![]() タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法
专利摘要:
タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法が提供される。タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法が提供される。前記状態は、リソソーム性蓄積症などの機能喪失型障害、または加齢関連疾患などの機能獲得型障害でもよい。 公开号:JP2011511007A 申请号:JP2010545262 申请日:2009-02-02 公开日:2011-04-07 发明作者:ジェフリー;ダブリュ. ケリー;ローラ セガトリ;ティンウェイ ムー 申请人:ザ スクリプス リサーチ インスティチュート; IPC主号:A61K45-00
专利说明:
[0001] 関連出願の相互参照 本願は、2008年2月1日に出願された米国特許仮出願第61/025,705号の恩典を主張する。米国特許仮出願第61/025,705号はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。] [0002] 政府の支援に関する記載 本発明は、米国立衛生研究所からの助成金番号DK75295による政府支援によってなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。] [0003] 分野 本発明は、概して、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法に関する。タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量および投与間隔で、タンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法が提供される。] 背景技術 [0004] 背景 通常、細胞は、センサーおよび経路ネットワークを用いて、タンパク質ホメオスタシスとも呼ばれる、タンパク質合成、フォールディング、輸送、凝集、および分解のバランスを維持する。Sitia et al., Nature 426: 891-894, 2003; Ron et al., Nat Rev Mol Cell Biol 8: 519-529, 2007。ヒト機能喪失型疾患は、多くの場合、正常なタンパク質ホメオスタシスが破壊された結果であり、典型的には、ある特定のタンパク質の変異によって、タンパク質の細胞フォールディングが損なわれ、効率的に分解されることよって引き起こされる。Cohen et al., Nature 426: 905-909, 2003。従って、変異体タンパク質の濃度が非常に低いために、機能は十分でない。] [0005] リソソーム内にある1種類の変異酵素の機能に欠損があり、対応する基質が蓄積すること起因するリソソーム性蓄積症(LSD)が少なくとも40種類ある。Futerman et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5:554-565, 2004; Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006。現在、LSDは酵素補充療法によって治療されており、この療法は、組換え酵素をリソソームに入れるためにエンドサイトーシス系を利用しなければならないので困難な場合がある。Desnick et al., Nat Rev Genet 3:954-966, 2002。] [0006] 最もよく見られるLSDはゴーシェ病(GD)であり、糖脂質加水分解酵素であるグルコセレブロシダーゼ(GC)の活性が欠損することによって引き起こされる。Zhao et al., Cell Mol Life Sci 59:694-707, 2002。ゴーシェ病の単球-マクロファージ細胞におけるグルコシルセラミドの蓄積は、肝腫大、巨脾腫、貧血、血小板減少、骨病変、重篤な場合では、中枢神経系(CNS)合併症につながる。Beutler et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Diseases, New York: McGraw-Hill, 3635-3668, 2001。CNS合併症のない患者はI型(軽度成人発症型)と分類されるのに対して、CNS合併症のある患者は、II(急性小児発症型)またはIII型(亜急性若年型または早期成人発症型)と分類される。臨床上最も重要なGC変異、例えば、I型GDに関連する最もよく見られる変異であるN370S、およびCNS合併症の原因となる最も優勢な変異であるL444Pがあると、GCは小胞体(ER)の中で誤って折り畳まれやすくなり、これらの変種はER関連分解(ERAD)に供され、リソソームに輸送される通常量の変異体GCが減少する。従って、リソソームの中の変異体GC濃度は大幅に低下する。Ron et al., Hum Mol Genet 14: 2387-2398, 2005;Sawkar et al., ACS Chem Biol 1:235-251, 2006。フォールディング欠損GC変種の多くは、適切に折り畳まれた時にはわずかな比活性を示す。このことは、変異酵素のフォールディングおよび輸送を増強できれば、疾患は寛解する可能性が高いことを証明している。Liou et al., J Biol Chem 281:4242-4253, 2006。] [0007] FDAは、I型ゴーシェ病の治療のために酵素補充療法および基質抑制療法(substrate reduction therapy)を認可している。Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006; Futerman et al., TrendsPharmacol Sci 25: 147-151, 2004。現在、神経障害性ゴーシェ病(II型およびIII型)に有効な療法は無い。組換えGC酵素は血液脳関門を通過せず、CNSにおける基質抑制療法の効能は依然として明らかにされていない。従って、神経障害性ゴーシェ病に対する新たな方針が喜んで受け入れられるだろう。薬理学的シャペロニング(pharmacological chaperoning)は、折り畳まれた状態のある特定の酵素に結合し、安定化して、ゴルジ体へ、およびその先のリソソームへの輸送を可能にするER透過性低分子を用いた新しく浮上しつつある治療方針である。Fan et al., Nat Med 5:112-115, 1999; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:15428-15433, 2002; Matsuda et al., Proc Natl Acad Sci USA 100:15912-15917, 2003; Alfonso et al., Blood Cells Mol Dis 35: 268-276, 2005; Sawkar et al. Chem Biol 12:1235-1244, 2005; Steet et al., Proc Natl Acad Sci USA 103:13813-13818, 2006; Lieberman et al., Nat Chem Biol 3:101-107, 2007; Parenti et al., Mol Ther 15: 508-514, 2007; Tropak et al., Chem Biol 14:153-164, 2007; Yu et al., IJ Med Chem 50:94-100, 2007; Zheng et al., Proc Natl Acad Sci USA 104:13192-13197, 2007。ほとんどのGD関連変異を有する患者由来細胞は薬理学的シャペロニングを受け入れられるように見えるのに対して、L444P GC変異を有する細胞株はこれまでに難治性であることが分かっているが、最終的には別の投与計画が有用になるかもしれない。Sawkar et al. Chem Biol 12: 1235-1244, 2005。] [0008] α-マンノシドーシスおよびIIIA型ムコ多糖症(MPS)は、それぞれ、リソソームが糖タンパク質およびヘパラン硫酸を分解できないために引き起こされる神経障害性LSDである。Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006; Michalski et al., Biochim Biophys Acta-Mol Basis Dis 1455:69-84, 1999; Yogalingam et al., Hum Mutat 18:264-281, 2001。リソソームα-マンノシダーゼにP356R変異があるとフォールディングのエネルギー地形が変化して、急速な精神機能低下に関連する重度の小児型α-マンノシドーシスの原因となる。Gotoda et al., Am J Hum Genet 63:1015-1024, 1998。IIIA型MPSにおいて優勢なS66WまたはR245Hスルファミダーゼ変異が生じると、リソソーム中の変異体酵素濃度が低下する。これは、フォールディングが損なわれ、スルファミダーゼが効率的に折り畳まれおよび輸送される代わりにERADを受けて、ヘパラン硫酸が蓄積し、重度のCNS変性が生じたことによる可能性が最も高い。Perkins et al., J Biol Chem 274:37193-37199, 1999。現在、α-マンノシドーシスまたはIIIA型MPSに有効な療法は無く、従って、これらの神経障害性LSDに対する新たな方針が喜んで受け入れられるだろう。] [0009] タンパク質ホメオスタシスすなわちタンパク質恒常性を細胞において維持することは、プロテオームを構成する個々のタンパク質のコンホメーション、結合相互作用、位置、および濃度を制御することを意味している。タンパク質は全ての生物の生理機能において中心的な役割を果たしているので、適切なタンパク質フォールディング、局在化、および分解の正常なバランスの消失は非常に多くの疾患に影響を及ぼすか、または非常に多くの疾患の原因となる。Albanese, V., et al., Cell 124:75-88, 2006; Brown et al., J Clin Invest 99:1432-1444, 1997; Cohen et al., Nature 426:905-909, 2003; Deuerling et al., Crit Rev Biochem Molec Biol 39:261-277, 2004; Horwich et al., Encyclopedia Biol Chem 1:393-398, 2004; Imai et al., Cell Cycle 2:585-589, 2003; Kaufman, J Clin Invest 110:1389-1398, 2002; Ron et al., Nat Rev Mol Cell Biol 8:519-529, 2007; Young et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5:781-791, 2004。インビボでのタンパク質フォールディングは、折り畳まれているポリペプチド鎖と、凝集を最小限にする、複数のクラスのシャペロンおよびフォールディング酵素を含む高分子細胞成分が相互作用することによって達成される。Wiseman et al., Cell 131: 809-821, 2007。ある特定の区画によって生成される有機溶質および無機溶質が、フォールディングの物理化学的特性に影響を及ぼす、疎水性作用を含む非共有結合力によるポリペプチド鎖の救出(salvation)に影響を及ぼすので、代謝酵素もまた細胞タンパク質のフォールディング効率に影響を及ぼす。折り畳まれた状態の特定のタンパク質に結合し、安定化して、フォールディング平衡をシフトさせることでフォールディングを増強することができる低分子リガンドもまた代謝経路によって生成される。Fan et al., Nature Med., 5, 112 (Jan 1999); Hammarstrom et al., Science 299, 713 (2003)。ある特定のタンパク質がある特定の細胞タイプにおいて折り畳まれるかどうかは、シャペロン、フォールディング酵素、代謝産物などの分布、濃度、および細胞下局在に依存する。Wiseman et al., Cell 131:809-821, 2007。] [0010] 機能喪失型疾患は、多くの場合、変異タンパク質が分泌経路の中で適切に折り畳まれず、分泌経路を通ることができないために、広範囲の小胞体(ER)関連分解(ERAD)を受け、従って、目的地の環境におけるタンパク質の濃度が低いために引き起こされる。Brodsky, Biochem J 404:353-363, 2007; Brown et al., J Clin Invest 99:1432-1444, 1997; Cohen et al., Nature 426:905-909, 2003; Moyer et al., Emerg Ther Targets 5:165-176, 2001; Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006a; Schroeder et al., Ann Rev Biochem 74:739-789, 2005; Ulloa-Aguirre et al., Traffic 5:821-837, 2004; Wang et al., Cell 127:803-815, 2006; Wiseman et al., Cell 131:809-821, 2007。リソソーム性蓄積症(LSD)は、多くの場合、変異リソソーム酵素が適切に折り畳まれ、リソソームに輸送される代わりに広範囲のERADを受けることによって引き起こされる機能喪失型疾患である。Fan, Front Biotechnol Pharm 2:275-291, 2001; Fan et al., Nat Med 5:112-115, 1999; Futerman et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5:554-565, 2004; Sawkar et al., Chem Biol 12:1235-1244, 2005; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:15428-15433, 2002; Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006a; Sawkar et al., ACS Chem Biol 1:235-251, 2006b; Schmitz et al., Int J Biochem Cell Biol 37:2310-2320, 2005; Yu et al., J Med Chem 50:94-100, 2007b; Zimmer et al., J Pathol 188:407-414, 1999。これらは基質の蓄積を特徴とし、典型的には、変異リソソーム酵素の活性が正常値の約10%未満に低下した時に生じる。Conzelmann et al., Dev Neurosci 6:58-71, 1984; Schueler et al., J Inherit Metab Dis 27: 649-658, 2004。LSDは、現在、損傷を受けた酵素を、エンドサイトーシス経路を利用してリソソームに到達する野生型組換えバージョンに交換することによって治療されている。Futerman et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5:554-565, 2004; Beutler et al., Proc Natl Acad Sci USA 74:4620-4623, 1977; Brady, Ann Rev Med 57:283-296, 2006。組換え酵素が血液脳関門を通過しないので、神経障害性LSDの酵素補充療法は失敗している。Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63:1179-1192, 2006a。誤って折り畳まれ、ERADによって分解される変異リソソーム酵素の多くは、適切な条件下では、例えば、細胞が低い許容温度で増殖する場合には、折り畳まれ、部分活性を示すことができる。Futerman et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5:554-565, 2004; Sawkar et al., ACS Chem Biol 1:235-251, 2006b。ほとんどの変異糖脂質処理酵素の問題は、リソソームの酸性環境とは別個のERの中性pH環境における折り畳みである。Sawkar et al., ACS Chem Biol 1:235-251, 2006b。] [0011] 機能喪失型疾患、例えば、リソソーム性蓄積症および神経障害性リソソーム性蓄積症、または機能獲得型疾患、例えば、年齢に伴う発症(age-onset)に関連する疾患、例えば、加齢黄斑変性、封入体筋炎(inclusion body myositosis)、II型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病またはパーキンソン病につながり得る、細胞内タンパク質ミスフォールディングおよびタンパク質輸送の変化に関連する疾患に有効な療法を開発するために、新たな方針が必要とされている。現行の治療は、酵素補充療法または基質抑制療法のために認可された化合物に限定されているので、タンパク質ホメオスタシスの機能不全に関連するタンパク質機能喪失型疾患または機能獲得型疾患を治療するために、新たな治療アプローチが当技術分野において必要とされている。] [0012] 概要 本発明は、概して、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法に関する。タンパク質ホメオスタシスの機能不全は、タンパク質ミスフォールディング、タンパク質凝集、欠陥のあるタンパク質輸送、タンパク質分解、またはそれらの組み合わせの結果であり得る。この方法は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させるのに有効な量および投与計画でタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含んでもよい。タンパク質恒常性制御因子は、シグナル伝達を熱ショック応答(HSR)経路および/もしくは小胞体ストレス応答(unfolded protein response:UPR)経路を介して、または寿命および若々しさの制御に加えてタンパク質ホメオスタシス能力を制御する加齢関連シグナル伝達経路によりアップレギュレートする細胞機構を介して、作用し得る。] [0013] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む方法が提供される。状態は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、α1-アンチトリプシン関連気腫、または嚢胞性線維症でもよい。状態には、ゴーシェ病、α-マンノシドーシス、IIIA型ムコ多糖症、ファブリー病、テイ・サックス病、およびポンペ病が含まれるが、これに限定されない。タンパク質恒常性制御因子は、シャペロンネットワークまたはネットワークの一部の転写または翻訳を協調してアップレギュレートしてもよく、ネットワーク成分の代謝回転を妨害してもよく、タンパク質恒常性制御因子は変異体タンパク質の分解を阻害してもよい。状態は、機能獲得型障害、例えば、障害を引き起こす疾患、例えば、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病でもよい。タンパク質恒常性制御因子による疾患または状態の治療は、熱ショック応答(HSR)経路および/または小胞体ストレス応答(UPR)経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートすることができ、これらの経路に関連する遺伝子または遺伝子産物のアップレギュレーションが含まれる。タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質シャペロンの転写もしくは翻訳をアップレギュレートすることによって、またはタンパク質シャペロンの分解を阻害することによって、タンパク質シャペロンおよび/またはフォールディング酵素を調節することができる。タンパク質恒常性制御因子は、凝集経路またはディスアグリガーゼ(disaggregase)活性をアップレギュレートすることができる。タンパク質恒常性制御因子は、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの分解を阻害することができる。加齢に関連するシグナル伝達経路の変更は、タンパク質ホメオスタシス経路を調節するための別のアプローチである。細胞内Ca++イオン濃度の変更は、タンパク質ホメオスタシス能力を協調して増強するためのさらなるアプローチである。] [0014] タンパク質恒常性制御因子は、化学小分子、タンパク質、アンチセンス核酸、ショートヘアピンRNA、短鎖干渉RNA、またはリボザイムを含むが、これに限定されない組成物でよい。タンパク質恒常性制御因子は、ウイルス感染に対する患者の感受性または癌に対する感受性を高めない量で投与することができる。] [0015] さらなる局面において、治療するための方法は、薬理学的シャペロンまたはキネティック安定剤を投与する工程をさらに含んでもよい。治療するための方法は、第2の機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子を投与する工程をさらに含んでもよい。第1および第2のタンパク質恒常性制御因子は、凝集制御因子、脱凝集制御因子、タンパク質分解制御因子、またはタンパク質フォールディング制御因子の1つまたは複数でもよい。] [0016] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、薬理学的シャペロンまたはキネティック安定剤と組み合わせて、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む方法が提供される。状態は機能喪失型障害でもよい。タンパク質恒常性制御因子は、変異酵素、例えば、リソソーム酵素の正しいフォールディングを促進する。治療するための方法は、変異リソソーム酵素を交換するために、正常活性を有するリソソーム酵素をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与する工程をさらに含んでもよい。さらなる局面において、タンパク質恒常性制御因子は小胞体関連分解を阻害することができる。状態はゴーシェ病でもよい。薬理学的シャペロンは、N-(n-ノニル)デオキシノジリマイシンでもよい。状態はテイ・サックス病でもよく、薬理学的シャペロンは2-アセトアミド-2-デオキシノジリマイシンでもよい。さらなる局面において、状態は機能獲得型障害でもよい。状態には、封入体筋炎、加齢黄斑変性、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病が含まれるが、これに限定されない。] [0017] 機能喪失型疾患の治療を必要とする患者において機能喪失型疾患を治療するための方法であって、変異タンパク質の活性を改善または回復させて、患者の機能喪失型疾患を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含む方法が提供される。治療するための方法は、変異タンパク質を交換するために、正常活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与する工程をさらに含んでもよい。] [0018] 1つの局面において、タンパク質恒常性制御因子は変異タンパク質の正しいフォールディングを促進し、かつ変異タンパク質に結合しない。タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質シャペロンの小胞体関連分解を軽減または排除することができる。タンパク質恒常性制御因子はプロテアソーム阻害剤でもよい。1つの局面において、機能喪失型疾患は嚢胞性線維症でもよく、変異タンパク質は嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)でもよい。] [0019] さらなる局面において、タンパク質恒常性制御因子は小胞体中のCa2+濃度を上げる、および/またはサイトゾル中のCa2+濃度を下げる。さらに別の局面において、タンパク質恒常性制御因子はCa2+チャンネル遮断薬である。別の局面において、タンパク質恒常性制御因子は、リアノジン受容体(RyR)を阻害する薬剤である。さらに別の態様において、タンパク質恒常性制御因子はジルチアゼムまたはベラパミルである。] [0020] 機能喪失型疾患はリソソーム性蓄積症でもよく、変異タンパク質はリソソーム酵素でもよい。リソソーム性蓄積症は、神経障害性リソソーム性蓄積症、ゴーシェ病、神経障害性ゴーシェ病、α-マンノシドーシス、IIIA型ムコ多糖症、ファブリー病、テイ・サックス病、またはポンペ病でもよい。リソソーム性蓄積症はゴーシェ病でもよく、酵素は、グルコセレブロシダーゼ、例えば、変異体酵素L444PグルコセレブロシダーゼまたはN370Sグルコセレブロシダーゼでもよい。リソソーム性蓄積症はα-マンノシドーシスでもよく、酵素は、α-マンノシダーゼ、例えば、変異体酵素P356R α-マンノシダーゼでもよい。リソソーム性蓄積症はIIIA型ムコ多糖症でもよく、酵素は、スルファミダーゼ、例えば、S66WスルファミダーゼまたはR245Hスルファミダーゼでもよい。さらなる局面において、疾患はテイ・サックス病であり、酵素はβ-ヘキソサミンA、または変異体酵素、G269Sβ-ヘキソサミンAである。タンパク質恒常性制御因子は、例えば、セラストロールまたはMG-132でもよい。] [0021] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、少なくとも2つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含み、タンパク質恒常性制御因子が、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量で投与される方法が提供される。タンパク質恒常性制御因子の少なくとも1つは、変異タンパク質の正しいフォールディングを増強することができる。タンパク質恒常性制御因子の少なくとも1つは、変異タンパク質の小胞体関連分解を阻害することができる。さらなる局面において、変異タンパク質は変異酵素でもよい。] [0022] 患者においてタンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を診断するための方法であって、細胞をベースとするアッセイ系において患者からの細胞または組織とタンパク質恒常性制御因子とを接触させる工程、細胞内のタンパク質フォールディング、タンパク質凝集、タンパク質輸送、またはタンパク質分解に及ぼすタンパク質恒常性制御因子の影響を測定する工程、および患者の細胞または組織におけるタンパク質ホメオスタシスの欠損を特定する工程を含む方法が提供される。状態は機能喪失型障害でもよく、方法は、タンパク質のフォールディングまたは輸送における欠損を特定する工程をさらに含んでもよい。状態は機能獲得型障害でもよく、方法は、タンパク質の分解における欠損を特定する工程をさらに含んでもよい。欠損はタンパク質シャペロンの合成にあってもよい。タンパク質恒常性制御因子は、熱ショック応答(HSR)経路もしくは小胞体ストレス応答(UPR)経路、またはそれらの組み合わせを介してシグナル伝達をアップレギュレートすることができる。タンパク質恒常性制御因子は、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの転写もしくは翻訳をアップレギュレートすることができる。タンパク質恒常性制御因子は、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの分解を阻害することができる。タンパク質恒常性制御因子は凝集経路または脱凝集経路をアップレギュレートすることができる。] [0023] 2つまたはそれ以上のタンパク質恒常性成分を同定することによって治療法をデザインする方法であって、タンパク質恒常性成分の活性と標準とを比較する工程;標準の活性に対してタンパク質恒常性成分の活性を改変するタンパク質恒常性制御因子を選択する工程;および制御因子を必要する患者に、制御因子を投与する工程を含む方法が提供される。] 図面の簡単な説明 [0024] セラストロール処理が変異体グルコセレブロシダーゼ(GC)の活性およびリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 セラストロール処理が変異体グルコセレブロシダーゼ(GC)の活性およびリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 セラストロール処理が変異体グルコセレブロシダーゼ(GC)の活性およびリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 プロテアソーム阻害剤MG-132がGC活性を強力に増強し、L444P GC線維芽細胞内でのリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 プロテアソーム阻害剤MG-132がGC活性を強力に増強し、L444P GC線維芽細胞内でのリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 プロテアソーム阻害剤MG-132がGC活性を強力に増強し、L444P GC線維芽細胞内でのリソソームへのGCの細胞輸送を増強することを示す。 図3A、3B、3C、3D、3E、および3Fは、薬理学的シャペロンおよびタンパク質恒常性制御因子がフォールディング、輸送、および細胞酵素活性の増強において相乗作用を示すことを示す。 図4A、4B、4C、および4Dは、PRが単独で、または酵素特異的薬理学的シャペロンと組み合わせて、G269S/1278insTATC HexAテイ・サックス病線維芽細胞株のHexα部位活性を増強することを示す。 図5A、5B、5C、および5Dは、MG-132およびセラストロールが両方ともL444P GC線維芽細胞において熱ショック応答を活性化することを示す。 図6A、6B、6C、6D、および6Eは、MG-132およびセラストロールによるGCタンパク質恒常性の調節が、小胞体ストレス応答を介して起こり得ることを示す。 GCタンパク質恒常性回復経路を示し、図5および図6からのデータを統合している。これは、場合によっては、PRが、HSRおよびUPR両方の成分をアップレギュレートすることを証明している。図30に模式的に示したように、PRは、Ca2+ホメオスタシスの1つまたは複数の局面も調節することができる。 L444P GC線維芽細胞におけるGC輸送のウエスタンブロット分析を示す。 図9A、9B、および9Cは、L444P GC線維芽細胞におけるセラストロール投与計画の最適化を示す。 L444P GC線維芽細胞におけるGC活性に及ぼすプロテアソーム阻害剤の影響を示す。 L444P線維芽細胞における他のWTリソソーム酵素、ならびにWT GC線維芽細胞におけるGCの活性に及ぼすMG-132およびセラストロールの影響を示す。 図12A、12B、12C、および12Dは、セラストロールおよびNN-DNJを含有する培地を用いて培養されたG202RおよびN370S GC患者由来線維芽細胞のGC活性を示す二次元プロットを示す。 図13Aおよび13Bは、t=0、30、60、72、102、および132hでインキュベーション培地を交換した以外は図12に記載のものと同じ実験計画に従って、細胞をプレートおよび処理したことを示す。 図14A、14B、14C、および14Dは、MG-132およびセラストロール、またはMG-132およびNN-DNJを含有する培地を用いて培養された患者由来線維芽細胞における相対L444P GC活性を示す。 図15Aおよび15Bは、MG-132およびADNJを含有する培地を用いて培養されたG269S/1278insTATC HexAテイ・サックス病線維芽細胞における相対Hexα部位活性を示す。 L444P GC線維芽細胞におけるGC活性に及ぼす、Hsp70阻害剤である化合物101を単独で、またはMG-132と組み合わせた場合の影響を示す。 図17A、17B、17C、17D、17E、および17Fは、ゴーシェ病患者由来線維芽細胞におけるグルコセレブロシダーゼ(GC)変種活性に及ぼす低分子の影響を示す。 図18A、18B、18C、18D、18E、18F、18G、および18Hは、L444PおよびN370S/V394LのGCフォールディングおよび輸送に及ぼすジルチアゼムの影響を示す。 L444PおよびN370S/V394L GC線維芽細胞において細胞内Ca2+イオン濃度がGC活性に影響を及ぼすことを示す。 未処理およびジルチアゼム処理L444P GC線維芽細胞におけるシャペロン発現レベルを示す。 患者由来線維芽細胞における変異体α-マンノシダーゼおよびヘパラン硫酸スルファミダーゼ(SGSH)活性に及ぼすジルチアゼムおよびベラパミルの影響を示す。 1〜4日間培養した後のゴーシェ病患者由来線維芽細胞におけるL444Pグルコセレブロシダーゼ(GC)活性に及ぼすルテニウムレッドの影響を示す。 リソソーム酵素の活性に及ぼすジルチアゼムの影響の影響を示す。 インタクト細胞のGC活性アッセイを用いて求められた、ジルチアゼムと1時間インキュベートされたL444PおよびN370S/V394L GC細胞のGC活性を示す。 L444P GC線維芽細胞におけるGC活性に及ぼすタプシガルジンおよびジルチアゼムの影響を示す。 未処理およびジルチアゼム処理N370S/V394L GC細胞における定量RT-PCR分析を示す。 IRE1αまたはPERKのsiRNAノックダウンによって、L444P GC活性を増大させるMG-132(DMSO中で0.25μM)の能力がブロックされることを示している。活性は、非標的siRNA(対照)およびDMSOビヒクルを用いて処理されたL444P GC細胞に対して標準化した。 図28Aおよび28Bは、非標的siRNA(対照)+DMSO(ビヒクル)またはHSF1、IRE1α、ATF6、およびPERK siRNAと、(DMSOビヒクルだけで)またはDMSOに溶解した0.25μM MG-132(A)もしくは0.8μMセラストロール(B)を用いて処理された線維芽細胞における、L444P GCのウエスタンブロット分析を示す。 MG-132(0.8μM)またはセラストロール(0.8μM)で72時間処理した後のL444P GC線維芽細胞プロテオーム(A)の変化を示す。ある特定のタンパク質が未処理試料および処理試料の両方において検出された場合、薬物処理試料対未処理試料の標準化されたスペクトルカウント比を用いて、タンパク質の数をlog2 (上)およびlog10 (下)スケールでの倍率変化に対してプロットした。 小胞体(ER)におけるCa2+ホメオスタシスの模式図を示す。Ca2+レベルは、IP3受容体(IP3R)およびリアノジン受容体(RyR)放出チャンネル、ならびに筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA)ポンプを含む多くの系によって制御される。 図31Aおよび31Bは、RyR阻害剤ダントロレンの存在下でのL444P(A)およびN370S(B)線維芽細胞における相対グルコセレブロシダーゼ(GC)活性を示す。 RyR阻害剤ダントロレンへの曝露前および曝露後のL444P線維芽細胞のEndo H感受性のウエスタンブロット分析を示す。 図33A、33B、33C、33D、および33Eは、IP3R阻害剤XeC(A)、クロロキニン(B)、キニーネ(C)、チメロサール(D)、およびKN93(E)を用いて処理した際のL444P線維芽細胞における相対GC活性を示す。 RyR阻害剤ダントロレンを用いた処理後の、L444P線維芽細胞におけるGCおよびリボソーム大タンパク質(RiboP)対照の相対mRNA発現レベルを示す。 図35Aおよび35Bは、SERCA2ポンプ(A)を過剰発現するL444P線維芽細胞のEndo H感受性(A)および相対GC活性を示す。 図36Aおよび36Bは、ジルチアゼムへの様々な曝露後のL444P GC線維芽細胞における細胞質Ca2+レベルを示す。 図37A、37B、および37Cは、RyR1、RyR2、およびRyR3、ならびにRyR1/3およびRyR2/3の組み合わせに対するsiRNAへの曝露後の、L444P線維芽細胞のEndoH感受性(A、B)および相対GC活性(C)を示す。 L444P GC線維芽細胞におけるRyR1、RyR2、およびRyR3の相対発現レベルを示す。このことから、RyR3は最も豊富に発現されるアイソフォームであることが分かる。 ダントロレン(A)、ダントロレン+EDTA(B)、またはジルチアゼム(C)への曝露後のL444P GCタンパク質とERシャペロンカルネキシンとの結合レベルを示す。 ダントロレン(A)、ダントロレン+EDTA(B)、またはジルチアゼム(C)への曝露後のL444P GCタンパク質とERシャペロンカルネキシンとの結合レベルを示す。 ダントロレン(A)、ダントロレン+EDTA(B)、またはジルチアゼム(C)への曝露後のL444P GCタンパク質とERシャペロンカルネキシンとの結合レベルを示す。 図40Aおよび40Bは、L444P、N370S、およびG202R GCタンパク質と、ERシャペロンカルネキシン、カルレチキュリン、およびBiPとの結合レベル(A)、ならびにダントロレンへの曝露後の、wtGCタンパク質とカルレチキュリン(CRT)の結合レベル(B)を示す。 ダントロレンへの様々な曝露後のL444P GC線維芽細胞における、細胞質シャペロンHsp40、Hsp70、Hsp90、Hsp27、およびαβ-クリスタリン(CRYAB)の相対発現レベルを示す。 図42Aおよび42Bは、ダントロレンへの曝露後の、ER関連タンパク質C/EBP相同タンパク質(CHOP)およびXボックス結合タンパク質1(XBP-1)(A)、ならびにER関連シャペロンBiP、CRTおよびGRP94、ER関連フォールディング酵素ERp57およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ならびに細胞質シャペロンHsp70およびHsp90(B)の相対発現レベルを示す。 図43Aおよび43Bは、カルネキシン過剰発現L444P線維芽細胞のEndoH感受性(A)および相対GC活性(B)を示す。 ダントロレン単独で、および薬理学的シャペロンと組み合わせた場合のN370S線維芽細胞の相対GC活性を示す。] [0025] 詳細な説明 本発明は、機能獲得型疾患および機能喪失型疾患の原因となるタンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法に関する。状態は、代謝障害、腫瘍障害、神経変性障害、および心血管障害を含む。機能喪失型疾患、例えば、神経障害性の変種、嚢胞性線維症、またはα1-アンチトリプシン欠損関連気腫を含むリソソーム性蓄積症(LSD)は、多くの場合、タンパク質ホメオスタシスすなわちタンパク質恒常性の機能不全によって引き起こされ、時として、タンパク質フォールディング、輸送、および分解の正常なバランスを損なう、分泌経路を通り抜けるタンパク質の変異に起因する。機能獲得型疾患は、多くの場合、年齢発症関連疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、加齢黄斑変性、封入体筋炎、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病である。本明細書に記載のように、タンパク質恒常性制御因子、例えば、低分子化合物タンパク質恒常性制御因子、RNAi、shRNA、リボザイム、アンチセンスRNA、またはタンパク質、タンパク質類似体、もしくはミメティックを細胞に投与することによって、何もしなければ誤って折り畳まれ、分解される変異酵素を折り畳むように、生得的な細胞タンパク質ホメオスタシス機構を適応させることができる。本発明は、細胞質および/または小胞体のタンパク質恒常性環境の組成を変えることによって、それぞれ別個のリソソーム性蓄積症に関連する非相同変異体酵素のフォールディング、輸送、および機能を部分的に回復することができるタンパク質恒常性制御因子を投与することによって、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法を提供する。タンパク質恒常性制御因子と共に酵素特異的薬理学的シャペロンが同時投与された時に、これらの別個の作用機構のために、さらなる相乗的なタンパク質恒常性回復が観察された。タンパク質恒常性制御因子を投与することによって、または薬理学的シャペロンおよびタンパク質恒常性制御因子の組み合わせを投与することによって、機能喪失型疾患および/または機能獲得型疾患を寛解することができる可能性がある。] [0026] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量および投与計画でタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む方法が提供される。状態は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症でもよい。状態には、ゴーシェ病、α-マンノシドーシス、IIIA型ムコ多糖症、ファブリー病、テイ・サックス病、ポンペ病、嚢胞性線維症、およびα1-アンチトリプシン欠損関連気腫が含まれるが、これに限定されない。タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質シャペロンまたはシャペロンネットワークの転写もしくは翻訳をアップレギュレートしてもよく、タンパク質シャペロンまたはシャペロンネットワークの分解を阻害してもよい。状態は、機能獲得型障害、例えば、障害を引き起こす疾患、例えば、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病でもよい。タンパク質恒常性制御因子による疾患または状態の治療は、熱ショック応答(HSR)経路および/または小胞体ストレス応答(UPR)経路を介したシグナル伝達を協調してアップレギュレートすることができ、これらの経路に関連する遺伝子または遺伝子産物のアップレギュレーションが含まれる。寿命および若さに関連するシグナル伝達経路に影響を及ぼすことが、タンパク質恒常性ネットワークを調節するための別のアプローチであることも明らかである。] [0027] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする機能喪失型状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする機能喪失型状態を治療するための方法は、損傷を受けた酵素を交換する代わりに、タンパク質恒常性の生得的な細胞生物学的特性を適応させることによって、ミスフォールディングおよび分解(ER関連分解、ERAD)を受けやすい変異リソソーム酵素の部分的なフォールディング、輸送、および機能を回復させることが可能な治療方針を支持する。同様に、機能獲得型疾患の治療でも、折り畳まれた機能的状態のタンパク質に結合してキネティック安定性をタンパク質に与え、それによって変性および凝集物への誤った集合を阻止する低分子であるキネティック安定剤の代わりに、またはこれに加えて、細胞生物学的特性またはタンパク質恒常性の適応を使用することができる。細胞タンパク質ホメオスタシスを増強する小さな化学分子または生物学的因子(タンパク質ミメティックまたは類似体、RNAi、shRNA、リボザイム、またはアンチセンスRNA)、すなわち「タンパク質恒常性制御因子」は、多くの場合、熱ショック応答、小胞体ストレス応答、および寿命関連シグナル伝達経路を含むシグナル伝達経路を操作することによって機能して、タンパク質恒常性ネットワーク成分の転写および翻訳をもたらす。例えば、低分子化合物であるセラストロールは熱ショック応答を活性化して、シャペロン、コシャペロン、フォールディング酵素などの発現を増強する。Westerheide et al., J Biol Chem 279: 56053-56060, 2004; Yang et al., Cancer Res 66: 4758-4765, 2006。] [0028] タンパク質恒常性ネットワークは多くのクライアント(client)タンパク質のフォールディングおよび輸送を同時に支持するように進化してきたので、1種類のタンパク質恒常性制御因子によって、複数の疾患におけるタンパク質恒常性が回復できるはずである。さらに、タンパク質恒常性制御因子は作用機構が異なるために、薬理学的シャペロン/キネティック安定剤の確立されている有用性を補うはずである。Asano et al., Eur J Biochem 267: 4179-4186, 2000; Bouvier, Chem Biol 14: 241-242, 2007; Fan et al., Nat Med 5: 112-115, 1999; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 15428-15433, 2002; Brown et al., J Clin Invest 99: 1432-1444, 1997; Ulloa-Aguirre et al., Traffic 5: 821-837, 2004。薬理学的シャペロン/キネティック安定剤は、既にある定常状態レベルの折り畳まれた変異体タンパク質に結合し、折り畳みを安定化することによってフォールディング平衡を化学的に増強する。Bouvier, Chem Biol 14: 241-242, 2007; Fan et al., Nat Med 5: 112-115, 1999; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 15428-15433, 2002。対照的に、タンパク質恒常性制御因子は、多くの場合、シャペロンおよびフォールディング酵素レベル、ならびに部分的に折り畳まれたコンホメーションアンサンブルに結合して、よりネイティブな構造を有する中間体に進ませ、最終的には、輸送されるように折り畳まれた変異体タンパク質の濃度を上げる高分子を協調して増やすことによって、フォールディングの生物学的特性に影響を及ぼす。] [0029] タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法は、異なるリソソーム性蓄積症(LSD)からの患者由来細胞株において機能するタンパク質恒常性制御因子を発見することに焦点を当てている。最もよく見られるLSDであるゴーシェ病は、典型的には、広範囲のERADおよびリソソーム中でのGCの機能喪失につながってグルコシルセラミド蓄積の原因となるN370SまたはL444Pグルコセレブロシダーゼ(GC)変異によって引き起こされる。Beutler et al., Blood Cells Mol Dis 35: 355-364, 2005; Sawkar et al., Cell Mol Life Sci 63: 1179-1192, 2006a; Sawkar et al., ACS Chem Biol 1: 235-251, 2006b。L444P変異は、多くの場合、神経障害性ゴーシェ病につながり、(N370S変種とは異なり)薬理学的シャペロンにあまり応答しない。これは、おそらく、折り畳まれたL444P GCの濃度が非常に低いためである。Sawkar et al., Chem Biol 12: 1235-1244, 2005; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 15428-15433, 2002; Sawkar et al., ACS Chem Biol 1: 235-251, 2006b; Yu et al., J Med Chem 50: 94-100, 2007b。テイ・サックス病(TSD)は、G269Sを含むβ-ヘキソサミニダーゼA(HexA)変異によって引き起こされ得る別の機能喪失型LSDである。Jeyakumar et al., Neuropathol Appl Neurobiol 28: 343-357, 2002。この変異がα-サブユニットにあると、α-サブユニットおよびβ-サブユニットからなるヘテロ二量体糖タンパク質であるHexAのフォールディングおよび輸送が損なわれ、かなりのERADを受け、その基質であるGM2ガングリオシドがニューロンに貯蔵される。Maegawa et al., J Biol Chem 282: 9150-9161, 2007。HexAのフォールディング、輸送、および活性は、活性部位特異的薬理学的シャペロンによる処理の際に、G269Sα-サブユニット変異を有する患者由来線維芽細胞において部分的に回復することが知られている。Maegawa et al., J Biol Chem 282: 9150-9161, 2007; Tropak et al., J Biol Chem 279: 13478-13487, 2004。] [0030] ゴーシェ病およびテイ・サックス病患者由来細胞株においてグルコセレブロシダーゼおよびHexAタンパク質恒常性および機能を部分的に回復させる2種類のタンパク質恒常性制御因子が本明細書に記載されている。このことは、1種類のタンパク質恒常性制御因子を用いて複数のLSDを治療することが可能だという原理の証拠となっている。これらのタンパク質恒常性制御因子は、熱ショック応答および小胞体ストレス応答を活性化して、それぞれ、細胞質およびERの中のタンパク質恒常性成分を変えることによって機能するように見える。さらに、いずれの場合でも、これらの結果は、タンパク質恒常性制御因子と活性部位特異的薬理学的シャペロンを組み合わせると、これらの別個の作用機構の結果として、患者由来線維芽細胞における変異体酵素機能の相乗的回復が得られることを証明している。] [0031] 熱ショック応答および小胞体ストレス応答の活性化が特定の用途に必要とされるかどうかは、タンパク質恒常性制御因子および熱ショック応答シグナル伝達経路を開始するHSF1に対するRNAiもしくはsiRNA、またはタンパク質恒常性制御因子および小胞体ストレス応答シグナル伝達経路の3つのアーム(arm)を活性化するのに必要な成分に対するRNAiもしくはsiRNAを適用することによって分かる。個々の成分(シャペロン、フォールディング酵素、代謝産物)が必要かどうかも、タンパク質恒常性制御因子および患者由来細胞に対するRNAiまたはsiRNAを適用することによって分かる。ある特定のRNAiを同時投与することによってタンパク質恒常性制御因子が機能喪失すると、その経路または経路成分がタンパク質恒常性の回復に重要であることが分かる。] [0032] Ca2+イオンは普遍的かつ極めて重要な細胞内シグナル伝達イオンである。Ca2+シグナル伝達は、多様な経路による非常に多くの細胞機能に影響を及ぼし、小胞体(ER)機能の主な制御因子である。Berridge et al., Nat Rev Mol Cell Biol 4: 517-529, 2003; Burdakov et al., Cell Calsium 38: 303-310, 2005; Gorlach et al., Antioxid Redox Signal 8: 1391-1418, 2006。新たに浮上しつつある証拠から、カルシウムシグナル伝達は、多くのリソソーム性蓄積症(LSD)を含む、タンパク質ホメオスタシスの欠損に関連する疾患に影響を及ぼす可能性があることが分かっている。Futerman et al., Nat Rev Mol Cell Biol 5: 554-565, 2004; LaFerla, Nat Rev Neurosci 3: 862-872, 2002; Petersen et al., Cell Calcium 38: 161-169, 2005。この仮説は、筋形質/内質カルシウム(SERCA)ポンプ阻害剤、例えば、タプシガルジンによってカルシウムホメオスタシスを操作すると、ΔF508嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)およびクルクミンのフォールディングおよび輸送が増強されるという観察によって裏付けられている。Egan et al., Nat Med 8: 485-492, 2002; Egan et al., Science 304: 600-602, 2004。] [0033] さらに、本発明は、LSDにつながる変異体酵素ホメオスタシスの欠陥を改善するように細胞内カルシウムホメオスタシスを操作することによって、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法に関する。サイトゾルカルシウム濃度を下げる、および/または小胞体(ER)カルシウム濃度を上げる薬剤が、ゴーシェ病、マンノシドーシス、およびムコ多糖症IIIA型などのLSDに関連する変異体酵素のフォールディングおよび活性を増強することが見出されている。さらに、下記の実施例に示したように、ER中のカルシウム濃度を上げると、カルシウム結合シャペロンタンパク質の活性が増強した。従って、本発明の1つの態様は、ER中のカルシウム濃度を上げる、および/またはサイトゾル中のカルシウム濃度を下げる、および/またはER中のカルシウム結合シャペロンの活性を増強する薬剤の投与により、変異体リソソーム酵素のフォールディングを増強することによってLSDを治療することに関する。異なるLSDに関連する複数の細胞株において内因性変異体リソソーム酵素のフォールディング、輸送、および機能を増強し、従って、カルシウムホメオスタシスを変えることによって、損傷を受けた酵素を交換する代わりに修復することによって機能を回復させる薬剤を調べた。これらを下記で詳述する。例えば、FDAは、薬物ジルチアゼムおよびベラパミルを認可した。両薬物ともL型電位依存性カルシウムチャンネル遮断薬であり、非相同酵素のフォールディング欠陥によって引き起こされる3つの別個のLSDにおいて変異体リソソーム酵素の機能を部分的に回復させることが発見された。これらの結果は、カルシウムチャンネル遮断薬が、様々なLSDにおけるリソソーム酵素ホメオスタシスを増強する有望な候補であることを示唆している。] [0034] LSDはリソソーム酵素活性の欠損に起因し、従って、変異体酵素の基質はリソソーム中で蓄積して、異常を引き起こす。全てではないが多くのLSDでは、臨床上最も重要な変異があると、酵素の細胞フォールディングが損なわれ、酵素は適切に折り畳まれ、リソソームに輸送される代わりに、小胞体関連分解に供される。部分的な変異体酵素フォールディング、輸送、および活性を回復させる薬剤、例えば、低分子または高分子が、特に、1種類の薬剤の作用機構によって複数の別個のリソソーム性蓄積症が寛解できれば、極めて望ましいだろう。両方ともFDAに認可された高血圧薬であるジルチアゼムまたはベラパミルを用いてL型Ca2+チャンネルを阻害すると、ゴーシェ病患者由来線維芽細胞において、N370SおよびL444Pグルコセレブロシダーゼ(GC)ホメオスタシスが部分的に回復する。後者の変異は難治性神経障害性疾患に関連する。ジルチアゼム構造-活性研究から、ミスフォールディングを受けやすいタンパク質を折り畳む小胞体の能力を増強するのは、このCa2+チャンネル遮断薬活性であることが示唆されている。重要なことに、ジルチアゼムおよびベラパミルは、糖タンパク質およびヘパラン硫酸分解に必須の酵素が関与する他の2つの別個のLSD、すなわち、それぞれ、α-マンノシドーシスおよびIIIA型ムコ多糖症でも、酵素ホメオスタシスを部分的に回復させる。] [0035] 従って、本発明の1つの態様は、カルシウムチャンネル遮断薬を投与する工程を含むLSDを治療する方法に関する。「カルシウムチャンネル遮断薬」という用語は、電位依存性カルシウムチャンネルを遮断する薬剤を指す。「カルシウムチャンネル遮断薬」という用語の同義語は、カルシウムチャンネルアンタゴニスト、カルシウムチャンネル阻害剤、およびカルシウム流入遮断薬であり、これらの用語は本明細書において同義に用いられる。カルシウムチャンネル遮断薬には、「律速」薬剤、例えば、ベラパミルおよびジルチアゼム、ならびにジヒドロピリジングループのカルシウムチャンネル遮断薬が含まれる(Meredith et al. (2004). J of Hypertension 22: 1641-1648)。カルシウムチャンネル遮断薬の具体例は、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、リョシジン(ryosidine)、アニパミル(anipamil)、ジルチアゼム、フェンジリン、フルナリジン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、チアパミル、ベラパミル、マレイン酸ペルヘキシリン、フェンジリンおよびプレニルアミン、ならびにその任意の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、または他の誘導体である。本発明の1つの態様において、カルシウムチャンネル遮断薬はL型Ca2+チャンネル遮断薬である。別の態様において、本発明は、L型カルシウムチャンネルの活性を阻害する工程を含む、LSDを治療する方法である。さらなる態様において、本発明は、ER中の1つまたは複数のカルシウム結合シャペロンの発現を増やす工程を含む、LSDを治療する方法である。さらなる態様において、本発明は、ER中の1つまたは複数のカルシウム結合シャペロンの活性を増やす工程を含む、LSDを治療する方法である。さらに別の態様において、本発明は、L型Ca2+カルシウムチャンネル遮断薬を投与することによって、ER中の1つまたは複数のカルシウム結合シャペロンの発現および/または活性を増やす方法である。例示的なカルシウム結合シャペロンタンパク質は、BiP、カルネキシン、およびカルレチキュリンである。] [0036] カルシウムホメオスタシスを操作する別のアプローチは、ERカルシウム受容体の活性を調節することによるものである。ERカルシウム受容体には、例えば、リアノジン受容体(RyR)、イノシトール3-リン酸受容体(IP3R)、およびSERCAポンプタンパク質が含まれる。RyRおよびIP3Rは、ERからのカルシウム流出を媒介するのに対して、SERCAポンプタンパク質は、ERへのカルシウム流入を媒介する。1つの態様において、ER中のカルシウム濃度は、RyRを阻害することによって増加する。3種類のRyRサブタイプ、RyR1、RyR2、およびRyR3がある。RyR受容体を阻害する例示的な方法は、受容体アンタゴニストの投与、および、例えば、アンチセンス核酸を投与することによる、またはRNA干渉もしくはDNA干渉を使用することによる受容体の発現の阻害である。例示的なRyR受容体アンタゴニストは、ダントロレン、リアノジン、アズモレン(azumolene)、カルクエストリン(calquestrin)、およびプロカインである。1つの態様において、RyRアンタゴニストはダントロレンである。さらなる態様において、ER中のカルシウム濃度は、少なくとも2種類のRyRサブタイプを阻害することによって増加する。] [0037] さらに別の態様において、本発明は、RyRを阻害し、薬理学的シャペロンを投与する工程を含む、LSDを治療する方法である。下記に示したように、ダントロレンと薬理学的シャペロンと組み合わせて投与すると、相乗作用して、変異体グルコセレブロシダーゼ(GC)活性が回復する。] [0038] さらなる態様において、本発明は、LSDを治療する方法を必要とする患者に、ジルチアゼムおよびベラパミルおよびその塩、エステル、アミド、プロドラッグからなる群より選択されるタンパク質恒常性制御因子を投与する工程を含む、LSDを治療する方法である。] [0039] 本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物システムに限定されず、もちろん、これらは異なってもよいことが理解されるはずである。本明細書において使用する用語は特定の態様を説明するのにすぎず、限定を目的としないことも理解されるはずである。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に内容によってはっきり規定されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「細胞(a cell)」についての言及は、2つまたはそれ以上の細胞の組み合わせを含む。] [0040] 本明細書で使用する「約」とは、測定可能な値、例えば、量、期間などを指している場合、指定値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%のばらつきが、開示された方法を実施するのに適しているので、このようなばらつきを含むことを意味する。] [0041] 特に定義のない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料に類似するまたは均等な任意の方法および材料を、本発明を試験するための実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を下記で説明する。本発明の説明および特許請求の範囲では、以下の用語が用いられる。] [0042] 「タンパク質ホメオスタシス」または「タンパク質恒常性」とは、多くの場合、転写および翻訳の変化によって細胞の生得的な生物学的特性を再適応させることによって、プロテオームを構成する個々のタンパク質の濃度、コンホメーション、結合相互作用、例えば、四次構造、および位置を制御することを指す。タンパク質恒常性は、タンパク質フォールディング/ミスフォールディングの化学的特性の影響を受け、ならびにタンパク質合成、フォールディング、コンホメーション、結合相互作用、輸送、脱凝集および分解に影響を及ぼす、相互作用および競合する生物学的経路からなる非常に多くの調節されたネットワークの影響を受ける。] [0043] タンパク質交換および薬理学的シャペロン/キネティック安定剤アプローチとは対照的に、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする疾患を治療するために本明細書において提供される方法は、タンパク質恒常性制御因子の使用を含む、タンパク質恒常性を回復させる治療方針を提供する。タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質交換および薬理学的シャペロン/キネティック安定剤アプローチとは別個のものである。これらのタンパク質恒常性制御因子は、細胞の生得的な生物学的特性を再適応させることによって、ある特定のタンパク質またはタンパク質ファミリーの濃度、コンホメーション、結合相互作用、例えば、四次構造、および/または位置を操作するのに使用することができる低分子または生物学的因子(siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、cDNA、またはタンパク質)でもよい。これは、タンパク質合成、フォールディング、輸送、および分解経路に影響を及ぼすことに関与するプロセスを含むタンパク質恒常性ネットワークを変えることによって達成することができる。タンパク質恒常性制御因子は、多くの場合、寿命およびタンパク質ホメオスタシス、ならびに/またはシャペロン、フォールディング酵素、および代謝経路によって作られた低分子を含むタンパク質恒常性ネットワークを含むある特定の経路の成分の転写および翻訳を制御する、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、およびCa2+シグナル伝達経路を含むシグナル伝達経路を操作することによって機能する。タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法は、欠陥のあるタンパク質恒常性に関連する機能喪失型疾患および機能獲得型疾患の両方を含み、これらは、タンパク質恒常性制御因子を用いて治療することができる。] [0044] 「タンパク質恒常性制御因子」とは、細胞タンパク質ホメオスタシスを増強する低分子、siRNA、生物学的因子を指す。タンパク質恒常性制御因子は、熱ショック応答もしくは小胞体ストレス応答またはその両方を含むが、これに限定されないシグナル伝達経路を操作して、タンパク質恒常性ネットワーク成分の転写および翻訳を引き起こすことによって機能する。例えば、セラストロールは熱ショック応答を活性化して、シャペロン、コシャペロンなどの発現を増強させる。Westerheide et al., J Biol Chem 279: 56053-56060, 2004; Yang et al., Cancer Res 66: 4758-4765, 2006。タンパク質恒常性制御因子はまた、タンパク質シャペロンの転写もしくは翻訳をアップレギュレートすることによって、またはタンパク質シャペロンの分解を阻害することによってタンパク質シャペロンを調節することができる。さらに、タンパク質恒常性制御因子は、凝集経路またはディスアグリガーゼ活性をアップレギュレートすることができる。タンパク質恒常性ネットワークは多くのクライアントタンパク質のフォールディングおよび輸送を同時に支持するように進化してきたので、1種類のタンパク質恒常性制御因子によって、複数の疾患におけるタンパク質恒常性が回復できるはずである。] [0045] さらに、タンパク質恒常性制御因子は、薬理学的シャペロン/キネティック安定剤とは別個の作用機構を有し、薬理学的シャペロン/キネティック安定剤の確立されている有用性を補う。Asano et al., Eur J Biochem 267: 4179-4186, 2000; Bouvier, Chem Biol 14: 241-242, 2007; Fan et al., Nat Med 5: 112-115, 1999; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 15428-15433, 2002; Brown et al., J Clin Invest 99: 1432- 1444, 1997; Ulloa-Aguirre et al., Traffic 5: 821-837, 2004。1つの局面において、タンパク質恒常性制御因子は、変異タンパク質のホメオスタシスを増強できるが、変異タンパク質に結合しない点でシャペロンとは別個のものである。別の局面において、1つの分子がタンパク質恒常性制御因子部分およびシャペロン部分を含み、二重機能性を有する。] [0046] タンパク質恒常性を変える細胞内調節シグナル伝達経路には、細胞質タンパク質恒常性を調節する「熱ショック応答(HSR)」、エキソサイトーシス経路タンパク質恒常性を維持する「小胞体ストレス応答(UPR)」、および生物の寿命管理に関連し、タンパク質ホメオスタシスも制御する経路が含まれる。これらには、インシュリン/インシュリン増殖因子受容体シグナル伝達経路および食事制限に関連する経路ならびにミトコンドリア電子伝達系プロセスに関連するプロセスが含まれる。発生中に絶えず変化するプロテオームが存在するために、新たなタンパク質が存在するために、および加齢により誤って折り畳まれたタンパク質が蓄積するために、細胞タンパク質恒常性の時間的適応が必要である。プロテオームの忠実度は、発生および加齢の間に、ならびに高いタンパク質フォールディングおよび輸送能力を要求する病原体への曝露によって攻撃されるので、細胞は、タンパク質恒常性制御の消失に応答するためにストレスセンサーおよび誘導性経路を利用する。これらには、細胞質タンパク質恒常性を調節する「熱ショック応答(HSR)」ならびにエキソサイトーシス経路タンパク質恒常性の維持を助ける「小胞体ストレス応答(UPR)」が含まれる。] [0047] 「薬理学的シャペロン」または「キネティック安定剤」とは、既にある定常状態レベルの折り畳まれた変異体タンパク質に結合し、折り畳みを安定化することによってフォールディング平衡を化学的に増強する化合物を指す。Bouvier, Chem Biol 14: 241-242, 2007; Fan et al., Nat Med 5: 112-115, 1999; Sawkar et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 15428-15433, 2002; Johnson and Kelly, Accounts of Chemical Research 38: 911-921, 2005。対照的に、タンパク質恒常性制御因子は、多くの場合、部分的に折り畳まれたコンホメーションアンサンブルに結合して、よりネイティブな構造を有する中間体に進ませ、最終的には、輸送されるように折り畳まれた変異体タンパク質の濃度を上げる、シャペロン/コシャペロンおよびフォールディング酵素レベルを協調して増やすことによって、フォールディングの生物学的特性に影響を及ぼす。] [0048] 「凝集経路」または「凝集活性」とは、タンパク質を集合および凝集する、生物によって示される活性、時として、毒性前駆体を毒性の低い凝集物に凝集する活性を指す。タンパク質フォールディングの完全性は、寿命の決定および凝集関連タンパク質毒性(proteotoxicity)の寛解において役割を果たしている可能性がある。] [0049] 「脱凝集経路」、「脱凝集活性」、または「ディスアグリガーゼ」とは、タンパク質凝集物、例えば、アミロイドタンパク質またはその前駆体を脱集合およびタンパク分解する、ヒトを含む多くの生物によって示される活性を指す。] [0050] 「小胞体ストレス応答(UPR)経路」とは、小胞体(ER)の中のストレス感知機構を指す。ERは、総称して小胞体ストレス応答とも呼ばれる、3つまでの統合された細胞内シグナル伝達経路アーム、例えば、UPR関連ストレスセンサー、IRE1、ATF6、およびPERKを活性化することによって、内腔の中の折り畳まれていないタンパク質の蓄積に応答する。小胞体ストレス応答は、分泌経路内で機能する非常に多くの遺伝子の発現を調節する。Ron et al., Nat Rev Mol Cell Biol 8: 519-529, 2007; Schroeder et al., Ann Rev Biochem 74: 739-789, 2005。UPR関連シャペロンには、BiP、GRP94、およびカルレチキュリンが含まれるが、これに限定されない。] [0051] 「熱ショック応答(HSR)経路」とは、可溶性内腔酵素として分泌経路内で折り畳まれ、輸送されるタンパク質のタンパク質恒常性に影響を及ぼし得る、サイトゾル中の高発現の熱ショックタンパク質(シャペロン/コシャペロン/フォールディング酵素)を指す。シャペロンを含むサイトゾル因子は、フォールディングおよび輸送を許容するように分泌経路を適応させるのに必須である可能性が高い。Bush et al., J Biol Chem 272: 9086-9092, 1997; Liao et al., J Cell Biochem 99: 1085-1095, 2006; Westerheide et al., J Biol Chem 279: 56053-56060, 2004。] [0052] HSR関連シャペロンには、Hsp/c40ファミリーメンバー、Hsp/c70ファミリーメンバー、Hsp/c90ファミリーメンバー、Aha1、オーキシリン、Bag1、CSPを含むHsp/c40/70/90コシャペロン、ならびに熱ショック小タンパク質ファミリーメンバーが含まれるが、これに限定されない。HSR経路はまた、細胞質内にあり、機能するプロテオームに直接影響を及ぼす。] [0053] UPR関連シャペロンには、GRP78/BiP、GRP94/gp96、GRP170/ORP150、GRP58/ERp57、PDI、ERp72、カルネキシン、カルレチキュリン、EDEM、Herp、ならびにコシャペロンSIL1およびP58IPKが含まれるが、これに限定されない。] [0054] 「フォールディング酵素」とは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)によるジスルフィド結合形成およびペプチジルプロリルcis-transイソメラーゼ(PPI)によるペプチジル-プロリルcis-transアミド結合異性化を含むが、これに限定されない、フォールディングにおいてゆっくりとした段階を触媒するタンパク質を指す。] [0055] 「治療する」または「治療」は、疾患の症状、合併症、または生化学的徴候の発症を阻止または遅延して、症状を緩和または寛解するために、あるいは疾患、状態、または障害(例えば、機能獲得型障害すなわち毒性凝集物の蓄積に関連する疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、加齢黄斑変性、封入体筋炎、およびパーキンソン病;または機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、嚢胞性線維症、またはα1-アンチトリプシン欠損関連気腫)のさらなる発症を停止または阻害するために、本発明の局面の組成物、化合物、または薬剤を投与することを含む。本明細書で使用する、「状態を軽減する」もしくは「状態を軽減するために」または「疾患を軽減する」もしくは「疾患を軽減するために」という句は、状態または疾患の1つまたは複数の症状を寛解することを含む。「状態を排除する」もしくは「状態を排除するために」または「疾患を排除する」もしくは「疾患を排除するために」という句は、状態または疾患の症状の全てまたは実質的に全てを寛解することを指す。「治療する」とは、客観的パラメータまたは主観的パラメータ、例えば、寛解;軽快;症状の減少、もしくは患者に対する疾患状態の忍容性の増大;変性速度の遅延もしくは低下;または最終的な変性時点の衰弱の緩和を含めて、疾患、状態、または障害(例えば、機能獲得型障害すなわち毒性タンパク質凝集物の蓄積に関連する疾患または機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症)の治療または寛解または阻止が成功したという任意の徴候をさらに指す。症状の治療または寛解は、医師による検査の結果を含めて客観的パラメータまたは主観的パラメータに基づいてもよい。従って、「治療する」という用語は、機能獲得型障害すなわち毒性凝集物の蓄積に関連する疾患または機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症に関連する症状または状態の発症を阻止もしくは遅延するために、緩和するために、または停止もしくは阻害するために、本発明の局面の化合物または薬剤を投与することを含む。「治療効果」という用語は、被験体における疾患、疾患の症状、または疾患の副作用を軽減、排除、または阻止することを指す。本発明の方法を用いて「治療する」または「治療」は、機能獲得型障害すなわち毒性凝集物の蓄積に関連する疾患または機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症の高いリスクがあり得るが、症状をまだ経験していないもしくは症状を示していない被験体において症状の発症を阻止すること、疾患の症状を阻害すること(疾患の発症を遅延もしくは停止すること)、疾患の症状もしくは副作用を緩和すること(対症療法を含む)、および変性疾患の症状を緩和すること(後退させること)を含む。治療は、(疾患の発症を阻止もしくは遅延するために、またはその臨床症状もしくは準臨床症状の発現を阻止するために)予防的でもよく、疾患または状態が発現した後の症状の治療的抑制または緩和でもよい。特定の疾患または状態を治療するためにタンパク質恒常性制御因子を投与するための投与計画は、同じ疾患または状態を治療するために用いられる他の薬物の投与計画より頻度が少ない可能性が高い。] [0056] 「患者」、「被験体」、「脊椎動物」、または「哺乳動物」は同義に用いられ、哺乳動物、例えば、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えば、ウサギ、ラット、およびマウス、ならびに他の動物を指す。動物には、全ての脊椎動物および無脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、線虫(Cenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、両生類、およびハ虫類が含まれる。] [0057] 機能喪失型疾患およびリソソーム性蓄積症 「機能喪失型疾患」とは、不十分なタンパク質フォールディングによってタンパク質が過剰に分解されることを特徴とする疾患の一群を指す。機能喪失型疾患には、例えば、嚢胞性線維症、リソソーム性蓄積症、およびフォンヒッペル・リンダウ(VHL)病が含まれる。嚢胞性線維症において、変異または欠陥のある酵素は嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)である。このタンパク質の最もよく見られる変異の1つは、3つのヌクレオチドの欠失(Δ)であるΔF508であり、これにより、タンパク質の508番目(508)の位置にあるアミノ酸フェニルアラニン(F)が消失する。1つの態様において、本発明は、機能喪失型疾患を治療する方法を必要とする患者において機能喪失型疾患を治療する方法であって、変異酵素の活性を改善または回復するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。さらなる態様において、タンパク質恒常性制御因子は、変異酵素の正しいフォールディングを促進することによって変異酵素の活性を回復させる。] [0058] 「リソソーム性蓄積症」とは、様々な組織において生じ得る特定のリソソーム酵素が欠損しており、そのために、欠損酵素によって通常分解される分子が蓄積することを特徴とする疾患の一群を指す。リソソーム酵素の欠損は、リソソーム加水分解酵素またはリソソーム輸送に関与するタンパク質にあってもよい。代表的なリソソーム疾患および関与する欠陥酵素を表1に列挙する。] [0059] ] [0060] ゴーシェ病は1882年にPhillipe C. E. Gaucherによって初めて述べられ、知られている最も古くかつ最もよく見られるリソソーム性蓄積症である。認められている3つの臨床型の中でI型が最もよく見られ、神経系が関与しない慢性経過をたどる。2型および3型は両方ともCNS成分を有し、前者は2歳までに死亡する急性小児型であり、後者は亜急性若年型である。1型ゴーシェ病の発生率は、一般的に、出生児50,000人あたり約1人、アシュケナージ系ユダヤ人(Ashkenazim)では出生児400人あたり約1人である。Kolodny et al., 1998, 「Storage Diseases of the Reticuloendothelial System」, In: Nathan and Oski's Hematology of Infancy and Childhood, 5th ed., vol. 2, David G. Nathan and Stuart H. Orkin, Eds., W.B. Saunders Co., pages 1461-1507。ゴーシェ病はグルコシルセラミドリピドーシスとも知られ、酵素グルコセレブロシダーゼの不活性化およびグルコセレブロシドの蓄積によって引き起こされる。グルコセレブロシダーゼは、通常、グルコセレブロシドからグルコースおよびセラミドへの加水分解を触媒する。ゴーシェ病では、グルコセレブロシドは、詰め込まれている組織マクロファージに蓄積し、典型的には、肝臓、脾臓および骨髄に、時として、肺、腎臓、および腸に見出される。特徴的な進行性肝脾腫ならびに二次的な病的骨折を伴う骨壊死および骨減少を含む骨格合併症に加えて、二次的な血液学的続発症には重篤な貧血および血小板減少が含まれる。例えば、米国特許出願第2007/0280925号を参照されたい。] [0061] ファブリー病は、セラミドトリエキソシダーゼとも知られるα-ガラクトシダーゼA(α-GalA)の欠損を特徴とするX連鎖劣性遺伝性LSDであり、末端α-ガラクトシル残基を有するスフィンゴ糖脂質、例えば、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)の蓄積を介して血管性および他の疾患発現を引き起こす。Desnick R J et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 7:2741-2784, 1995。症状には、無汗症(発汗が無いこと)、指の痛み、左心室肥大、腎臓症状、および虚血性脳卒中が含まれることがある。症状の重篤度は劇的に異なる。Grewal, J. Neurol. 241: 153-156,1994。心臓に限定される症状のある変種が認められており、その発生率は、かつて考えられていたものより高い可能性がある。Nakao, N. Engl. J. Med. 333: 288-293, 1995。まれな変種はかなり晩年になってから認められるが、臨床的覚醒状態のある場合は小児期での診断が可能である。Ko et al., Arch. Pathol. Lab. Med. 120: 86-89,1996; Mendez et al., Dement. Geriatr. Cogn. Disord. 8: 252-257, 1997; Shelley et al., Pediatric Derm. 12: 215-219, 1995。ファブリー病が診断される平均年齢は29歳である。] [0062] ニーマン・ピック病はスフィンゴミエリンリピドーシスとも知られ、細網内皮系の泡沫細胞浸潤を特徴とする障害の一群を含む。ニーマン・ピック病の泡沫細胞にはスフィンゴミエリンが詰め込まれ、さらに少ない程度で、コレステロールを含む他の膜脂質が詰め込まれている。ニーマン・ピック病は、A型およびB型の疾患では酵素スフィンゴミエリナーゼの不活性化によって引き起こされ、残存酵素活性はB型の方が27倍高い。Kolodny et al., 1998, 同上。ニーマン・ピック病における主要な臓器系の病態生理は以下の通り簡単にまとめることができる。脾臓は、A型およびB型患者の最も広範に関与する臓器である。肺は様々な程度で関与し、B型患者における肺症状は、慢性気管支肺炎による死亡の主因である。肝臓合併症は様々であるが、重篤な患者は、生命をあやうくする肝硬変、門脈圧亢進症、および腹水を有する場合がある。リンパ節の合併症は、疾患の重篤度に応じて様々である。中枢神経系(CNS)合併症によって、ニーマン・ピック病の主要な型が区別される。ほとんどのB型患者はCNS合併症を経験しないのに対して、CNS合併症はA型患者の特徴である。腎臓は、ニーマン・ピック病に中程度にしか関与しない。] [0063] ムコ多糖症(MPS)は、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸として知られる特定のグリコサミノグリカン(ムコ多糖またはGAG)の分解を触媒する酵素の欠損によって引き起こされるLSDの一群を含む。GAGは、反復二糖単位を特徴とする長い非分枝多糖を含有し、体内では、プロテオグリカンを形成するコアタンパク質と連結した状態で見出される。プロテオグリカンは主に細胞外マトリックス内および細胞表面上にあり、関節をなめらかにし、構造完全性に寄与する。Neufeld et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Diseases 7:2465-2494, 1995。] [0064] いくつかのムコ多糖症は、GAG分解に影響を及ぼす特定の酵素によって区別される。例えば、MPS I(ハーラー・シャイエ症候群)は、デルマタン硫酸の末端α-L-イズロン酸残基を加水分解するα-L-イズロニダーゼの欠損によって引き起こされる。MPS Iの症状は、軽度(MPS ISまたはシャイエ病)、中間型(MPS IHSまたはハーラー・シャイエ病)から重度(MPS IHまたはハーラー病)までの臨床連続(clinical continuum)に沿って変化し、臨床症状は、残存する酵素活性の程度と相関する。ハーラー症候群と診断される平均年齢は約9ヶ月であり、最初に現われる症状は、多くの場合、以下:きめの粗い顔つき、骨格異常、不器用、硬直、感染症、およびヘルニアの中に含まれる。Cleary et al., Acta. Paediatr. 84: 337-339, 1995; Colville et al., Child: Care, Health and Development 22: 31-361996, 1996。] [0065] ムコ多糖症の他の例には、ハンター症候群(MPS IIまたはイズロン酸スルファターゼ欠損症)、モルキオ症候群(MPS IV;A型およびB型ではそれぞれガラクトサミン-6-スルファターゼ欠損症およびβ-ガラクトシダーゼ欠損症)、ならびにマロトー・ラミー症候群(MPS VIまたはアリールスルファターゼB欠損症)が含まれる。Neufeld et al., 1995, 同上; Kolodny et al., 1998, 同上。] [0066] ポンペ病(糖原貯蔵症II型、酸性マルターゼ欠損症、および糖原病II型とも知られる)は、α-グルコシダーゼ(酸性α-グルコシダーゼおよび酸性マルターゼとも知られる)の欠損を特徴とする常染色体劣性LSDである。酵素α-グルコシダーゼは、通常、リソソーム内でのグリコーゲンからグルコースへの分解に関与し、マルトースも分解することができる。Hirschhorn, The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 7:2443-2464, 1995。ポンペ病の3つの認められている臨床型(小児型、若年型、および成人型)は、残存しているα-グルコシダーゼ活性のレベルと相関付けられている。Reuser et al., Muscle & Nerve Supplement 3: S61-S69, 1995。] [0067] 小児型ポンペ病(I型またはA型)は最もよく見られ、かつ最も重篤であり、生後二年目以内での発達不全、全身性筋緊張低下、心肥大、および心呼吸系不全を特徴とする。若年型ポンペ病(II型またはB型)は重篤度が中程度であり、心臓肥大を伴わない筋肉症状の優勢を特徴とする。若年型ポンペ病の個体は、通常、呼吸不全により、通常、20歳になる前に死亡する。成人型ポンペ病(III型またはC型)は、ゆっくりと進行する筋障害として、10代にまたは60歳と年を取ってから現われることが多い。Felice et al., Medicine 74:131-135,1995。] [0068] ポンペ病では、α-グルコシダーゼは、グリコシル化、リン酸化、およびタンパク質分解プロセシングによって広範囲に翻訳後修飾されることが示されている。最適なグリコーゲン触媒作用には、リソソーム内でのタンパク質分解によって110キロダルトン(kDa)前駆体から76kDaおよび70kDa成熟型に変換されることが必要である。] [0069] α-1アンチトリプシン関連気腫は、白人集団において最もよく見られる遺伝性疾患の1つである。最もよく見られる症状は肺疾患(気腫)である。α-1アンチトリプシン疾患にかかっている人は肝臓疾患および/または肝臓癌も発症する可能性がある。この疾患は、タンパク質α-1アンチトリプシンの欠損によって引き起こされる。肺疾患の発症は、有害環境、例えば、喫煙タバコへの曝露によって促進される。α-1アンチトリプシン疾患には遺伝的要素がある。発症年齢、進行速度、および症状のタイプは家族間および家族内で異なる。] [0070] フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)は、身体のある特定の部分の異常な腫瘍成長(血管腫症)を特徴とする、まれな遺伝性の多系統性障害である。中枢神経系(CNS)の腫瘍は良性であり、血管の集まり(血管芽腫)からなる。血管芽腫は、脳、目の網膜、および神経系の他の領域において発症することがある。他のタイプの腫瘍が副腎、腎臓、または膵臓において発生する。VHLの個体はまた、ある特定のタイプの癌、特に、腎臓癌について正常より高いリスクがある。VHLの場合、タンパク質恒常性制御因子が酵素機能を間接的に回復することができる。機能喪失型疾患の治療を必要とする患者において機能喪失型疾患を治療する方法であって、タンパク質、例えば、酵素のアダプターとして役立つ、変異したVHLタンパク質(pVHL)の活性を改善または回復させるのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を投与する工程を含む方法。pVHLのミスフォールディングは、ポリユビキチン化およびプロテアソーム分解のために酵素が低酸素誘導性転写因子(HIF)を標的とする能力を損なわせ、癌を引き起こす。タンパク質恒常性制御因子は酵素機能を間接的に回復させて、VHL病などの疾患を治療することができる。] [0071] 遺伝性痙性対麻痺(HSPs)は進行性の下肢痙縮および脱力を特徴とする。大きなグアノシン三リン酸分解酵素であるアトラスチン(atlastin)酵素をコードするSPG3A遺伝子における変異が、常染色体優性遺伝性痙性対麻痺の2番目に最もよく見られる原因である。70人の遺伝性痙性対麻痺被験者からなる大規模なSPG3Aスクリーニングにおいて、新規のインフレーム欠失、p.del436Nが同定された。この欠失を特徴付けることによって、アトラスチンのグアノシン三リン酸分解酵素活性も、アトラスチンとスパスチン(spastin)との相互作用も影響を受けないことが分かった。興味深いことに、罹患患者からのリンパ芽球のイムノブロット分析から、アトラスチンタンパク質レベルがかなり低いことが証明され、このことは機能喪失型疾患機構を裏付けている。Annals of Neurology 61(6): 599-603, 2007。] [0072] マリネスコ・シェーグレン症候群の基礎となる遺伝子が同定されている。マリネスコ・シェーグレン症候群は、小脳性失調、進行性筋障害、および白内障を特徴とする。SIL1に4つの予想された疾患関連機能喪失型変異があることが同定された。SIL1は、熱ショックタンパク質70(HSP70)シャペロンHSPA5のヌクレオチド交換因子酵素をコードする。これらのデータは、Sil1およびHspa5の類似する空間的および時間的組織発現パターンと共に、SIL1-HSPA5相互作用およびタンパク質フォールディングの妨害がマリネスコ・シェーグレン症候群における主な病理であることを示唆している。Nature Genetics 37(12):1309-1311, 2005。] [0073] 常染色体優性肥大性心筋症(HCM)は、筋節タンパク質の遺伝性欠陥によって引き起こされる。筋節タンパク質欠陥がホモ接合になることで劣性HCMが引き起こされるという仮説が試験された。3人の同胞において中腔(mid-cavitary)肥大および拘束性生理現象を特徴とする早期発症型心筋症が認められた家系を試験した。常染色体優性HCMの8つの遺伝子にわたるDNAマーカーのジェノタイピングによって、罹患した小児による必須のミオシン軽鎖遺伝子座において同一の父親ハプロタイプおよび母親ハプロタイプが遺伝していることが明らかになった。配列決定によって、これらの個体は、高度に保存されたアミノ酸のGlul43Lys置換がホモであり、この置換は150人の対照には存在しないことが分かった。Glul43Lys対立遺伝子を1つ有する家族には、晩年でも心エコー図およびECGが正常であったが、変異体対立遺伝子を2つ有する家族は小児期に重篤な心筋症を発症した。これらの知見は、心臓におけるミオシン軽鎖構造および機能の以前の研究と合わせると、機能喪失型疾患機構を示唆している。同じ筋節タンパク質に影響を及ぼす別個の変異によって、優性または劣性の心筋症が引き起こされることがある。高度に保存されたアミノ酸の静電荷逆転は、心臓の構造および機能を保存する代償機構の結果としてヘテロ接合体の状態では良性の場合がある。対照的に、筋節タンパク質欠陥のホモ接合体保因者は悪性経過を有する場合がある。Circulation 105(20):2337-2340, 2002。] [0074] 機能獲得型疾患 「機能獲得型疾患」とは、高い凝集関連タンパク質毒性を特徴とする疾患を指す。これらの疾患において、細胞内および/または細胞外での排除より凝集が上回っている。機能獲得型疾患は加齢に関連することが多く、「毒性機能獲得」疾患とも呼ばれる。1つの態様において、本発明は、機能獲得型疾患を治療する方法を必要とする患者において機能獲得型疾患を治療する方法であって、タンパク質の凝集を減らすのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。さらなる態様において、タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質の正しいフォールディングを促進することによって、凝集経路を阻害することによって、またはディスアグリガーゼの活性を刺激することによって、タンパク質の凝集を減らす。さらなる態様において、タンパク質恒常性制御因子は、細胞傷害性を少なくするやり方で凝集に影響を及ぼす。] [0075] 機能獲得型疾患には、タンパク質内にあるポリグルタミン反復または他のアミノ酸、例えば、アラニンにある反復の凝集に関連する神経変性疾患、レヴィー小体疾患、およびα-シヌクレイン凝集に関連する他の障害、筋萎縮性側索硬化症、トランスサイレチン関連凝集疾患、アルツハイマー病、年齢関連黄斑変性、封入体筋炎、ならびにプリオン病が含まれるが、これに限定されない。ポリグルタミン凝集に関連する神経変性疾患には、ハンチントン舞踏病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および淡蒼球ルイ体萎縮症、いくつかの種類の脊髄小脳失調症、ならびに脊髄性筋萎縮症および延髄性筋萎縮症が含まれるが、これに限定されない。アルツハイマー病は、2つのタイプの凝集物:Aβペプチドの細胞内凝集物および細胞外凝集物と微小管関連タンパク質tauの細胞内凝集物の形成を特徴とする。トランスサイレチン関連凝集疾患には、例えば、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドニューロパシー、および家族性アミロイド心筋症が含まれる。レヴィー小体疾患はα-シヌクレインタンパク質の凝集を特徴とし、例えば、パーキンソン病を含む。プリオン病(伝達性海綿状脳症とも知られる)はプリオンタンパク質の凝集を特徴とする。例示的なヒトプリオン病は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールーである。] [0076] Gタンパク質およびシグナル伝達の分子障害は、機能獲得型疾患または機能喪失型疾患の原因となることがある。機能獲得型疾患は、GTPアーゼ活性の抑制によるGαの反応亢進によって引き起こされる。αs遺伝子(gsp)およびαi(gip2)の変異によって内分泌腫瘍が発生し、gspの異常発現によってマッキューン・オールブライト症候群および成長ホルモン分泌下垂体腺腫が発生する。AS変異、すなわち、αsのAla366→Ser(αs-A366S)による機能獲得型疾患および機能喪失型疾患は、精巣中毒症、およびオールブライト遺伝性骨形成異常を伴う偽性副甲状腺機能低下症Ia型を示す。αs-A366Sはドミナントポジティブ効果およびドミナントネガティブ効果を示す。αs-A366Sは受容体によるGs活性化を模倣し、温度感受性の特徴を示す。αsの様々な様式の機能喪失が特定されており、ドミナントネガティブ効果機構につながる。JikkenIgaku 14(2): 219-224, 1996。] [0077] RNA干渉法およびDNA干渉法 A.短鎖干渉RNA(RNAi) RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される転写後遺伝子サイレンシング機構であり、アンチセンスおよびリボザイムをベースとするアプローチとは別個のものである。Jain, Pharmacogenomics 5: 239-42, 2004。RNA干渉は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与することによって、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法において有用である。dsRNA分子は、最初に、DICERと呼ばれるRNアーゼIII様酵素によりプロセシングされて、2つの21nt鎖からなるさらに小さなdsRNA分子にされた後に、様々なタイプの細胞においてmRNAの配列特異的分解を誘導すると考えられている。これらの鎖はそれぞれ5'リン酸基および3'ヒドロキシルを有し、他方の鎖と正確に相補する19nt領域を含み、その結果、2nt-3'オーバーハングに隣接する19nt二重鎖領域がある。Bernstein et al., Nature 409: 363, 2001。このように、RNAiは短鎖干渉RNA(siRNA)によって媒介され、siRNAは、典型的には、それぞれの鎖に、長さが約19ヌクレオチドの二本鎖領域と1〜2ヌクレオチドの3'オーバーハングを含み、その結果、全長が約21〜23ヌクレオチドとなる。哺乳動物細胞において、約30ヌクレオチドより長いdsRNAは、典型的には、インターフェロン応答を介して非特異的mRNA分解を誘導する。しかしながら、哺乳動物細胞にsiRNAが存在すると、インターフェロン応答が誘導されるのではなく、配列特異的遺伝子サイレンシングが起こる。] [0078] 一般的に、短鎖干渉RNA(siRNA)は、好ましくは、約19塩基対長のRNA二重鎖を含み、任意で、1つまたは2つの一本鎖オーバーハングまたはループをさらに含む。siRNAは、一緒にハイブリダイズした2本のRNA鎖を含んでもよく、自己ハイブリダイズ部分を含む1本のRNA鎖を含んでもよい。siRNAは、1つまたは複数の遊離鎖末端を含んでもよく、リン酸基および/またはヒドロキシル基を含んでもよい。siRNAは、典型的には、標的転写物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする部分を含む。siRNAの一方の鎖(またはsiRNAの自己ハイブリダイズ部分)は、典型的には、標的転写物の一領域と正確に相補する。このことは、siRNAが、ミスマッチが1つもなく標的転写物にハイブリダイズすることを意味する。完全な相補性が実現しない本発明のある特定の態様では、一般的に、siRNA末端に、またはsiRNA末端の近くにミスマッチが位置することが好ましい。] [0079] siRNAは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、もしくはマイクロインジェクションなどの方法によって哺乳動物細胞に導入された時に、または任意の様々なプラスミドをベースとするアプローチによって細胞内で発現された時に、遺伝子の発現をダウンレギュレートすることが示されている。siRNAを用いたRNA干渉は、例えば、Tuschl, Nat. Biotechnol. 20: 446-448, 2002において概説されている。Yu, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci, 99: 6047-6052, 2002; Sui, et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA. 99: 5515-5520, 2002; Paddison, et al., Genes and Dev. 16: 948-958, 2002; Brummelkamp, et al., Science 296: 550-553, 2002; Miyagashi, et al., Nat. Biotech. 20: 497-500, 2002; Paul, et al., Nat. Biotech. 20: 505-508, 2002も参照されたい。これらのおよび他の参考文献に記載のように、siRNAは、2本の個々の核酸鎖、またはヘアピン(ステム-ループ)構造を形成することができる自己相補領域を有する1本の鎖からなってもよい。構造、長さ、ミスマッチの数、ループの大きさ、オーバーハングにおけるヌクレオチドの同一性などの多くのばらつきが、siRNAにより誘発される有効な遺伝子サイレンシングと一致する。どの理論にも理論に拘束されるつもりはないが、様々な異なる前駆体が細胞内プロセシング(例えば、DICERにより細胞内プロセシング)されると、遺伝子サイレンシングを効果的に媒介することができるsiRNAが生成されると考えられている。一般的に、イントロンではなくエキソンを標的化することが好ましく、標的転写物の3'部分の中の領域に相補的な配列を選択することも好ましい場合がある。一般的に、ほぼ等モル比の異なるヌクレオチドを含有する配列を選択し、1種類の残基が複数回繰り返される領域を避けることが好ましい。] [0080] 従って、siRNAは、それぞれの鎖に、長さが約19ヌクレオチドの二本鎖領域と1〜2ヌクレオチドの3'オーバーハングを有し、その結果、全長が約21〜23ヌクレオチドとなるRNAを含んでもよい。本明細書で使用するように、siRNAは、インビボでプロセシングされて、このような分子を生じ得る様々なRNA構造も含む。このような構造は、互いにハイブリダイズしてステムを形成する2つの相補要素、ループ、任意で、オーバーハング、好ましくは、3'オーバーハングを含有するRNA鎖を含む。好ましくは、ステムは約19bp長であり、ループは、約1〜20、より好ましくは約4〜10、最も好ましくは約6〜8nt長であり、および/またはオーバーハングは、約1〜20、より好ましくは約2〜15nt長である。本発明のある特定の態様において、ステムは長さが最小で19ヌクレオチドであり、長さが約29ヌクレオチドまででもよい。4ヌクレオチドまたはそれ以上からなるループは、さらに短いループより立体的制約を受ける可能性が低く、従って、好ましい場合がある。オーバーハングは5'リン酸および3'ヒドロキシルを含んでもよい。オーバーハングは複数のU残基、例えば、1〜5個のU残基を含んでもよいが、これを含む必要はない。前記の古典的なsiRNAは、標的とされたmRNAの分解を誘発し、それによって、タンパク質合成速度も遅くする。古典的経路を介して作用するsiRNAに加えて、テンプレート転写物の3'UTRに結合するある特定のsiRNAは、古典的なRNA干渉に関連するが、別個の機構によって、例えば、転写物の安定性を弱めるのではなく転写物の翻訳を少なくすることによって、テンプレート転写物によってコードされるタンパク質の発現を阻害してもよい。このようなRNAはミクロRNA(mRNA)とも呼ばれ、典型的には、長さが約20〜26ヌクレオチド、例えば、長さが22ntである。これらは、小分子RNA(stRNA)またはmRNA前駆体として知られる、さらに大きな前駆体から得られると考えられている。これらの前駆体は、典型的には、約4〜15ntループを有する約70nt長である。Grishok, et al., Cell 106: 23-24, 2001; Hutvagner, et al., Science 293: 834-838, 2001; Ketting, et al., Genes Dev., 15: 2654-2659, 2001。このタイプの内因性RNAは、哺乳動物を含む多くの生物において同定されており、この転写後遺伝子サイレンシング機構が広範囲にあり得ることを示唆している。 Lagos-Quintana, et al., Science 294: 853-858, 2001; Pasquinelli, Trendsin Genetics 18: 171-173, 2002、および前述の2つの論文の中の参考文献。マイクロRNAは、哺乳動物細胞において、標的部位を含有する標的転写物の翻訳をブロックすることが示されている。Zeng, et al., Molecular Cell 9: 1-20, 2002。] [0081] siRNA、例えば、3'UTR(または標的転写物内の他の場所)に結合し、翻訳を阻害する天然または人工の(すなわち、ヒトによって設計された)mRNAは、siRNA/テンプレート二重鎖の多数のミスマッチ、特に、二重鎖の中心領域内のミスマッチを許容することができる。実際に、天然のstRNAは、インビトロで翻訳を阻害すると示されているmRNAと同様に、このようなミスマッチを頻繁に示すので、いくらかのミスマッチが望ましいまたは必要とされる可能性があるという証拠がある。このようなsiRNAは、例えば、標的転写物とハイブリダイズする時、ミスマッチ領域で分けられた完全に相補する2つの領域を頻繁に含む。様々な構造が可能である。例えば、mRNAは複数の非同一性領域(ミスマッチ)を含むことがある。標的およびmRNAが両方とも不対ヌクレオチドを含むという点で、非同一性領域(ミスマッチ)は対称になる必要はない。典型的には、完全に相補する領域は長さが少なくとも5ヌクレオチド、例えば、長さが6、7、またはそれ以上のヌクレオチドであるのに対して、ミスマッチ領域は、例えば、長さが1、2、3、または4ヌクレオチドでもよい。] [0082] siRNAおよびmRNA前駆体を模倣するように設計されたヘアピン構造は細胞内でプロセシングされて、標的転写物の発現を下げるまたは阻害することができる分子になる。McManus, et al., RNA 8: 842-850, 2002。これらのヘアピン構造は、19bp二重鎖構造を形成する2本のRNA鎖からなる古典的なsiRNAをベースとしており、クラスIまたはクラスIIヘアピンとして分類される。クラスIヘアピンは、アンチセンスsiRNA鎖(すなわち、阻害が望ましい標的転写物に相補的な鎖)の5'末端または3'末端のいずれかにループを組み込んでいるが、他の点では古典的なsiRNAと同一である。クラスIIヘアピンは、ステムにある1つまたは複数のヌクレオチドミスマッチに加えて、19nt二重鎖領域および二重鎖のアンチセンス鎖の5'末端または3'末端にループを含む点でmRNA前駆体に似ている。これらの分子は細胞内でプロセシングされて、サイレンシングを媒介することができる小さなRNA二重鎖構造になる。これらは、天然のmRNAおよびstRNAの場合と同様に考えられているように、翻訳抑制ではなく標的mRNAの分解によってその効果を発揮するように見える。] [0083] 従って、二重鎖構造を含有するRNA分子の多様なセットが様々な機構によってサイレンシングを媒介できることは明らかである。本発明の目的のために、分解の誘発によるものでも、翻訳の阻害によるものでも、他の手段によるものでも、標的転写物に結合し、その発現を低下させる、任意のこのようなRNA、このようなRNAの一部は、siRNAと見なされ、このようなsiRNAを生じる(すなわち、RNAに対する前駆体として役立つ)任意の構造が本発明の実施において有用である。] [0084] 本発明の状況において、siRNAは、治療目的に、例えば、タンパク質ホメオスタシスの改善または回復を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させるのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子として作用させるために有用であり、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための化合物を同定するための様々な本発明の方法に有用である。好ましい態様において、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症の場合は、抗体、アンチセンスベクター、または二本鎖RNAベクターを用いた治療的処置が有用であり、機能獲得型障害の場合は、抗体、アンチセンスベクター、または二本鎖RNAベクターを用いた治療的処置が有用である。] [0085] 従って、本発明は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法を提供する。前記方法は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量の、siRNAであるタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む。タンパク質恒常性制御因子は、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートすることができる。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは細胞を含み、接触させる工程は、細胞内でsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは、被験体、例えば、哺乳動物被験体、例えば、マウスまたはヒトを含み、接触させる工程は、被験体にsiRNAを投与する工程を含むか、または被験体においてsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、siRNAは、誘導により、および/または細胞タイプ特異的もしくは組織特異的に発現される。] [0086] 「生物システム」とは、生体分子(例えば、核酸、ポリペプチド、多糖、脂質など)などが入っている任意の入れ物、くぼみ、または容器;細胞または細胞の集団;組織;臓器;生物などを意味する。典型的には、生物システムは細胞または細胞の集団であるが、精製タンパク質または組換えタンパク質を用いて入れ物の中で前記方法を実施することもできる。] [0087] 本発明は、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートする遺伝子または遺伝子産物に標的化されたsiRNA分子を提供する。特に、本発明は、このような転写物の多型変種をコードする転写物に選択的または特異的に標的化されたsiRNA分子を提供する。ここで、被験体における多型変種の存在は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態に対する感受性またはその存在を示す。この状況において、「選択的に」または「に特異的に標的化された」という用語は、siRNAが、変種の発現を、他の変種(すなわち、被験体に存在しても、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、または機能獲得型障害に対する感受性またはその存在を示さない変種)の発現より大きく減らすことを示すことが意図される。siRNAまたはsiRNAの集まりは、適宜、さらなる成分と共にキットに形で提供されてもよい。] [0088] B.ショートヘアピンRNA(shRNA) RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される転写後遺伝子サイレンシング機構であり、ストリンジェントな条件下で標的遺伝子にハイブリダイズして、標的遺伝子の発現を弱める核酸分子(例えば、dsRNA)を投与することによって、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法において有用である。RNAiおよびsiRNAの総説については、Jain, Pharmacogenomics 5: 239-42, 2004を参照されたい。本発明におけるさらなるRNA干渉方法は、ショートヘアピンRNA(shRNA)の使用である。トランスフェクションまたはウイルスを介した感染によって、特定の望ましいsiRNA配列をコードするDNA配列を含有するプラスミドが標的細胞に送達される。細胞内に送達されたら、DNA配列は、それ自体でループになり、分子内塩基対合によってヘアピン構造を形成するRNA分子に連続して転写される。これらのヘアピン構造は細胞によってプロセシングされると、転写されたsiRNA分子と同等のものになり、望ましいタンパク質のRNAiを媒介するために細胞によって用いられる。shRNAはタンパク質発現を安定して長期間阻害することができるので、shRNAの使用にはsiRNAトランスフェクションを上回る利点がある。転写siRNAによるタンパク質発現の阻害は、数日より長く起こらない一過的な現象である。場合によっては、これが好ましくかつ望ましい場合がある。これより長い期間のタンパク質阻害が必要な場合、shRNAによって媒介される阻害が好ましい。] [0089] C.完全長および部分長のアンチセンスRNA転写物 アンチセンスRNA転写物は、同じ細胞内で他の任意のRNA転写物の一部または全てに相補的な塩基配列を有する。このような転写物は、RNAスプライシングの調節、RNA輸送の調節、およびmRNA翻訳の調節を含む様々な機構を介して遺伝子発現を調節することが示されている。Denhardt, Ann N Y Acad. Sci 660: 70, 1992; Nellen, TrendsBiochem. Sci 18: 419, 1993; Baker et al., Biochim. Biophys. Acta, 1489: 3, 1999; Xu, et al., Gene Therapy 7: 438, 2000; French et al., Curr. Opin. Microbiol. 3: 159, 2000; Terryn et al., Trends Plant Sci. 5: 1360, 2000。] [0090] D.アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド アンチセンス核酸は、一般的に、標的核酸(例えば、mRNA転写物)の一部に相補的であり、従って、標的に結合して二重鎖を形成することができる一本鎖核酸(DNA、RNA、改変されたDNA、または改変されたRNA)である。典型的には、アンチセンス核酸は、長さが15〜35ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであるが、長さが10〜約50までのヌクレオチドでもよい。結合は、典型的には、標的核酸の機能を軽減または阻害する。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに結合した時には転写をブロックしてもよく、mRNAに結合した時には翻訳を阻害してもよく、および/または核酸を分解してもよい。タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための標的ポリペプチドの発現の低下は、ポリペプチドをコードするmRNAの配列に相補的な配列を含むアンチセンス核酸またはペプチド核酸を投与することによって達成することができる。アンチセンス技術およびその用途は当技術分野において周知であり、Phillips, M. I. (ed.) Antisense Technology, MethodsEnzymol., 2000, Volumes 313 and 314, Academic Press, San Diego、およびこの中で言及された参考文献に記載されている。Crooke, S. (ed.)「ANTISENSE DRUG TECHNOLOGY: PRINCIPLES, STRATEGIES, ANDAPPLICATIONS」(1st Edition) Marcel Dekker、およびこの中で引用された参考文献も参照されたい。] [0091] アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞内の任意のRNA転写物の一部に相補的な塩基配列を用いて合成することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAスプライシングの調節、RNA輸送の調節、およびmRNA翻訳の調節を含む様々な機構を介して遺伝子発現を調節することができる(Denhardt, 1992)。安定性、毒性、組織分布、ならびに細胞取り込みおよび結合親和性を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドの様々な特性は、(i)ホスホジエステルバックボーンの置換(例えば、ペプチド核酸、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、およびホスホルアミダートオリゴヌクレオチド)、(ii)糖ベースの改変(例えば、2'-O-プロピルリボースおよび2'-メトキシエトキシリボース)、ならびに(iii)ヌクレオシドの改変(例えば、C-5プロピニルU、C-5チアゾールU、およびフェノキサジンC)を含む化学的改変によって変えることができる。Wagner, Nat. Medicine 1: 1116, 1995; Varga, et al., Immun. Lett. 69: 217, 1999; Neilsen, Curr. Opin. Biotech. 10: 71, 1999; Woolf, Nucleic AcidsRes. 18: 1763, 1990。] [0092] 従って、本発明は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法を提供する。この方法は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含み、タンパク質恒常性制御因子はアンチセンス分子である。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは細胞を含み、接触させる工程は、細胞内でsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは、被験体、例えば、哺乳動物被験体、例えば、マウスまたはヒトを含み、接触させる工程は、siRNAを被験体に投与する工程を含むか、被験体においてsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、siRNAは、誘導により、および/または細胞タイプ特異的もしくは組織特異的に発現される。] [0093] E.リボザイム リボザイムまたはデオキシリボザイムと呼ばれるある特定の核酸分子は、RNA分子の配列特異的切断を触媒することが示されている。切断部位は、RNA酵素またはDNA酵素の中にあるヌクレオチドと標的RNAの中にあるヌクレオチドとの相補対によって決まる。従って、任意のRNA分子を切断し、それによって、その分解速度を速めるように、RNA酵素およびDNA酵素を設計することができる。Cotten et al.,EMBO J. 8: 3861-3866, 1989; Usman et al., Nucl. AcidsMol. Biol. 10: 243, 1996; Usman, et al., Curr. Opin. Struct. Biol. 1: 527, 1996; Sun, et al., Pharmacol. Rev., 52: 325, 2000。例えば、 Cotten et al., EMBO J. 8: 3861-3866, 1989も参照されたい。] [0094] 従って、本発明は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法を提供する。この方法は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含み、タンパク質恒常性制御因子はアンチセンス分子である。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは細胞を含み、接触させる工程は、細胞内でsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、生物システムは、被験体、例えば、哺乳動物被験体、例えば、マウスまたはヒトを含み、接触させる工程は、siRNAを被験体に投与する工程を含むか、被験体においてsiRNAを発現させる工程を含む。本発明のある特定の態様によれば、siRNAは、誘導により、および/または細胞タイプ特異的もしくは組織特異的に発現される。] [0095] タンパク質恒常性制御因子のハイスループットアッセイ 熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートすることができるタンパク質恒常性制御因子として試験される化合物は、任意の有機低分子または生物学的実体、例えば、タンパク質、例えば、抗体もしくはペプチド、糖、核酸、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、またはリボザイム、または脂質でよい。典型的には、試験化合物は、有機低分子、ペプチド、脂質、および脂質類似体である。] [0096] タンパク質恒常性制御因子のハイスループットアッセイのために、細胞をベースとするアッセイを使用することができる。患者由来細胞を使用すると、患者由来細胞の機能喪失を治す化合物をスクリーニングすることによって(タンパク質の機能を測定することによって)、または患者由来細胞の機能獲得を治す化合物をスクリーニングすることによって(タンパク質毒性の寛解もしくは凝集の低下を評価することによって)タンパク質恒常性制御因子について化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。] [0097] 本発明のアッセイにおける潜在的なモジュレーターまたはリガンドとして、本質的に全ての化合物を使用することができるが、ほとんどの場合、水溶液または有機溶液(特に、DMSOをベースとする溶液)に溶解することができる化合物が用いられる。アッセイは、アッセイ段階を自動化し、任意の便利な供給源に由来する化合物をアッセイに供給することによって、大きな化合物ライブラリーをスクリーニングするように設計され、アッセイは典型的には並列処理される(例えば、ロボットアッセイではマイクロタイター形式でマイクロタイタープレート上で行われる)。Sigma(St. Louis, MO)、Aldrich(St. Louis, MO)、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika(Buchs, Switzerland)などを含む、多くの化合物供給業者がいることが理解されるだろう。] [0098] 1つの好ましい態様において、ハイスループットスクリーニング方法は、多数の潜在的な治療用化合物(潜在的なモジュレーターまたはリガンド化合物)を含有するコンビナトリアル有機低分子またはペプチドライブラリーの準備を伴う。次いで、このような「コンビナトリアル化合物ライブラリー」または「リガンドライブラリー」は、望ましい特徴的な活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定するために、本明細書に記載の1つまたは複数のアッセイにおいてスクリーニングされる。このように同定された化合物は従来の「リード化合物」として役立ってもよく、それ自体が潜在的なまたは実際の治療剤として用いられてもよい。] [0099] コンビナトリアルライブラリーとは、多数の化学的「基本単位」、例えば、試薬を組み合わせることによって、化学合成または生物学的合成によって生成された多様な化合物の集まりである。例えば、直線状コンビナトリアル化合物ライブラリー、例えば、ポリペプチドライブラリーは、一組の化学的基本単位(アミノ酸)を、ある特定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について、あらゆる可能なやり方で組み合わせることによって形成される。化学的基本単位のこのようなコンビナトリアル混合を介して、何百万個もの化合物を合成することができる。] [0100] コンビナトリアル化合物ライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化合物ライブラリーには、ペプチドライブラリーが含まれるが、これに限定されない。米国特許第5,010,175号, Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37: 487-493, 1991、およびHoughton et al., Nature 354: 84-88, 1991。化学多様性ライブラリーを作製する他の化学も使用することができる。このような化学には、ペプトイド(例えば、PCT国際公開公報第91/19735号)、コードペプチド(例えば、PCT国際公開公報第93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT国際公開公報第92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ダイバーソーマー(diversomer)、例えば、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチド(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci USA 90: 6909-6913, 1993)、ビニロガス(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568, 1992)、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチドミメティック(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217-9218, 1992)、低分子化合物ライブラリーの類似有機合成(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661, 1994)、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 261: 1303, 1993)、ならびに/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59: 658, 1994)、核酸ライブラリー(Ausubel、Berger、およびSambrook、全て前記を参照されたい)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照されたい)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al., Nature Biotechnology, 14: 309-314, 1996およびPCT/US96/10287を参照されたい)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al., Science 274: 1520-1522, 1996および米国特許第5,593,853号を参照されたい)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン, Baum C&EN, Jan 18, page 33 (1993);イソプレノイド, 米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン, 米国特許第5,549,974号;ピロリジン, 米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物, 米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン, 米国特許第5,288,514号を参照されたい)が含まれるが、これに限定されない。] [0101] コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置は市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, FosterCity, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照されたい)。さらに、非常に多くのコンビナトリアルライブラリーそのものが市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, MO, ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。] [0102] 候補化合物は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、または機能獲得型障害を含むが、これに限定されない障害を治療するための薬物を同定する戦略の一部として有用である。熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、Ca2+シグナル伝達経路、および/または寿命経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートするタンパク質恒常性制御因子として作用する試験化合物が候補化合物と見なされる。] [0103] 熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/もしくはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートするタンパク質恒常性制御因子として作用する候補化合物または試験化合物を同定するためのスクリーニングアッセイも本発明に含まれる。試験化合物は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス指定可能な平行固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリー法を含むが、これに限定されない当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における非常に多くの任意のアプローチを用いて入手することができる。生物学的ライブラリーアプローチは、例えば、ペプチドライブラリーに使用することができるのに対して、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または低分子の化合物ライブラリーに適用することができる。Lam, Anticancer Drug Des. 12: 145, 1997。分子ライブラリーを合成する方法の例は、当技術分野において、例えば、DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909, 1993; Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422, 1994; Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37: 2678, 1994; Cho et al., Science 261: 1303, 1993; Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059, 1994; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061, 1994;およびGallop et al., J. Med. Chem. 37: 1233, 1994において見つけることができる。一部の態様において、試験化合物は、タンパク質恒常性制御因子の変種を活性化する。] [0104] 化合物ライブラリーは溶解状態にあってもよく(例えば、Houghten, Bio/Techniques 13: 412-421, 1992)、ビーズ(Lam, Nature 354: 82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364: 555-556, 1993)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、同第5,403,484号、および同第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-1869, 1992)、またはファージ(Scott et al., Science 249: 386-390, 1990; Devlin, Science 249: 404-406, 1990;Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-6382, 1990;およびFelici, J. Mol Biol. 222 301-310, 1991)に付着してもよい。] [0105] 試験化合物が、タンパク質恒常性制御因子またはその生物学的に活性な部分として、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達の活性を調節する能力は、例えば、試験化合物の存在下で細胞における生物学的凝集または脱凝集の阻害または活性化をモニタリングすることによって確かめることができる。タンパク質恒常性制御因子またはその生物学的に活性な部分としての活性の調節は、細胞における生物学的凝集または脱凝集を測定することによって確かめることができる。結合アッセイは細胞をベースとしてもよく、無細胞でもよい。] [0106] 試験化合物が、細胞における熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートするタンパク質恒常性制御因子として作用する能力は、直接結合を確かめるための本明細書に記載の方法または当技術分野において公知の方法の1つによって確かめることができる。1つの態様において、タンパク質恒常性制御因子が、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/もしくはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達のアップレギュレーションに関与する遺伝子もしくは遺伝子産物に結合する能力、またはこれらと相互作用する能力を確かめることができる。このアッセイは凝集アッセイでもよく脱凝集アッセイでもよい。一般的に、このようなアッセイは、試験化合物が、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達のアップレギュレーションに影響を及ぼす能力を確かめるために用いられる。] [0107] 一般的に、試験化合物が細胞の凝集活性または脱凝集活性に影響を及ぼす能力は、試験化合物の非存在下で凝集活性または脱凝集活性が求められる対照と比較される。場合によっては、あらかじめ決められた参照値が用いられる。このような参照値は対照に相関して求めることができ、この場合、参照とは異なる試験試料は、化合物が関心対象の分子に結合することを示すか、または発現を調節する、例えば、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達を調節する、活性化する、もしくは阻害することを示す。参照値はまた、標準を用いて観察されたタンパク質恒常性制御因子による凝集または脱凝集の量(例えば、抗体の親和性または凝集活性もしくは脱凝集活性の調節)を反映してもよい。この場合、参照と類似する(例えば、参照と等しいまたは参照より少ない)試験化合物は、化合物が候補化合物であることを示す(例えば、参照抗体と等しい程度または参照抗体より大きな程度まで凝集活性または脱凝集活性を示す)。] [0108] さらに、本発明は、前記のスクリーニングアッセイによって同定された新規の薬剤および本明細書に記載のように治療するためのその使用に関する。] [0109] 1つの態様において、本発明は、タンパク質恒常性制御因子、または熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/もしくはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達のためにアップレギュレートされる、天然または組換えの遺伝子または遺伝子産物を発現する細胞もしくは組織を用いた可溶性アッセイを提供する。別の態様において、本発明は、ハイスループット形式での、固相をベースとするインビトロアッセイを提供する。このアッセイでは、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達のためにアップレギュレートされる遺伝子または遺伝子産物は、共有結合相互作用または非共有結合相互作用を介して固相基板に取り付けられる。本明細書に記載のアッセイのいずれか1つをハイスループットスクリーニング用に合わせることができる。] [0110] 液体または固体の本発明のハイスループットアッセイでは、数千種類までのモジュレーターまたはリガンドを1日でスクリーニングすることができる。この方法は、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介したシグナル伝達のためにアップレギュレートされる遺伝子または遺伝子産物をアッセイするために使用することができる。特に、選択された潜在的なモジュレーターに対して別々のアッセイを行うために、マイクロタイタープレートの各ウェルが用いられてもよく、濃度またはインキュベーション時間の影響を観察しようとするのであれば、5〜10ウェルごとに1種類のモジュレーターを試験してもよい。従って、標準的なマイクロタイタープレートが1個だけあれば、約100(例えば、96)種類のモジュレーターをアッセイすることができる。1536ウェルプレートを使用すれば、1個のプレートだけで、約100〜約1500種類の化合物から容易にアッセイを行うことができる。1日に多数のプレートをアッセイすることができる。本発明の統合されたシステムを用いれば、約6,000種類、20,000種類、50,000種類まで、または100,000種類を超える化合物のアッセイスクリーニングを行うことができる。] [0111] 固体反応の場合、融合タンパク質の一部として、関心対象のタンパク質もしくはその断片、例えば、細胞外ドメイン、または関心対象のタンパク質もしくはその断片を含む細胞もしくは膜は、固体成分に直接的にまたは間接的に、共有結合または非共有結合、例えば、タグを介して結合させることができる。タグは様々な成分の中のいずれでもよい。一般的に、タグに結合する分子(タグ結合剤)が固体支持体に固定され、タグがつけられた関心対象の分子は、タグおよびタグ結合剤の相互作用によって固体支持体に取り付けられる。] [0112] 文献においてよく説明されている公知の分子相互作用に基づいて、多くのタグおよびタグ結合剤を使用することができる。例えば、タグが、天然の結合剤、例えば、ビオチン、プロテインA、またはプロテインGを有する場合、適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域など)と共に使用することができる。天然の結合剤、例えば、ビオチンを有する分子に対する抗体もまた、広範囲に利用可能なかつ適切なタグ結合剤である。SIGMA Immunochemicals 1998 catalogue SIGMA, St. Louis MOを参照されたい。] [0113] 同様に、任意のハプテン化合物または抗原性化合物を適切な抗体と組み合わせて、タグ/タグ結合剤ペアを形成することができる。数千種類もの特異的抗体が市販されており、多くのさらなる抗体が文献において説明されている。例えば、一般的な構成の1つにおいて、タグは第1の抗体であり、タグ結合剤は、第1の抗体を認識する第2の抗体である。抗体-抗原相互作用に加えて、受容体-リガンド相互作用もまた、タグおよびタグ-結合剤ペア、例えば、細胞膜受容体(例えば、細胞受容体-リガンド相互作用、例えば、toll様受容体、トランスフェリン、c-kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなど。例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I, 1993を参照されたい)のアゴニストおよびアンタゴニストとして適している。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、アヘン剤、ステロイドなど)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンD;ペプチドを含む、様々な小さなリガンドの作用を媒介する)、薬物、レクチン、糖、核酸(線状ポリマーおよび環式ポリマーの構成)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質、ならびに抗体も全て様々な細胞受容体と相互作用することができる。] [0114] 合成ポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテートもまた適切なタグまたはタグ結合剤を形成することができる。他の多くのタグ/タグ結合剤ペアもまた、本開示を吟味すれば当業者に明らかなように、本明細書に記載のアッセイ系において有用である。] [0115] 一般的なリンカー、例えば、ペプチド、ポリエーテルなどもまたタグとして役立つことがあり、ポリペプチド配列、例えば、約5〜200アミノ酸からなるポリgly配列を含む。このような可撓性リンカーは当業者に公知である。例えば、ポリエチレングリコールリンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alabamaから入手可能である。これらのリンカーは、任意で、アミド結合、スルフヒドリル結合、ヘテロ官能基結合を有する。] [0116] タグ結合剤は、現在利用可能な様々な任意の方法を用いて固体基板に固定化される。固体基板は、一般的に、基板の全てまたは一部を、タグ結合剤の一部と反応する化学基を表面に固定する化学試薬に曝露することによって誘導体化または官能化される。例えば、さらに長い鎖の部分に取り付けるのに適した基には、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基が含まれるだろう。様々な表面、例えば、ガラス表面を官能化するために、アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランを使用することができる。このような固相生体高分子アレイの構築は文献においてよく説明されている。例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2154, 1963(固相合成、例えば、ペプチドの固相合成について述べている);Geysen et al., J. Immun. Meth. 102: 259-274, 1987(ピン上での固相成分合成について述べている);Frank & Doring, Tetrahedron 44: 6031-6040, 1988(セルロースディスク上での様々なペプチド配列の合成について述べている); Fodor et al., Science 251:767-777, 1991; Sheldon et al., Clinical Chemistry 39: 718-719, 1993;およびKozal et al., Nature Medicine 2: 753-759, 1996(全て、固体基板に固定化された生体高分子アレイについて述べている)を参照されたい。タグ結合剤を基板に固定化するための非化学的アプローチには、他の一般的な方法、例えば、加熱、UV照射による架橋結合などが含まれる。] [0117] 治療用途 本明細書に記載のタンパク質恒常性制御因子および本明細書に記載の方法によって同定されたタンパク質恒常性制御因子は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための様々な方法において使用することができる。従って、本発明は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、または機能獲得型障害に関連する疾患を治療するための組成物および方法を提供する。1つの態様において、組成物は、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートするタンパク質恒常性制御因子として作用する低分子化合物または生物学的因子、ならびに薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、組成物は、タンパク質シャペロンの転写もしくは翻訳をアップレギュレートすることによって、またはタンパク質シャペロンの分解を阻害することによって、タンパク質シャペロンを調節する低分子化合物または生物学的因子を含む。さらに別の局面において、組成物は、凝集経路またはディスアグリガーゼをアップレギュレートする低分子化合物または生物学的因子を含む。] [0118] 組成物は、単独で、または他の組成物と組み合わせて投与することができる。タンパク質恒常性制御因子組成物は、単独で、または他の組成物と組み合わせて投与することができる。1つの局面において、タンパク質恒常性制御因子は、治療しようとする疾患または状態に特異的な薬理学的シャペロン/キネティック安定剤と組み合わせて投与される。別の局面において、薬理学的シャペロン/キネティック安定剤は、治療しようとする疾患または状態に特異的なものである。治療しようとする疾患もしくは状態に特異的な薬理学的シャペロン/キネティック安定剤は、疾患または状態に関連する、および/またはホメオスタシスの機能不全に関連するタンパク質のフォールディングを安定化する薬理学的シャペロン/キネティック安定剤である。さらなる局面において、本発明は、タンパク質恒常性制御因子および薬理学的シャペロン/キネティック安定剤を含む組成物である。さらに別の局面において、本発明は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法であって、薬理学的シャペロン/キネティック安定剤と組み合わせてタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む方法に関する。ここで、この組み合わせは、タンパク質ホメオスタシスを回復させるのに十分な量で投与される。] [0119] さらなる局面において、本発明は、少なくとも2つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子の投与に関する。タンパク質恒常性制御因子は、それぞれが異なるもしくは別個のタンパク質のタンパク質ホメオスタシスを回復させる、および/または異なるタンパク質恒常性シグナル伝達経路を調節するのであれば機構的に別個のものである。例示的なシグナル伝達経路は、HSR、UPRおよびCa2+シグナル伝達経路である。下記の実施例に示される別の例では、2つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子はそれぞれ、2つの異なる変異糖脂質加水分解酵素であるグルコセレブロシダーゼおよびβ-ヘキソサミンAのフォールディング、輸送、および機能を部分的に回復させた。1つの局面において、1つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子が、他の少なくとも1つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子と共に投与される。さらに別の態様において、本発明は、UPRまたはCa2+シグナル伝達経路を調節するタンパク質恒常性制御因子と組み合わせて、HSRを調節するタンパク質恒常性制御因子の投与を含む。さらなる態様において、本発明は、HSRまたはCa2+シグナル伝達経路を調節するタンパク質恒常性制御因子と組み合わせて、UPRを調節するタンパク質恒常性制御因子の投与を含む。さらなる局面において、本発明は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法であって、少なくとも2つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子を、タンパク質ホメオスタシスを回復させるのに十分な量で患者に投与する工程を含む方法に関する。] [0120] 本発明はまた、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法であって、タンパク質ホメオスタシスを回復させるが、ウイルス感染に対する患者の感受性を高めない量でタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含む方法も含む。タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療する方法であって、タンパク質ホメオスタシスを回復させるが、腫瘍に対する患者の感受性を高めない量でタンパク質恒常性制御因子を前記患者に投与する工程を含む方法も本発明に含まれる。さらに別の態様において、タンパク質恒常性制御因子は、ウイルスタンパク質のフォールディングも細菌タンパク質の合成も増強しない。さらなる態様において、タンパク質恒常性制御因子は、腫瘍細胞のタンパク質フォールディングおよび輸送の能力を増強しない。] [0121] 本明細書に記載のタンパク質恒常性制御因子組成物は、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を予防または治療するための方法を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を予防または治療するための方法において使用することができる。タンパク質恒常性制御因子がどういったものであるかということは、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、および/またはCa2+シグナル伝達経路を介してシグナル伝達をアップレギュレートする因子として潜在的に臨床で使用するために特に重要である。従って、タンパク質恒常性制御因子、例えば、低分子化合物は、生存分子(survival molecule)として、並外れた安全性と最小限の副作用を有する。従って、タンパク質恒常性制御因子は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、または機能獲得型障害に関連する広範囲の疾患を治療するのに使用することができる。従って、タンパク質恒常性制御因子組成物は、疾患治療のための新しくかつより優れた治療選択肢を提供する。] [0122] 好ましくは、本発明の1つの局面において、タンパク質恒常性制御因子組成物を用いた治療は、治療を必要とする患者においてタンパク質ホメオスタシスを改善もしくは回復させるのに有効な量で、または患者において疾患を軽減もしくは排除するのに必要な量で有効量のタンパク質恒常性制御因子を投与することによるものでもよい。前記のように、疾患の軽減は、疾患に関連する1つまたは複数の症状の軽減または寛解を含む。さらに、本明細書において提供されるタンパク質恒常性制御因子組成物は、機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、または機能獲得型障害を軽減または排除するのに使用することができる。] [0123] 本発明は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させるのに有効な量でタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む、タンパク質ホメオスタシスの機能不全に関連する状態を治療する方法に関する。本発明の1つの局面において、状態は、グルコセレブロシダーゼ、ヘキソサミンA、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子、アスパルチルグルクサミニダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、システイン輸送体、酸性セラミダーゼ、酸性α-L-フコシダーゼ、保護タンパク質、カテプシンA、酸性β-グルコシダーゼ、酸性β-ガラクトシダーゼ、イズロン酸2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸性α-マンノシダーゼ、酸性β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、酸性β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、NPC-1、酸性α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミンB、ヘパランN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、α-ノイラミダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ヘキソサミンAおよび酸性リパーゼ、ポリグルタミン、α-シヌクレイン、Abペプチド、tauタンパク質、ならびにトランスサイレチンからなる群より選択されるタンパク質のホメオスタシスの機能不全に関連する。] [0124] 薬学的組成物 本発明の組成物および方法において有用なタンパク質恒常性制御因子組成物は、立体異性体、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和化合物、酸塩水和物、N-酸化物、もしくはその異種同形結晶型の形で、または治療有効量で、例えば、タンパク質恒常性の機能喪失型障害、例えば、リソソーム性蓄積症、もしくは機能獲得型障害を治療するのに有効な量で化合物と適切な担体もしくは賦形剤が混合された薬学的組成物の形で、ヒト患者自身に投与することができる。]
权利要求:
請求項1 タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を患者に投与する工程を含む、方法。 請求項2 タンパク質ホメオスタシスの機能不全が、タンパク質ミスフォールディングの結果である、請求項1記載の方法。 請求項3 タンパク質ホメオスタシスの機能不全が、タンパク質凝集の結果である、請求項1記載の方法。 請求項4 タンパク質ホメオスタシスの機能不全が、欠陥のあるタンパク質輸送の結果である、請求項1記載の方法。 請求項5 タンパク質ホメオスタシスの機能不全が、タンパク質分解の結果である、請求項1記載の方法。 請求項6 前記状態が機能喪失型障害である、請求項1記載の方法。 請求項7 前記状態がリソソーム性蓄積症である、請求項6記載の方法。 請求項8 前記状態が機能獲得型障害である、請求項1記載の方法。 請求項9 タンパク質恒常性制御因子が、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(unfolded protein response:UPR)経路、Ca2+シグナル伝達経路、またはそれらの組み合わせを介してシグナル伝達をアップレギュレートする、請求項1記載の方法。 請求項10 タンパク質恒常性制御因子が、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの転写または翻訳をアップレギュレートする、請求項6記載の方法。 請求項11 タンパク質恒常性制御因子が、1つまたは複数のタンパク質シャペロン、1つまたは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの分解を阻害する、請求項6記載の方法。 請求項12 タンパク質恒常性制御因子が凝集経路または脱凝集経路をアップレギュレートする、請求項7記載の方法。 請求項13 前記状態が、ゴーシェ病、α-マンノシドーシス、IIIA型ムコ多糖症、ファブリー病、テイ・サックス病、またはポンペ病である、請求項6記載の方法。 請求項14 機能喪失型障害が、変異リソソーム酵素に起因するリソソーム性蓄積症である、請求項6記載の方法。 請求項15 変異リソソーム酵素を交換するために、正常活性を有するリソソーム酵素をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。 請求項16 前記状態が、封入体筋炎、加齢黄斑変性、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病である、請求項8記載の方法。 請求項17 タンパク質恒常性制御因子が、化学小分子、タンパク質、アンチセンス核酸、ショートヘアピンRNA、短鎖干渉RNA、またはリボザイムである、請求項1記載の方法。 請求項18 タンパク質恒常性制御因子が、ウイルス感染に対する患者の感受性を高めない量で投与される、請求項1記載の方法。 請求項19 タンパク質恒常性制御因子が、癌に対する患者の感受性を高めない量で投与される、請求項1記載の方法。 請求項20 薬理学的シャペロンまたはキネティック安定剤を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。 請求項21 第2の機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。 請求項22 第1および第2のタンパク質恒常性制御因子が、凝集制御因子、脱凝集制御因子、タンパク質分解制御因子、またはタンパク質フォールディング制御因子の1つまたは複数である、請求項21記載の方法。 請求項23 タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、薬理学的シャペロンまたはキネティック安定剤と組み合わせて、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を該患者に投与する工程を含む、方法。 請求項24 前記状態が機能喪失型障害である、請求項23記載の方法。 請求項25 タンパク質恒常性制御因子が変異酵素の正しいフォールディングを促進する、請求項23記載の方法。 請求項26 変異酵素がリソソーム酵素である、請求項25記載の方法。 請求項27 変異リソソーム酵素を交換するために、正常活性を有するリソソーム酵素をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。 請求項28 タンパク質恒常性制御因子が小胞体関連分解を阻害する、請求項23記載の方法。 請求項29 前記状態がゴーシェ病である、請求項23記載の方法。 請求項30 薬理学的シャペロンがN-(n-ノニル)デオキシノジリマイシンである、請求項24記載の方法。 請求項31 前記状態がテイ・サックス病である、請求項23記載の方法。 請求項32 薬理学的シャペロンが2-アセトアミド-2-デオキシノジリマイシンである、請求項31記載の方法。 請求項33 前記状態が機能獲得型障害である、請求項23記載の方法。 請求項34 前記状態が、封入体筋炎、加齢黄斑変性、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、またはパーキンソン病である、請求項33記載の方法。 請求項35 機能喪失型疾患の治療を必要とする患者において機能喪失型疾患を治療するための方法であって、変異タンパク質の活性を改善または回復させて、患者における機能喪失型疾患を軽減もしくは排除する、またはその発生または再発を阻止するのに有効な量のタンパク質恒常性制御因子を該患者に投与する工程を含む、方法。 請求項36 タンパク質恒常性制御因子が変異タンパク質の正しいフォールディングを促進し、かつ変異タンパク質に結合しない、請求項35記載の方法。 請求項37 タンパク質恒常性制御因子が、タンパク質シャペロンの小胞体関連分解を軽減または排除する、請求項35記載の方法。 請求項38 タンパク質恒常性制御因子がプロテアソーム阻害剤である、請求項35記載の方法。 請求項39 機能喪失型疾患がリソソーム性蓄積症であり、変異タンパク質がリソソーム酵素である、請求項35記載の方法。 請求項40 機能喪失型疾患が嚢胞性線維症であり、変異タンパク質が嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)である、請求項35記載の方法。 請求項41 変異タンパク質を交換するために、正常活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドを投与する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。 請求項42 リソソーム性蓄積症が神経障害性リソソーム性蓄積症である、請求項39記載の方法。 請求項43 リソソーム性蓄積症が、ゴーシェ病、α-マンノシドーシス、IIIA型ムコ多糖症、ファブリー病、テイ・サックス病、またはポンペ病である、請求項39記載の方法。 請求項44 タンパク質恒常性制御因子が小胞体中のカルシウム濃度を上げる、請求項39記載の方法。 請求項45 タンパク質恒常性制御因子がCa2+チャンネル遮断薬である、請求項44記載の方法。 請求項46 タンパク質恒常性制御因子がカルシウム結合シャペロンタンパク質の発現を高める、請求項44記載の方法。 請求項47 カルシウム結合シャペロンタンパク質がカルネキシンおよびカルレチキュリンからなる群より選択される、請求項46記載の方法。 請求項48 タンパク質恒常性制御因子がリアノジン受容体を阻害する、請求項44記載の方法。 請求項49 タンパク質恒常性制御因子がリアノジン受容体アンタゴニストである、請求項48記載の方法。 請求項50 タンパク質恒常性制御因子がリアノジン受容体の発現を阻害する、請求項48記載の方法。 請求項51 タンパク質恒常性制御因子が少なくとも2つのリアノジン受容体サブタイプを阻害する、請求項48記載の方法。 請求項52 タンパク質恒常性制御因子がジルチアゼムまたはベラパミルである、請求項39記載の方法。 請求項53 リソソーム性蓄積症がゴーシェ病である、請求項43記載の方法。 請求項54 リソソーム性蓄積症が神経障害性ゴーシェ病である、請求項53記載の方法。 請求項55 酵素がグルコセレブロシダーゼである、請求項53記載の方法。 請求項56 酵素がL444Pグルコセレブロシダーゼである、請求項55記載の方法。 請求項57 酵素がN370Sグルコセレブロシダーゼである、請求項55記載の方法。 請求項58 リソソーム性蓄積症がα-マンノシドーシスである、請求項43記載の方法。 請求項59 酵素がα-マンノシダーゼである、請求項58記載の方法。 請求項60 酵素がP356R α-マンノシダーゼである、請求項59記載の方法。 請求項61 リソソーム性蓄積症がIIIA型ムコ多糖症である、請求項43記載の方法。 請求項62 酵素がスルファミダーゼである、請求項61記載の方法。 請求項63 酵素がS66WスルファミダーゼまたはR245Hスルファミダーゼである、請求項62記載の方法。 請求項64 タンパク質恒常性制御因子がCa2+チャンネルアンタゴニストである、請求項39記載の方法。 請求項65 タンパク質恒常性制御因子がL型電位依存性カルシウムチャネル遮断薬である、請求項64記載の方法。 請求項66 タンパク質恒常性制御因子がジルチアゼムまたはベラパミルである、請求項65記載の方法。 請求項67 タンパク質恒常性制御因子がジルチアゼムの類似体である、請求項65記載の方法。 請求項68 前記疾患がテイ・サックス病である、請求項43記載の方法。 請求項69 酵素がβ-ヘキソサミンAである、請求項68記載の方法。 請求項70 酵素がG269S β-ヘキソサミンAである、請求項69記載の方法。 請求項71 タンパク質恒常性制御因子がセラストロールである、請求項70記載の方法。 請求項72 タンパク質恒常性制御因子がMG-132である、請求項70記載の方法。 請求項73 タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態の治療を必要とする患者において、タンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を治療するための方法であって、少なくとも2つの機構的に別個のタンパク質恒常性制御因子を該患者に投与する工程を含み、該タンパク質恒常性制御因子は、タンパク質ホメオスタシスを改善または回復させて、患者の状態を軽減もしくは排除する、またはその発生もしくは再発を阻止するのに有効な量で投与される、方法。 請求項74 タンパク質恒常性制御因子の1つが変異タンパク質の正しいフォールディングを増強する、請求項73記載の方法。 請求項75 タンパク質恒常性制御因子の1つが変異タンパク質の小胞体関連分解を阻害する、請求項73記載の方法。 請求項76 変異タンパク質が変異酵素である、請求項73記載の方法。 請求項77 患者においてタンパク質ホメオスタシスの機能不全を特徴とする状態を診断するための方法であって、以下の工程を含む方法:細胞をベースとするアッセイ系において患者からの細胞または組織とタンパク質恒常性制御因子とを接触させる工程、細胞内のタンパク質フォールディング、タンパク質凝集、タンパク質輸送、またはタンパク質分解に及ぼすタンパク質恒常性制御因子の影響を測定する工程、および患者の細胞または組織におけるタンパク質ホメオスタシスの欠損を特定する工程。 請求項78 タンパク質のフォールディングまたは輸送の欠損を特定する工程を含む方法であって、前記状態が機能喪失型障害である、請求項77記載の方法。 請求項79 タンパク質分解における欠損を特定する工程を含む方法であって、前記状態が機能獲得型障害である、請求項77記載の方法。 請求項80 欠損がタンパク質シャペロンの合成におけるものである、請求項79記載の方法。 請求項81 タンパク質恒常性制御因子が、熱ショック応答(HSR)経路、小胞体ストレス応答(UPR)経路、Ca2+シグナル伝達経路、またはそれらの組み合わせを介してシグナル伝達をアップレギュレートする、請求項79記載の方法。 請求項82 タンパク質恒常性制御因子が、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの転写または翻訳をアップレギュレートする、請求項79記載の方法。 請求項83 タンパク質恒常性制御因子が、1つもしくは複数のタンパク質シャペロン、1つもしくは複数のフォールディング酵素、またはそれらの組み合わせの分解を阻害する、請求項79記載の方法。 請求項84 タンパク質恒常性制御因子が凝集経路または脱凝集経路をアップレギュレートする、請求項77記載の方法。 請求項85 2つまたはそれ以上のタンパク質恒常性成分を同定することによって治療法をデザインする方法であって、タンパク質恒常性成分の活性と標準とを比較する工程;標準の活性に対してタンパク質恒常性成分の活性を改変するタンパク質恒常性制御因子を選択する工程;および該制御因子を必要する患者に該制御因子を投与する工程を含む、方法。
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