を、ティピファルニブ治療集団に対するのと同様のカットオフを利用して、患者のこのセットに利用したところ、全生存において有意な分離が全く見られなかった(図5)。他のカットオフの範囲が利用された場合も、有意な生存上の差は見られなかった(表4)。このことは、RASGRP1:APTX分類指標が、ティピファルニブで治療されているが、非FTIとは関連しないような患者を特異的に層別化することを示している。一方、Bullinger et al.により定義された診断兆候が、再発および難治性AML患者のセットに適用される場合、全生存の点で明らかな層別化が存在した。



カプラン・マイヤー分析が補図2に示されており、カットオフが強調されている(太字)。] 図2 図5
[0065] 考察
治療応答を予測するための患者集団の層別化は、がん患者の臨床管理においてますます価値があるものになりつつある。例えば、コンパニオン診断は、標的化治療[例えば、転移性乳がんにおけるトラスツズマブ(ハーセプチン;Genentech)、および、結腸直腸がんにおけるセツキシマブ(アービタックス;Merck)]により治療された患者の層別化を必要としている。Seidman et al. (2001)、および、Moroni et al. (2005)参照。また、予測的なバイオマーカーも、消化管間質腫瘍におけるイマチニブ(グリベック;Novartis)、ならびに、肺がんにおけるエルロチニブ(タルセバ;OSIPharmaceuticals)およびゲフィチニブ(イレッサ;Astra-Zeneca)について利用可能である。Burger et al. (2005)、Tsao et al. (2005)、およびLynch et al. (2004)参照。現在、任意の兆候において、FTIに対する応答を予測するのに利用可能な方法は全く存在しない。FTI(ティピファルニブ)に対する高い感度に関連する遺伝子を同定するために、白血病骨髄サンプルの遺伝子発現プロファイリングを実施した。そのサンプルは、以前に未治療で危険性の高いAMLの高齢患者における第2相研究に由来する。Lancet et al. (2006)参照。重要なことに、がん遺伝子治療に対する応答を予測することを目的としたアッセイは、高いNPVを有するべきである。なぜならば、可能性のある応答者をできる限り多くとらえることが重要だからである。したがって、高い感度で応答を予測するマーカーを同定するような基準を用いて、新たに診断されたAML骨髄サンプルにおいて、応答者と非応答者との間で異なる発現をするような45個の遺伝子を同定した。]
[0066] N-Ras変異、または、ERKもしくはAKTの基準リン酸化状態と、ティピファルニブに対する応答との間には有意な相関が全くないことがわかった[Lancet et al. (2006)参照]が、我々は、PTPN6(ファルネシル化されるタンパク質チロシンホスファターゼであり、応答者においてダウンレギュレーションされる)、CD3D、TRAT1、LTB、TNFRSF17、TNFSF13、および、RASGRP1を含むRas活性化に関与する遺伝子であって、ティピファルニブに対する応答を予測する遺伝子を同定した。Chen et al. (2005)、Stone (2006)、およびDelgado (2000)参照。Ras経路の活性化が、Rasタンパク質自体の構成的活性化の外側の他の事象により引き起こされることは、よく知られている。Illmer et al. (2005)、およびSolit et al. (2006)参照。実際、N-RasおよびK-Rasは、突然変異が活性化されることなく、AMLにおける活性化状態を同定されてきた。Ehmann et al. (2006)参照。したがって、Rasの脱制御が、Ras変異状態に関わらず、AMLにおけるティピファルニブの重要な標的であることは、もっともらしく思われる。Watters et al. (2006)参照。このことを支持して、Feldkamp et al. (2001)は、Ras活性化突然変異に関わらず、イソタイプ特異的RasGTPレベルがFTI SCH66336に対する応答と相関することを示した。]
[0067] 交差検定された訓練セットにおいて、RASGRP1は、全予測精度77%を有する最もロバストな単一予測遺伝子発現マーカーであった。RASGRP1は、Rasを特異的に活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である。Stone (2006)参照。RASGRP1の発現は、脳、T細胞、単球系統の細胞、および、原始造血前駆細胞で見られる。Kawasaki et al. (1998)、Ebinu et al. (1998)、およびTognon et al. (1998)参照。興味深いことに、別のRASGRP(RASGRP4)は、AMLにおける可能性のあるがん遺伝子として、以前に同定されていた[Reuther et al. (2002)]が、我々のデータは、FTIに対する応答における重要性を示唆するのに加えて、AML細胞におけるRASGRP1の発現を試験し示す初めてのものである。]
[0068] 我々は、RASGRP1とAPTXの組み合わせが、複数遺伝子分類指標として最もロバストな予測精度(約89%)を提供することを見出した。APTXは、DNA除去修復に関与しており、応答者において、ダウンレギュレーションされることが知られている。Ahel et al. (2006)参照。この二遺伝子分類指標は、交差検定を実施した場合、応答者を同定するNPVおよびPPVがそれぞれ86%および92%であり、新たに診断したAMLの探索セットにおいて、予測有用性を示した。しかしながら、交差検定は性能モデルを提供するのみであり、それゆえ、応答予測の真の精度を提供するために、独立データセットの試験を実施した。この目的のために、再発/難治性AMLの独立セット由来のマイクロアレイデータを試験し、新たに診断されたAML臨床研究由来の独立サンプルに対して、PCRを実施した。]
[0069] 単純なqPCRに基づく診断アッセイは、従来のマイクロアレイ技術ではプロファイリングされないかもしれない不良な臨床サンプルを解析することができるため、遺伝子発現マイクロアレイよりも、臨床においてより幅広い有用性がある。新たに診断されたAML集団由来の30個のサンプルセット(うち、20個はマイクロアレイによりプロファイリングされないもの)において、サンプルの質に関わらず、qPCRによって、RASGRP1:APTX発現比率を確実に検出することができることが示された。分類指標は、NPV81%およびPPV50%を示し、応答者であると予測された患者について、明らかな全生存の利益を提供した。明らかなことだが、二遺伝子qPCRアッセイの使用を更に検証するための将来的な研究において、より大きなデータセットをプロファイリングすることが重要だろう。]
[0070] また、新たに診断されたAMLサンプルのより大きな独立セットが存在しない場合、独立な試験セットとして、我々の以前の調査に由来する54個の再発または難治性AMLサンプル(米国特許出願第20070048782号参照)を利用した。驚くべきことに、たとえサンプルが生物学的に異なるAML患者集団由来のものであっても、二遺伝子分類指標は、NPV92%およびPPV28%で、応答者と非応答者の良好な層別化を示した。そのデータセットにおける応答者の有病率は18%であり、約50%の全応答の改良を示す。更に、層別化された予測された応答者は、ティピファルニブに対して耐性であると予測された患者よりも約3倍高い全生存中央値を有していた。重要なことに、化学療法により治療されたAML患者の独立セットにおいて、この二遺伝子分類指標と患者予後との間に全く関係がないことを見出した。このことは、本発明の分類指標が、ティピファルニブに対する応答を特異的に予測することを示していた。RASGRP1:APTX発現比率が他のクラスのFTIについて有用であるかどうか明らかにするためには、更なる研究が必要である。]
[0071] ≪高まったRASGRP1発現がどのようにFTIに対する感度を引き起こすのだろうか≫
RASGRP1は、もっぱらゴルジ体上で、H-RasおよびN-Rasを活性化するが、K-Rasは活性化しないことが示されている。Bivona et al. (2003)、およびPerez de Castro et al. (2004)参照。更に、K-RasおよびN-Rasは、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害の後、代替的にゲラニルゲラニル化されうる。Whyte et al. (1997)参照。一方、H-Rasは、ファルネシル化されるのみであり、このことは、H-Rasを形質転換した腫瘍が、N-RasまたはK-Rasを形質転換したものよりも感度が高いことを説明するかもしれない。End et al. (2001)、およびLubet et al. (2006)参照。このように、AMLにおけるRASGRP1の異常発現により、N-RasおよびH-Ras経路の活性化が導かれる可能性があるが、それは、抗腫瘍形成効果を引き起こすようなH-Rasの妨害である可能性がある。したがって、H-Ras活性化突然変異は、AMLでは同定されていないが、他の手段(例えば、Ras特異的GEF)によるH-Ras経路の特異的活性化がなお、特定の腫瘍におけるFTIの標的であるかもしれない。]
[0072] 我々は以前に、再発/難治性AMLにおけるティピファルニブに対する耐性の予測因子として、AKAP13を同定した。米国特許出願第200700448782号参照。興味深いことに、AKAP13もまたGEFであり、Rho経路を活性化する。Sterpetti et al. (1999)参照。しかしながら、再発または難治性AMLにおいて有用である一方で、AKAP13の発現は、新たに診断されたAMLにおいて、予測的有用性を示さなかった。このことは、AKAP13を過剰発現した白血球細胞の集団が、新たに診断された疾患には存在せず、後期AMLにおいてのみ増殖しているためかもしれない。湧き起こる他の疑問は、AKAP13 GEFの過剰発現がティピファルニブに対する耐性を高める一方で、なぜRASGRP1 GEFの過剰発現がその感度を高めるのかということである。Rho GEFは、Ras依存的に細胞性形質転換を牽引することが知られている。Reuther et al. (2001)、およびSahai et al. (2002)参照。したがって、1つの仮説は、RAGRP1がFTIの明らかな標的であるRasを活性化する一方で、AKAP13は、RhoAにおける下流の補償的経路を活性化するというものである。このモデルを調査するためには、更なる生化学的分析が必要だろう。それにも関わらず、FTIに対する反応性において反対の役割を果たす2つのGEFの同定は、このクラスの小さなGTPアーゼ活性化因子が、FTIを介した治療において重要であることを強調する。また、広範な疾患および疾患サブタイプにわたった標的化治療に対する応答を予測する際に、複数のマーカーが必要であることをも強調する。GEFがますます魅力的な薬剤標的になっているため、FTIの治療と特異的なGEF阻害剤との組み合わせを調査することは、興味深いことかもしれない。]
[0073] 要約すると、単純なqRCRを用いて解析することができる二遺伝子発現比率を同定し、検証した。新たに診断されたAML、および、再発または難治性AMLの両方において、分類指標は予測的有用性があり、高いNPVを維持しながら、約50%程度の全応答率を改善する。その上、この分類指標による層別化は、患者の全生存を有意に改善する。我々のデータは、標的化がん治療(例えば、ハーセプチン)のためのFDA認可されたコンパニオン診断の使用と、有利に比較される。例えば、Her2/Neuの過剰発現による転移性乳がん患者の層別化が、ハーセプチンとパクリタクセルとの組み合わせ治療に対する全応答を改善することが示されており、HercepTestまたはPathVysion試験を用いた場合、約59%から、それぞれ69%または75%に改善する。Seidman et al. (2001)参照。したがって、我々のデータは、単純な二遺伝子発現解析が、ティピファルニブに対して応答する見込みのあるAML患者集団を診断する際に、有用かもしれないことを示している。]
[0074] 〔参照文献〕]
[0075] 〔配列表〕]
図面の簡単な説明

[0076] AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1遺伝子の性能を示す。新たに診断されたAMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標を用いた正確度(A)とカプラン・マイヤー生存曲線(B)である。
AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1:APTX遺伝子対の性能を示す。二遺伝子分類指標により層別化された、新しく診断されたAML患者(A)と、再発/難治性AML患者(C)の全生存は、カプラン・マイヤー分析を用いてプロットされている。新たに診断されたAML(B)と再発/難治性AML(D)における二遺伝子分類指標の正確度を示す。
qPCRを用いたRASGRP1:APTX遺伝子分類指標の性能を示す。(A)20人の応答者と10人の進行性疾患を有する患者についての正規化RASGRP1:APTXCt値である。(B)全30人の患者についての新たに診断されたAMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標の正確度を示す。(C)層別化した患者の関連した全生存を、カプラン・マイヤー分析を用いてプロットする。
再発および難治性AMLにおけるティピファルニブに対する応答の予測因子としてのRASGRP1遺伝子の性能を示す。再発/難治性AMLにおけるRASGRP1遺伝子分類指標を用いた正確度(A)とカプラン・マイヤー生存曲線(B)である。
RASGRP1:APTX遺伝子発現比率により層別化された、非FTIにより治療されたAML患者の全生存を示す。
AffymetrixとqPCRデータとの相関を示す。]
权利要求:

請求項1
急性骨髄性白血病(AML)の人におけるティピファニブに対する応答を決定する方法において、前記患者における二遺伝子発現比率(RASGRP1:APTX)を測定することを含む、方法。
請求項2
請求項1に記載の方法において、前記AMLが、新たに診断されたもの、再発したもの、または、難治性のものから選択される、方法。
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